ご存知の方もいらっしゃると思いますが、イタリアの古い映画に『道』という映画があります。監督はフェデリコ・フェリーニ。演じるのは若き日のアンソニー・クインとジュリエッタ・マシーナ。貧しい大道芸人一座の悲しい物語であります。
ある晩、アンソニー・クイン演じる一座の座長ザンパノに芸のことでひどく叱られた主人公ジェルソミーナ(ジュリエッタ）は、自分は何もできない役立たずだと落ち込んでいました。するとそこへ、一座の仲間で大の仲良しの青年がやってきてこう言います。
「そんなにがっかりすることはない。どんなものでも必ず何かの役に立っているんだよ。ごらん、あの夜空の星だって、何かの役に立っている。この道端の石ころだって、きっと誰かの役に立っているんだ。君だってそうだ、ジェルソミーナ、誰かの役に立っているんだよ！」
はじめてこの映画を見たのは２０年近く前で、私はその頃まだ高校生でしたが、それからそれ以降、今日に至るまでの人生の様々な場面で、この言葉には何度励まされ勇気づけられたことでしょう。
「どんな人間だって必ず誰かの役に立っているのだ。」その言葉はまるで天の啓示みたいにわたしの心に降りてきて、そこに小さな灯(あかり)をともしてくれたのです。こんな自分にも人の役に立てることがあるはずだと。
しかし、それからさらに月日が流れ少し歳を取ったいま改めて考えてみると、人生の本当の喜びというものはほとんどそれしかないのだとつくづく思います。人生の喜びはお金でも地位でもなんでもなく、誰かの役に立つ、ということなのだと。ただ人の役に立てる、ということの喜び以上に人間を根本から励まし、勇気づけ、奮い立たせるものはないのだ、と。
発表会の季節になると、私はいつもこの言葉を思い出します。しんじんの子どもたちは芝居作りを通して、人の役に立つことの大切さを知らず知らずのうちに学んでいくのです。そして、実はこの「人の役に立てる」ということが子どもたちの劇にとってはとても重要なことなのです。これら一連の活動を通して私たちが彼らに伝えたいことのほとんどすべてと言ってもよいかもしれません。ひとりひとりが自分に与えられた役を責任を持って演じる(役に立つ)ことによって、はじめて劇が成り立つわけですから、クラス全員の気持ちがひとつにならないといつまでも成功しません。したがって誰一人いい加減なままでよい者はいないし、みんなの力がどうしても必要になってきます。実際に指導の中で言葉にしてそう伝えることもあります。「君の力が必要なんだ!」と。この言葉はとても説得的で、「ちゃんとしなさい」とか「しっかりやりなさい」などと言うよりもずっと彼らの心に響くようです。つまりそれこそが(自分の力が必要なんだ、という実感こそが)子どもを大きく成長させるすべての基であるといえるのです。
たとえばセリフが上手に言えるとか、踊りや歌がうまいとか、そういったことはしんじんの芝居作りではさして重要なことではありません。重要なことは、この活動を通して(その過程において)ひとりひとりが何を学んだか？ということであり、自分が必要とされている、みんなの役に立っている、ということのありありとした手ごたえなのです。
ジェルソミーナが見上げた夜空の星のように、あるいは道端に転がっていた石ころのように、いま人の役に立つ、ということ。
（写真は本日おこなわれた年中発表会リハを見るために運動場に集まった年長・年少の子どもたち。長い時間にもかかわらず、みんな静かに真剣に見入っていました）
ある晩、アンソニー・クイン演じる一座の座長ザンパノに芸のことでひどく叱られた主人公ジェルソミーナ(ジュリエッタ）は、自分は何もできない役立たずだと落ち込んでいました。するとそこへ、一座の仲間で大の仲良しの青年がやってきてこう言います。
「そんなにがっかりすることはない。どんなものでも必ず何かの役に立っているんだよ。ごらん、あの夜空の星だって、何かの役に立っている。この道端の石ころだって、きっと誰かの役に立っているんだ。君だってそうだ、ジェルソミーナ、誰かの役に立っているんだよ！」
はじめてこの映画を見たのは２０年近く前で、私はその頃まだ高校生でしたが、それからそれ以降、今日に至るまでの人生の様々な場面で、この言葉には何度励まされ勇気づけられたことでしょう。
「どんな人間だって必ず誰かの役に立っているのだ。」その言葉はまるで天の啓示みたいにわたしの心に降りてきて、そこに小さな灯(あかり)をともしてくれたのです。こんな自分にも人の役に立てることがあるはずだと。
しかし、それからさらに月日が流れ少し歳を取ったいま改めて考えてみると、人生の本当の喜びというものはほとんどそれしかないのだとつくづく思います。人生の喜びはお金でも地位でもなんでもなく、誰かの役に立つ、ということなのだと。ただ人の役に立てる、ということの喜び以上に人間を根本から励まし、勇気づけ、奮い立たせるものはないのだ、と。
発表会の季節になると、私はいつもこの言葉を思い出します。しんじんの子どもたちは芝居作りを通して、人の役に立つことの大切さを知らず知らずのうちに学んでいくのです。そして、実はこの「人の役に立てる」ということが子どもたちの劇にとってはとても重要なことなのです。これら一連の活動を通して私たちが彼らに伝えたいことのほとんどすべてと言ってもよいかもしれません。ひとりひとりが自分に与えられた役を責任を持って演じる(役に立つ)ことによって、はじめて劇が成り立つわけですから、クラス全員の気持ちがひとつにならないといつまでも成功しません。したがって誰一人いい加減なままでよい者はいないし、みんなの力がどうしても必要になってきます。実際に指導の中で言葉にしてそう伝えることもあります。「君の力が必要なんだ!」と。この言葉はとても説得的で、「ちゃんとしなさい」とか「しっかりやりなさい」などと言うよりもずっと彼らの心に響くようです。つまりそれこそが(自分の力が必要なんだ、という実感こそが)子どもを大きく成長させるすべての基であるといえるのです。
たとえばセリフが上手に言えるとか、踊りや歌がうまいとか、そういったことはしんじんの芝居作りではさして重要なことではありません。重要なことは、この活動を通して(その過程において)ひとりひとりが何を学んだか？ということであり、自分が必要とされている、みんなの役に立っている、ということのありありとした手ごたえなのです。
ジェルソミーナが見上げた夜空の星のように、あるいは道端に転がっていた石ころのように、いま人の役に立つ、ということ。
（写真は本日おこなわれた年中発表会リハを見るために運動場に集まった年長・年少の子どもたち。長い時間にもかかわらず、みんな静かに真剣に見入っていました）
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