4月に入って、震災がれきについての報道が目につくようになり、この問題について考えることが増えました。
愛媛でも県が各市町に回答を求め集計が出ています。
西条市が反対。四国中央・松山・東温など8つの市町が条件付き承諾、その他の自治体は受け入れ体制が整わない理由で拒否しています。
http://s.rnb.co.jp/node/1126(南海放送4月9日付ニュース)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120410-00000274-mailo-l38(毎日新聞4月10日付)
http://mercury7.biz/archives/18148(連合愛媛が震災ガレキ受け入れ実現へ向け県に要望書提出)
ニュース報道を検索していて思ったのが、”条件付き承諾”の見解の示し方が違うこと。
”条件付き”=拒否ととる報道機関もあれば、
”条件”さえクリアされれば受け入れ可能と受け入れ可能を肯定的にとる機関もあり、
住民としては「県や自治体の意思はどっちなの???」と首をかしげたくなります。
「震災廃棄物(がれき)について、どう考えればいいのか?」
新婦人中央本部が2月におこなった、震災がれきに関する国への要請文書と、
民主団体から寄せられた震災ガレキについての特別寄稿を紹介したいと思います。
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2012年2月29日
内閣総理大臣 野田佳彦様
環境・原発担当大臣 細野豪志様
復興大臣 平野達男様
新日本婦人の会 会長 笠井貴美代
東日本大震災の災害廃棄物(がれき)の広域処理にあたって、国が責任をもって、安全確保と国民の理解、風評被害防止策等の措置をとってください
東日本大震災によって、岩手・宮城の両県で出た災害廃棄物(がれき)は、それぞれ476万t(一般廃棄物の約11年分)、1569万t(同、約19年分)にのぼるといわれています。両県で既存と仮設の焼却施設をフル稼働しても県内で処理しきれず、広域処理を希望している量が、岩手で57万t(全量の12.0%)、宮城で294万t(全量の18.7%)であるといいます。それらを県外協力で処理する必要があることは理解できます。
同時に、がれきが津波被害のみの廃棄物だったなら、これほど全国各地の自治体が苦労し、住民が反対の声をあげることはなかったでしょう。微量とはいえ、放射能に汚染されていることが大きな障害となっています。
福島第一原発事故を起こし、震災復興に困難をもたらしている東電と政府の責任の重大さを、あらためて指摘せざるをえません。事故後も事実を隠し、国民に情報を開示してこなかったため、「国に安全といわれても信用できない」「子どもの健康が心配」「新たな風評被害が生まれる」などの声が出るのも当然ではないでしょうか。また、政府の対応の不十分さが、福島のがれきが広域処理の対象をなっているのかの誤解も生みだしています。
私たちは、政府がこの現状認識に立ち、国の責任を明確にして、急ぎ対応をとるよう要請します。
1、広域処理にあたって、すべて国の責任でおこなう立場を明確にすること
1、「焼却灰の放射性セシウム濃度が8000ベクレル/kg以下であれば安全に埋立処分が可能」などの数値について、国民が納得できる丁寧な説明をすること
1、”埋立処理後、何年の維持・管理が必要かの方針がない””風評被害対策がない”など、自治体から指摘されている点を急ぎ方針化すること、より安全な処理方策を検討すること
1、広域処理の受け入れは、首長の独断ではなく、住民合意で民主的におこなうこと
1、住民合意があったのちも、あらゆる段階での線量測定や埋立の安全管理、全情報の開示など、国の責任でおこなうこと
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2012年4月8日(日)愛媛民報より
特別寄稿 ガレキ拡散は内部被爆の危険に直結
県原爆被害者の会事務局長 松浦秀人
「ガレキ処理が復興の前提」との報道が、テレビ・新聞でにわかに熱を帯びてきた。このための政府広報予算の15億円が、効き目を現し始めたようだ。
政府によれば、福島県と違って放射能汚染のない岩手・宮城両県のガレキ2300万トンのうち約2割、400万トンの広域処理のため、全都道府県に協力を要請したという。
明白なウソがある。福島ほどではないが、岩手・宮城には濃厚な汚染地域がある。事故直後から政府に先んじて土壌調査をし。ネット上に公開してきた群馬大学の早川由紀夫教授の作成図を見れば、両県の汚染は明らかだ。震災ガレキの拡散は、放射性物質の拡散そのものなのだ(アスベスト、ヒ素、六価クロム、PCBなどの混在する有害物質問題は本稿では割愛)。
