https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190413-00064112-gendaibiz-int
「カンジダ・オーリス」と呼ばれる真菌(空気中を漂うカビ)が引き起こす、深刻な感染症が世界的に広がりつつある。
https://www.nytimes.com/2019/04/06/health/drug-resistant-candida-auris.html
上記記事によれば、これまで米国では587名の患者が報告されており、他にも英国やスペイン、ベネズエラをはじめ各国で感染者が出ているという。
この病原菌は複数の医薬品(抗菌剤)に対して耐性を持つため、医療関係者や科学者らが危機感を募らせている。
最初に報告されたのは日本
カンジダ・オーリス(Candida auris)が世界で最初に報告されたのは日本で、それは2009年のことだ。元々は、ある病院に入院していた女性患者の耳の内側から発見されたという。
ただし、現在、世界各国で報告されている同感染症が当時の日本から広がったというわけではなさそうだ。米CDC(疾病対策予防センター)がインドやパキスタン、ベネズエラ、南アフリカ共和国、そして日本で報告されたカンジダ・オーリスのゲノム(遺伝情報)を比較したところ、いずれも異なる系列に属することが判明した。
つまり、それは地球上のどこか一箇所で発生したのではなく、むしろ広い地域に渡って別々の起源を有するのではないかと見られている。これらの菌が家畜による堆肥等から農作物、地域住民、そして海外旅行客らを介して世界全体に広がっていったと見られている。
薬剤の過剰投与・乱用が原因
カンジダ・オーリスが日本で発見された当初、この真菌は強い毒性も抗菌薬に対する耐性も示さなかった。しかし、その後、世界各国で感染が広がる過程で、そうした凶悪な性質を育んでいったようだ。
それには恐らく、現代社会における「抗生物質」や「抗菌薬」など薬剤の使い過ぎ・乱用が影響している。つまり本来投与する必要のない病気に対しても、これらの特効薬が投与されてしまうからだ。こうした薬剤との戦いに生き残った細菌や真菌はいわゆる「薬剤耐性菌(super bug)」と呼ばれるが、カンジダ・オーリスはその典型と見られている。
米CDCによれば、カンジダ・オーリス全体の90%は少なくとも1種類、同30%は2種類以上の抗菌薬に対する耐性を備えているという。
これに感染し易いのは高齢者、あるいは何らかの病気などのせいで免疫力の低下した人たちだ。さらには免疫系が未だ十分に発達していない新生児も、感染の危険性があるという。病気が発症すると、高熱や体の痛み、だるさを訴えるが、症状が悪化すると死に至ることもあるようだ。
これまでにスペインの病院で報告されたケースでは、カンジダ・オーリスに感染した患者の41%が30日以内に死亡したと見られるが、病院側の発表によれば、必ずしも、この感染症のためではないという。何故なら、患者らは元々他にも病気を抱えていたため、真の死因を識別し難いためだ。
カンジダ・オーリスは繁殖力が非常に強く、2015年、これに感染した患者が入院していたロンドンの病院では、「エアロゾル(微粒子)化した過酸化水素」を噴霧する最先端の除去装置を使っても、この病原菌を(患者がいた)病室から完全に除去することができなかったという。
このため看護師ら病院スタッフも、これに感染した患者に近寄るのを恐れる傾向があるようだ。たとえば2017年、ニューヨークの某病院ではカンジダ・オーリスに感染した72歳の男性患者が、ベッド上で自身の排泄物と共に1時間以上も放置され、患者の家族が病院の対応に憤慨したという(この患者はその後、病気が治って退院した)。
これと共に気になるのは、こうした病院やそれが位置する地方自治体等が感染者が出たことを公表したがらないことだ。その理由は悪評が立つのを恐れることと、パニックを回避するためと見られる。それは英米だけでなく各国で共通して見られる傾向だが、このように公表を怠ると、むしろ感染拡大の危険性が高まるとも見られている。
もしも上記のような状況が放置されれば、2050年には(カンジダ・オーリスのような)感染症による死亡者数は世界全体で年間1000万人に達し、癌による死亡者数(2050年に推定で年間800万人)を上回ると予測する調査結果もあるという。