思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『乙女の密告』 いけず京乙女の乙女物語

2024-12-24 13:05:47 | 日記
『乙女の密告』赤染晶子

私は常々思っていたのです。
森見登美彦が好きだけれど、
くされ京大生の四畳半も臭そうな青春も良いのだけれど、
乙女の物語はないのか。
まあ、ないよな。

と思ったらこんなところにあったよ。
乙女のための乙女たちの物語が!
高尚な文章でどうかしてる乙女の生態を描く、
いけずな乙女物語が!

というわけで『乙女の密告』ですよ。
京都の外国語大学に通う乙女たちの物語です。
麗子様や百合子様が高嶺の花っぽく登場しますが、
実態は「留年組」である。
お姉様たちをよびすてにはできないよね。

ゼミの乙女たちは黒ゆり組とすみれ組に別れている。
宝塚っぽいが、分け方は変人バッハマン教授による
「いちご大福とウィスキーどちらが好きですか」
への回答次第で適当に、である。
なんじゃそりゃ。

そんな変人バッハマン教授はアンゲリカ人形を
常に抱いている。話しかけている。
変人だ!

そして乙女たちはアンネ・フランクの「アンネの日記」を
ドイツ語で読むスピーチコンテストに向けて
血を吐いている(がんばっている)。

いいね!
乙女だね!

いやもう最高。
すごく好き。

赤染晶子さんは『じゃむパンの日』も最高に良いのですが、
若くして鬼籍に入られたそうです。
もっと他の作品も読みたかった作家さんだけに、
残念。
『乙女の密告』は2010年芥川賞受賞作。
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『味でさぐる世界の文化 ヨーロッパ・中近東』 健啖先生の地政学的な食エッセイ

2024-12-23 10:28:26 | 日記
『味でさぐる世界の文化 ヨーロッパ・中近東』
西岡秀雄

著者は人文地理学の先生。
慶應の名誉教授も務めた人ですが、
日本トイレ協会名誉会長でもある。
肩書きの幅広さよ。

人文地理の先生が世界各国を回った際に感じた
ご当地食文化を綴った一冊。
なので、歴史や地理を踏まえてレポートされている感じ。
楽しい。

ちなみに初版は1990年である。
ロシアはソ連で、ドイツは東西に分裂しています。
時代…。

先生の滞在頻度によって情報量も変わるようですが、
特にフランスが厚いですね。
フランスは緯度が高い割に、偏西風のおかげで温暖。
(勉強になるなあ)
おとなりのドイツ(黒パン、ビール)に比べても
自然の恩恵に恵まれている(白パン、葡萄酒)土地柄。
ただし水は悪いので、食事のお供はワイン。
コニャック地方は地質が悪くて上等なブドウがつくれないので、
下級ブドウ酒を蒸留してブランデーにしたのが
高級ブランデー・ヘネシーの始まり。

18世紀は数十年おきに猛烈な寒波に襲われて飢饉に。
1789年はパリが零下31.8度を記録し、セーヌ川が凍結。
寒すぎ!
そりゃフランス革命も起きるよな、と思ってしまう。
そんな飢饉であっても美味しい料理を追求するから
ザリガニやエスカルゴの料理があるのでは、と。
まあ、一理ある気はしますが、どうでしょう笑

って感じで各国の食文化が先生のエッセイ風に紹介されます。
小ネタも多い。

イギリス人は保守的でしきたりを守りたがる。
朝食はベーコンと卵と決めたら、親子3代ずっとそれを守る、とか。
優秀な種牛は輸出して、自国民は安い牛肉を食べるとか。
イギリスのことあまりお好きじゃないのかな笑

ポルトガルにはタラの料理法が365種類あるらしい、とか。
毎日タラ食ってるってことかな。

デンマークビールの始まりは、
コペンハーゲンの酒屋がドイツ・ミュンヘンの醸造工場から
盗み出した一握りの酵母から、とか。
絹を盗んだ坊さんエピソードみたいだ。

にしても、先生、いろんな国に行ってらっしゃるなあ。
各国で地元の食文化を取材しているのは偉いなあと思うし、
相当に健啖なんだろうな。
うらやましい。
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『物語 ヴェトナムの歴史』 安南!大越!知ってる!!