ところで、環境省は従来セシウムで100ベクレル(Bq)/kg以上を放射性物質として、焼却も埋め立ても禁止し厳重な管理を求めていた。ところが3・11以降、6月と8月の2段階の緩和で、一定の要件を満たせば10万Bq/kgの焼却灰まで埋め立ても可とした。
しかし、原子力規制法ではクリアランス制度を設け、100Bq/kg未満の汚染は分別管理を要しないが、100Bq/kg以上は放射性物質として管理対象と定めている。環境省の措置は、明らかに同法に抵触している。
ちなみに、放射性物質は焼いてもなくなることはない。ゴミ焼却場にその処理機能はないが、あえて焼却すればガス化して大気に飛散するとともに灰に濃縮される。その大気は、呼吸による内部被爆の危険を生む。濃縮した灰を土中に埋めれば地下水を汚し、やがて海に流出し海産物に蓄積される。それを食せば、これまた内部被爆の脅威を高める。
なにしろ半減期が30年のセシウム137に汚染された10万Bq/kgの廃棄物が100Bq/kg以下の「通常の廃棄物」になるには、300年という長い歳月を要する。やっかい極まりないのが、放射性物質なのだ。
だからこそ、放射性物質は一般ゴミと区分した「集中管理」、「封じ込め拡散しないこと」が大原則なのだ。日本弁護士連合会やドイツの放射線防護教会など、内外からの批判も強い。
なお付言すると、仮に焼却場でガレキを大量焼却すると、施設は濃厚に汚染され解体時には除染が必要となる。しかし、国も自治体もその費用や方法について検討した形跡さえないお粗末さだ。
ところで、政府の呼びかけに疑問が湧く。何故2割なのか?なぜ急ぐのか?仮に4年で8割の地元処理の計画なら、5年かければ地元で10割処理ができるはずだ。
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伊達勝身・岩泉町長は、次のように話す。「現場からは納得できないことが多々ある。ガレキ処理もそうだ。あと2年で片付けれるという政府の公約が危ぶまれているというが(中略)、山にしておいて10年、20年かけて片付けた方が地元に金が落ち、雇用も発生する。もともと使ってない土地がいっぱいあり、処理されなくても困らないのに、税金を青天井に使って全国に運び出す必要がどkにあるのか」と。
また、陸前高田市の戸羽太市長は「市内にガレキ処理専門のプラントを作れば、自分たちの判断でいまの何倍ものスピードで処理ができると考え、そのことを県に相談したら、門前払いのような形で断られました」と語り、いずれも「地元で処理を」と訴えているのだ。
ところで阪神大震災のガレキ2000万トンは近隣で処理したが、処理費用はトン当たり2万2000円、今回は6万3000円。何故そんなに高いのか。疑問だらけで、遮二無二強行する政府の言い分に説得力はない。
市民の反対を押し切って3月に受け入れ表明した静岡県島田市の桜井勝郎市長は桜井資源株式会社という産廃企業の元社長だ。東北支援の美名に隠れて、甘い汁に群がる蟻のように巨額の国費にうごめいているようにしか見えない。本心からの支援なら、無償とは言わないから阪神大震災並みの単価で請け負えばよい。
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住民の命や健康を守ることは、地方自治体の責務である。この点、隣県の徳島はすぐれた見地を早くから表明している。同県の公式ホームページ「目安箱」から、その一部を引用・紹介する。
「放射性物質については、封じ込め、拡散させないことが原則」と述べ、「一度、生活環境上に流出すれば、大きな影響のある放射性物質を含むガレキについて、十分な検討もなく受け入れることは難しい」と表明。
また「原子力発電所の事業所内から出た廃棄物は、100ベクレルを超えれば、低レベル放射性廃棄物処理場で厳格に管理されているのに(原子力規制法の定め=松浦注)、事業所の外では8000ベクレルまで、東京都をはじめとする東日本では埋立処分されております」と国のダブルスタンダード(二重基準)を厳しく指摘している。
そして、「この8000ベクレルという水準は国際的には低レベル放射性廃棄物として、厳格に管理されているということです。たとえばフランスやドイツでは、低レベル放射性廃棄物処分場は、国内に1カ所だけであり、しかも鉱山の跡地など、放射性セシウム等が水に溶出して外部に出ないように、地下水と接触しないように、注意深く保管されています」と海外の実態を紹介し、「国に対し、上記のような事柄に対する丁寧で明確な説明を求める」と結んでいる。これこそが、本来自治体がとるべき態度であろう。
震災ガレキの受け入れには、断固反対しよう。
*ベクレルとは?放射能の単位(記号はBq)。1秒間に1個の原子核が崩壊することを1Bqという。