先日の毎日新聞に「廃炉ごみ処分場の基準決定」との見出しで、原子力規制委員会が9月29日に処分場の規制基準を決定したとの記事が掲載されていました。
正直な気持ちとしては“すでに決まっていたと思っていたのに、まだ決まっていなかったの?”ということでしたが、記事をよく読むと、低レベルのL3/L2、並びに一番汚染度が高い「核のゴミ」についても地層処分ということが決まっていて、今回決まったのはL2と核のゴミの中間に位置するL1という汚染度が高い放射性廃棄物の処分方法です。
それによると、電力会社などは地下70メートルより深い場所に処分場を設けて約10万年間、地中で隔離しなければならなくなるというもので、今回の決定により廃炉ごみの基準が全て整備されたことになります。
◆この決定を受けて、放射性廃棄物の種類と処分方法などを纏めてみますと、下記のようになります。
(毎日新聞の資料を参考にしました)
レベル 廃棄物の種類 処分方法 深さなど 隔離期間
L3 解体コンクリート・金属 穴を掘って埋める 地表近く 約50年
L2 廃液・フィルター・手袋など コンクリート製の箱に 10m程度の深度 約300年
入れて埋める
L1 制御棒など 処分場を整備 70m以上の深度 約10万年
核のゴミ ガラス固体化 300m以上の深度 約10万年
地層処分
※ 塗りつぶし部分(L1)が今回決定分です。
※ 事業責任者:L3/L2/L1については、ゴミの発生者(電力会社など)
※ 核のゴミは、国が積極的に関わって候補地を選ぶことになっているようですが、事業責任者に関する規定は判りませんでした。
※ 2018年度の資料によると、その時点では福島第1以外の計9基で廃炉作業が進んでいるが、9基合計では、「L1」から「L3」を併せて計約8万トン発生する見通しで、この内L1廃棄物は2200トンに上るとされています。その後も廃炉決定が進み、現時点ではこれまでに廃炉が決まったのは、11ある原発の計24基にもなっていて、この数字は大幅にふえることになります。
◆この表を見られた方の大部分の人がまず思うのは、50年や300年という長期にわたる管理を、社歴が100年にも満たない今の電力会社に負わせることが妥当かということでしょう。
ましてや10万年など…???
日本に人類が住み始めたのは、せいぜい4万年前にもならないといわれているのに…
10万年後に現在の会社や日本という国家が存在するのかというよりも、大規模な地殻変動がないとは誰も保証できないでしょう…
全くの数字遊びの自己満足のこじつけとしか思えず、その底にあるのは‟将来のことは責任が負えません・・・、今さえよければ・・・”という現在バイアスに基づく無責任な発想以外の何物でもないでしょう。
頭の良い人はこれが常識だと思っているのかと思うとゾッとします。
これが原発なるものを推進してきた電力会社/産業界/政府の基本的な考えなのでしょう。
その政府が、片方では地球環境の問題についてまことしやかに語る~~~実に滑稽な冗談というよりは悲劇でしょう。
◆更に気になるのは、「核のゴミ」です。
素人には、「核のゴミ」といえば、“原子炉内で使用したのちに取り出した核燃料“のことだと思いがちですが、それは「使用済み核燃料」と呼ばれ、上記の「核のゴミ」とは別物なのです。
これには、超寿命核種である超ウラン核種や大量の核分裂生成物などが含まれており、その危険性と処理の困難さがあるため、日本ではこれを再処理してここから再利用できるプルトニウムなどを取り出して利用するというサイクル方なるものが編み出されています。
従って、「核のゴミ」というのは使用済みの核燃料そのものではなくて、これを再処理してプルトニウムなどを取り出す際に残った廃液のことを指すようで、これをステンレス製の容器に流し込んでガラス固化体したものを、核のゴミとよんでいるようです。
◆すでに何度も触れたように、この使用済み核燃料のサイクル化を担っていた「もんじゅ」はその管理の難しさからすでに廃炉が決定しましたし、再処理を委託していたフランスの施設なども稼働をやめているようで、この『サイクル』なるものがすでに破綻した有名無実の夢物語になっているにも関わらず、日本の原発行政は未だにこのこじつけた理論に固執しているという噴飯物のお話です。
更に、この上で300年なり10万年というようなとても常識では考えられない管理をあたかもまじめな話のように持ち出してこなければ成り立たない原発など誰が信用できるでしょうか…
一刻も早く、検討に値しない原発から離脱し、多大の労力を要する現存の原発の廃炉に向かっていく必要があるでしょう。(まさ)