2024-12-20 15:14:52 | 日記
『物語 ヴェトナムの歴史』
小倉貞男

中公新書の<物語歴史>シリーズのヴェトナム篇。
正直、ヴェトナムの歴史?自分には関係ないかな〜?
などと思っていました。
が、「安南」「大越」と書かれると、
途端に「中国史でよく見るやつ〜!!」となる。
勉強不足ですみませんでした。

そんなヴェトナム。
なんとな〜く、ず〜っと、中華帝国の一部だったり
朝貢関係にあったり、というイメージではある。
(あながち間違ってはいない)
が、面従腹背というか、意外としたたかに生き、
独自の文化を紡いでいる。
いいですね!

ヴェトナム人の始祖伝説をたぐっていくと、
中国でおなじみ「神農」と言われるらしいです。
その子孫が仙人やら龍やらと結婚して
100人子供が産まれて(百越)
(って、どういうことかよくわからん。百人兄弟なの?
「百越」という紀元前の国(群れ)の名前なの?)
第一子の「雄王(フンヴォン)」がつくった「文郎(ヴァンラン)国」が
ヴェトナム最初の国家だそうです。

そんな文郎国を西甌(たいおう)が滅ぼし甌貉(おうらく)国をつくり、
秦の始皇帝から派遣された趙佗(ちょうた)が甌貉を陥落させて
南越国を創建。
秦の後の漢は「南越ってうちの国の一部だよね!」と考える。
なるほど、もうわからん。

漢字のふりがながヴェトナム読みなので、
固有名詞がまったく覚えられない笑
貉(むじな)の音読みってなんだっけ〜!?と。
(音読みは「カク」だが、ヴェトナム語だと「ラク」と読むっぽい。
領主は貉侯(ラクハウ)、将軍は貉将(ラクトゥン)。
うむ、覚えられん)

えっと、なんだっけ。
ヴェトナム(ハノイ近郊)は、
西暦43年あたりから漢の直接支配下になって。
唐の時代には安南都護府ができた、と。それはわかる。
8世紀には中国留学中の阿倍仲麻呂も赴任しているそうです。
へえ。

939年、とうとうゴ・クエンが中国軍を破って独立(ゴ王朝)。
おお。おめでとう。
1009年にリ・コウ・アンから始まるリ王朝は初の長期政権。
一応、宋に朝貢したりして上手くやっている。
リ朝時代に孔子廟を建てたり、ヴェトナム最古の大学ができたり。
1225年にはチャン(陳)王朝スタート。
モンゴル(元)が3回も攻めてきてぼこぼこにされるが、
なんとか撃退する。すごいぞ!
チャン氏は元々は漁民で、艦隊が強かったようです。
元は日本でも船が沈んじゃったからなあ。
騎馬民族と水は相性が悪いんだな。

15世紀のレ朝時代、中国は明の時代。
相変わらず面従腹背。
南進して領土を拡げ、「ヴェトナムが最も発展した時代」だそうです。
16世紀はヴェトナム南北200年戦争。長い!
ケンカしてる場合じゃ無いぞ、世界は大航海時代で
帝国ムーブかましにあいつらがやってくるぞ!
というわけで1847年、フランス軍がダナン砲撃。
フランスの植民地支配時代が1世紀つづき、
1945年にホ・チ・ミンがヴェトナム民主共和国の独立宣言。
知ってる名前きた!

まあ、すぐには独立も統一もできず。
南部にヴェトナム共和国(サイゴン政府)ができ、南北ヴェトナム戦争、
1975年のサイゴン陥落によりようやく
現在も続く「ヴェトナム社会主義共和国」へと統一されます。

長かった…。
いあや、前半、漢字が読めなくてへこたれそうでしたが、
おもしろかったな。
そして大変勉強になりました。
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『イスラム飲酒紀行』 酒飲みの鑑であり、見習えない筆頭でもある

2024-12-19 16:06:25 | 日記
『イスラム飲酒紀行』
高野秀行

毎度おなじみ辺境探検家の高野さん。
こちらもインフルの名残で寝込んでいる際に読みました。
元気もらった笑
心身ともに疲弊している際には、
インゼリーと昼寝と高野本に限ります。

高野さん、通常運転だと年間数日しか休肝日のない
ほんまもんの酒飲みだそうですが、
(私もその点では仲間意識を持っている)
そんな酒飲みがイスラム圏に行った際のルポ。

