中年の男が通りを歩いている。傍の公衆電話が鳴る。自分を呼んでいるような気がして男は公衆電話のボックスをあける。
そこには驚いたことに、自分の子ども時代の宝箱が置いてある。
映画アメリの一つのエピソード。
思いがけない所から子ども時代の宝箱が出てきたら…映画の中の男は驚きつつも感慨で泣いていた。
私は、今回実家でかつて自分の部屋だったところの作り付けの棚の一番下を開けて、
赤面した。
家を出てから22年。
気に入っていたブーツやコートや、漫画や、本はみんな処分されている。
自分の部屋もリフォームされて、すっかり様変わりした。
なのに。
こんなモノばっかり、そのままここにある。
高校生か大学生の頃のお財布やパスケースや、髪の毛のゴムや髪留めや、リボンや。
授業中友達から回ってきた手紙もそのまま箱に入っている。
どうしよう。狼狽。
すっかり忘れていた。
いつもワチャワチャ、でも全力で生きていたんだよな、私。
でも、大人になったら、何になるんだろうと思っていた。
うーん。
ちょっと、違うな。思っていた自分と、違う。
40歳の正月に過去の自分と出会って、軌道修正を心に誓う。
まだ、間に合うんではないか。
パンドラの箱を、そこに仕掛けたアメリが影からそっと応援してくれているかもしれない。