埼玉県春日部市は今年度から、地元出身の世界ボクシング協会(WBA)スーパーフェザー級チャンピオン、内山高志選手(32)(ワタナベ)を題材にした道徳の授業を始めた。16日に地元春日部市で5度目の防衛戦を控えており、市立上沖小学校(同市大沼)の4年生クラス児童38人は6月の道徳の授業で、内山選手の生き方に思いを巡らせていた。
内山選手は大学4年から、全日本選手権で3連覇を果たしたが、夢のアテネオリンピック出場を目前で逃し、プロの誘いを断り一般の会社に就職。しかし、仲間がリング上で戦う姿に再び闘志を取り戻し、2010年の世界タイトル初挑戦で王座を獲得。以降4度防衛を積み重ねている。
「内山選手が再びリングに戻ったのはなぜ」。6月22日に上沖小で行われた授業で、担当の吉田京子教諭(54)が、内山選手の「心の変化」について問いかけた。すると、児童からは「途中であきらめたくなかった」「もう一度、世界チャンピオンを目指したくなった」など様々な意見が相次いだ。
「不器用だけれど、ボクシングが大好きだからこそ厳しい練習に打ち込めたと思います」。授業の最後には、道徳の資料集を執筆した市立桜川小の野口京子教諭(48)が解説を加え、「皆さんも目標を持って頑張ってください」と締めくくった。
持久走や身の回りの整理整頓、家の手伝いなど、目標を立てても最後までやり遂げることが苦手な子が多く、授業では内山選手の生き方に思いを巡らせながら「夢をあきらめず、努力すること」の大切さを学んだ。
吉田教諭は、「児童の自尊心が低下しているなかで、内山選手のように意欲的に取り組み、自分の持つ力を伸ばして自信を持つきっかけになれば」と授業の狙いを示している。