いや、まあ、飲みたいけれども。
無いならしょうがないよ。
飲まないというか、飲めないでしょ。

と思った時点で私の酒飲み仲間意識は消え、
清々しい敗北感だけが残ったのであった。

飲むんだよなあ、高野さん。
いやもう、かっこいいよ。
普段のルポだとどんなに大変な目に遭っても
逆境に苦労しても、余裕があるというか、キレたりしない人がですよ。
お酒が無いだけで下戸の後輩に秒でキレてるんですよ。
お酒を売ると言って「ない」という現地人にも
キレ散らかすんですよ。
沸点低すぎ笑
いつもの不屈の探検魂はどこに行っちゃったのよ。

とはいえイランやシリアなど、
ちょっと複雑な状況下の国でも
現地の人と一緒にお酒飲むと(という状況に
たどり着くまでが大変なんだが)
意外な本音が聞けたり、発見があったり。
そこらへんはさすがである。

でもまあ、概ね、お酒を探して四苦八苦しているんだけど。
痺れるし憧れるけど見習えない笑

最高である。
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『物語 イタリアの歴史』 人生があると歴史に共感できるんだな

2024-12-18 11:45:31 | 日記
『物語 イタリアの歴史』
藤沢道郎

中公新書の<物語歴史>シリーズのイタリア篇です。
このシリーズで最初に読んだのは『物語 中国の歴史』である。
これは、とってもコスパの良く中国史を概観できる一冊なのですが、
強いて言うならば「物語ではない」のである。

そしてこの『物語 イタリアの歴史』では藤沢先生が
物語を紡ごうと正面から取り組んでいらしたので、
ちょっとびっくりした。
いや、こういうことですよ、企画主旨は。
びっくりじゃないのよ笑

というわけで10人の人生に絡めながら
イタリアの歴史をなぞっていく一冊です。
『ルネッサンスの女たち』でも思ったけど
生身の人間が垣間見えると、
歴史がめちゃくちゃ身近に感じられますよね。
おもしろい。

最初はローマ帝国の皇女ガラ・プラキディア。
フン族(超強い)が西進して、ゲルマン民族が大移動して、
ゲルマン系ゴート族にローマが悩まされる時代。
410年ローマ陥落(しょっちゅう陥落してないか?)

個人的には、第二章の女伯マティルデが興味深い。
この人はトスカーナ女伯で、カノッサの領主なんですよ。
聞き覚えがある地名!
ローマ帝国崩壊後は、イタリアは名目上は神聖ローマ皇帝の領土。
実質は伯が領有して代官支配をしている時代で、
マティルデは父が神聖ローマ皇帝と戦って敗れたり
色々と辛酸を舐めさせられたわけです。
恨むわけですな。
そんなマティルデと仲良し&崇拝しているのが
グレゴリウス7世で。
1075年、グレゴリウス7世と神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世
の間で叙任権闘争勃発。
とくれば、次は有名なアレです。
1077年、カノッサの屈辱。
なんでカノッサ?と思っていたけれど、
グレゴリウス7世は以前からトスカーナ伯の後見をしていたので
「謝りたければカノッサにいるからおいでよ」的な
ことだったようです。
マティルデの高笑いが見えるぜ…!!

グレゴリウス7世はこの後ハインリヒ4世に負け負けして、
ローマにノルマン人(すでに南イタリアでぶいぶい言ってる。つよ〜)
を引き込んでローマ略奪されて(ほら、まただ)、
人生の後半は逃げ回るハメになります。
あまり人をいじめてはいけないな。

あとは皇帝フェデリーコ(フリードリヒ2世のこと)の
シチリアにおける文化の開花、
作家ボッカチオを通じてのナポリ・シチリア事情から
(ナポリはフランス、シチリアはスペインに取られる)
北イタリアの自治都市国家が小領邦君主国家へ移行する時代へ。

14世紀は黒死病、15世紀はメディチ家の時代。
16世紀は宗教改革(1527年ローマ劫掠。ほんと災難)、
17世紀になるとヴェルサイユが最先端で
イタリア文化は流行遅れみたいな時代になり、
18世紀は啓蒙主義が大流行しつつナポレオン爆誕、
皇帝に就任したついでにイタリア国王も名乗る。そうなの?
で、フランス工兵隊の遺産である道路や橋梁、ナポレオン法典、
徴兵制などを活用してイタリア国家意識と近代化がようやく始まる。
(イタリア統一運動を「リソルジメント(覚醒)」と言うらしい。
どんだけボーッとしてたんだ)

1861年、統一イタリア王国宣言へ。

神聖ローマ帝国とか、十字軍とかの単位ではなく
イタリア半島の歴史という視点で見たことはなかったので
なんだか新鮮でした。
(ナポレオンってイタリア王だったんかーい、とか)
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