『三十五のことばに関する七つの章』
久保忠夫
『本が好き、悪口言うのはもっと好き』の
インテリ悪口おじさんが書評でめっちゃ褒めていたので
さっそく読みました。
言葉にまつわるエッセイで、二部構成。
前半は表題作で、
主に日本国語大辞典の語釈&用例を使って
様々な言葉のうんちくを語ります。
後半は、単語ごとに章立てした短めのエッセイ。
日本国語大辞典は通称「にっこく」と呼ばれる
日本最大の辞書。
なにしろ大判で13巻もある。
これだけで床が数ミリ沈むんじゃなかろうか。
そんな最大最強辞典ですが、
辞書マニアの久保先生にかかると
三十五の単語に物申されてしまいます。
マジか。
「にっこく」の初版は1972年〜1976年の5年間。
久保先生が『三十五のことばに関する七つの章』を書いたのが
1976年なので、できたてほやほやの「にっこく」を
腕まくりしながら読んだのでしょう。
(2000年〜2002年にかけて第二版が更新されているので
この本の指摘内容もいくらか変わっているかもしれない。
私はにっこくを持っていないので調べていません
(金銭的にも部屋のスペース的にも無理)。)
まず語釈の間違い。
(見つけた時の先生の狂喜乱舞が眼に浮かぶ)
「玉山(ぎょくざん)倒る(たおる)」
これは「容姿の清らかな人が酒に酔い潰れることのたとえ」
と書かれているが、間違い。
容姿は関係なく「酔い潰れること」が正解。
はわ〜。
知らんがな。
しかしこれ、大辞典(昭和10年)、広辞苑(昭和50年)、にっこく、
全て語釈が間違っていたそうです。
多分、用例をがんばって引いたものの、語釈は他辞典の内容を引いたせい。
「暮しの手帖事件」じゃないですか。
中国古典に「玉山」が美人という意味はないし、
明の時代に「玉山頽(ぎょくざんくずる)」は
「酔倒」(よいてたおれる)とされていたようです。
つまり私でも堂々と「玉山が倒れちゃった〜」
と言って良いってことじゃないか。
勉強になります!
あとは用例の不足(もっと古いのがあるよ〜)や、
未収録の新語の話しなど。
めちゃおもしろい。
もう先生がの編者に加わったらいいじゃない。
「にっこく」の話しだけではなく、
挿話もいちいちおもしろいんですよね。
与謝野晶子・鉄幹夫妻は造語をつくる&流行らせるのが
うまかったとか。
(臙脂紫:えんじむらさき、黄金日車:こがねひぐるま・ヒマワリ)
森鴎外は翻訳で新しい言葉を引っ張ってくるのがうまく、
「街樾」、本来「ガイエツ」に「なみき」とルビをふる、
みたいな小洒落たことをする。
そして石川啄木は光速でそれを真似る(おい!)。
そうそう、言葉の誤用で感動したのが
「屋上に屋を架する」も間違いということ。
え?違うの?
本来は中国・六朝時代の言葉で
「屋下に屋を架する」だそうです。
確かに、屋上に屋根を架けたら、部屋がひとつ増えるだけだ。
なんと。
夏目漱石(明治40年)、芥川龍之介(昭和2年)、阿川弘之(昭和54年)
等に「屋上屋を架す」の用例があるようで。
当時の辞書には載っていないものが多かったそうですが、
現代辞書には大抵載っていますね。
大御所が使ってるからなあ…。
最後にもうひとつ。
「輪をかける」と同じ意味で
「しんにゅう(辶)をかける」という言葉があるそうです。
令和ロマンのネタじゃないか笑
久保忠夫
『本が好き、悪口言うのはもっと好き』の
インテリ悪口おじさんが書評でめっちゃ褒めていたので
さっそく読みました。
言葉にまつわるエッセイで、二部構成。
前半は表題作で、
主に日本国語大辞典の語釈&用例を使って
様々な言葉のうんちくを語ります。
後半は、単語ごとに章立てした短めのエッセイ。
日本国語大辞典は通称「にっこく」と呼ばれる
日本最大の辞書。
なにしろ大判で13巻もある。
これだけで床が数ミリ沈むんじゃなかろうか。
そんな最大最強辞典ですが、
辞書マニアの久保先生にかかると
三十五の単語に物申されてしまいます。
マジか。
「にっこく」の初版は1972年〜1976年の5年間。
久保先生が『三十五のことばに関する七つの章』を書いたのが
1976年なので、できたてほやほやの「にっこく」を
腕まくりしながら読んだのでしょう。
(2000年〜2002年にかけて第二版が更新されているので
この本の指摘内容もいくらか変わっているかもしれない。
私はにっこくを持っていないので調べていません
(金銭的にも部屋のスペース的にも無理)。)
まず語釈の間違い。
(見つけた時の先生の狂喜乱舞が眼に浮かぶ)
「玉山(ぎょくざん)倒る(たおる)」
これは「容姿の清らかな人が酒に酔い潰れることのたとえ」
と書かれているが、間違い。
容姿は関係なく「酔い潰れること」が正解。
はわ〜。
知らんがな。
しかしこれ、大辞典(昭和10年)、広辞苑(昭和50年)、にっこく、
全て語釈が間違っていたそうです。
多分、用例をがんばって引いたものの、語釈は他辞典の内容を引いたせい。
「暮しの手帖事件」じゃないですか。
中国古典に「玉山」が美人という意味はないし、
明の時代に「玉山頽(ぎょくざんくずる)」は
「酔倒」(よいてたおれる)とされていたようです。
つまり私でも堂々と「玉山が倒れちゃった〜」
と言って良いってことじゃないか。
勉強になります!
あとは用例の不足(もっと古いのがあるよ〜)や、
未収録の新語の話しなど。
めちゃおもしろい。
もう先生がの編者に加わったらいいじゃない。
「にっこく」の話しだけではなく、
挿話もいちいちおもしろいんですよね。
与謝野晶子・鉄幹夫妻は造語をつくる&流行らせるのが
うまかったとか。
(臙脂紫:えんじむらさき、黄金日車:こがねひぐるま・ヒマワリ)
森鴎外は翻訳で新しい言葉を引っ張ってくるのがうまく、
「街樾」、本来「ガイエツ」に「なみき」とルビをふる、
みたいな小洒落たことをする。
そして石川啄木は光速でそれを真似る(おい!)。
そうそう、言葉の誤用で感動したのが
「屋上に屋を架する」も間違いということ。
え?違うの?
本来は中国・六朝時代の言葉で
「屋下に屋を架する」だそうです。
確かに、屋上に屋根を架けたら、部屋がひとつ増えるだけだ。
なんと。
夏目漱石(明治40年)、芥川龍之介(昭和2年)、阿川弘之(昭和54年)
等に「屋上屋を架す」の用例があるようで。
当時の辞書には載っていないものが多かったそうですが、
現代辞書には大抵載っていますね。
大御所が使ってるからなあ…。
最後にもうひとつ。
「輪をかける」と同じ意味で
「しんにゅう(辶)をかける」という言葉があるそうです。
令和ロマンのネタじゃないか笑