ドッグフード原材料シリーズ13回目です。
今回はきっとご利用されている方が多いであろうナチュラルハーベストです。
「巣ごもりニヤです。このフードは真空パックがポイント高いんだって」
原材料とは違うのですが、一目見て分かる点で空気を抜いた真空パックになっているのが
開封前の酸化防止策として秀逸です。
そしてこのフードはヴァンガードインターナショナルフーズという日本の企業が海外を拠点にして作っています。
フードの原産国はアメリカですが、日本の犬と飼い主向けのレシピとなっています。
ちょうど以前に紹介したキアオラ のような感じですね。
このブランドは種類が多いのですが、まずは一般的な「ベーシックフォーミュラ・メンテナンス・ラム」を。
ラム生肉(Fresh Lamb)、ラムミール、精製白米、えんどう豆繊維、米ぬか
えんどう豆タンパク質、鶏脂肪(ビタミンEで酸化対策済)、亜麻仁、ビール酵母
加水分解チキンエキス、リン酸カルシウム、塩化カリウム、海塩、ブルーベリー
クランベリー、タウリン、プロバイオティクス(アシドフィルス菌、カゼイ菌、フェシウム菌)
月見草油(低温圧搾)、塩化コリン、キレート亜鉛、グルコサミン塩酸塩
コンドロイチン硫酸塩、ビタミンE、キレート鉄、ベタイン、キレートマンガン
キレート銅、ビタミンA、ナイアシン、パントテン酸カルシウム、ベータカロテン
ビタミンB12、ビタミンD3、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、硝酸チアミン、4ビオチン
ヨウ化カルシウム、酸化防止剤(ローズマリー抽出物)、葉酸
一番最初にラムの生肉が挙げられているのは良い点です。
ただし2番目にラムミールが来ている点にご注目。
ラムミールはラムの枝肉から食肉部分を取った後の肉及び骨を加熱乾燥させて
粉状に挽いたものです。乾燥しているので、水分の多い生肉よりも同じ重量当たりの
タンパク質が多くなります。
ですから、このフードの主なタンパク源はラムミールであると言えます。
ちなみにこの会社は原材料の原産国をすべて公開しています。
ラム肉はNZとオーストラリア、ラムミールはNZ産です。
アメリカ原産フードの多くもラムやラムミールはNZまたは豪州産です。
次に来ているのが精製白米。アメリカ産の米なので多分粘りの少ない長粒種だと思います。
ほぼ100%炭水化物源ですが、少し後に米ぬかが加えられているので、
精製によって失われたビタミン類などが補われていると思われます。(ごく微量ですけれどね)
えんどう豆繊維というのは、簡単に言えばえんどう豆の皮です。
さやではなくて、豆の外側の薄い皮。不溶性の食物繊維源です。
米ぬかは先に少し書きましたが、ビタミンB群などの他ミネラル類も含まれますが
同じく米ぬかに含まれる食物繊維やフィチン酸に吸収を妨げられるので、ミネラルについては
あまり頼りになりません。
えんどう豆タンパク質は植物性のタンパク質としては良質ですが、
犬にとっての必須アミノ酸のいくつかは含まれていません。
動物性タンパク質よりも安価なので、ドッグフードにおいてはタンパク質量の調整役とも言えます。
鶏脂肪はオメガ6脂肪酸源として、またフードの風味を増すためにも使われます。
酸化防止策としてビタミンEが使用されているのは安心ですね。
亜麻仁、フラックスシード ですね。
今までにも他のフードで書いたように、亜麻仁はオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸を
バランスよく含みますが、犬は植物性のオメガ3脂肪酸であるアルファリノレン酸を
体内で有効に利用するためのDHAやEPAに変換する能力が高くありません。
ですから、このフードを与えている場合はフィッシュオイル などDHAやEPAが
そのまま含まれるオメガ3脂肪酸源を補うことをお勧めします。
亜麻仁は他に食物繊維やリグナンなど抗酸化物質の摂取が期待できます。
ビール酵母はビタミンB群の他、抗酸化物質であるセレンをはじめミネラルを多く含みます。
腸内環境などおなかの調子を整えるのにも有効です。
加水分解チキンエキスは、タンパク源であるチキン(多くの場合は副産物)を塩酸または
酵素で分解してアミノ酸加工物にしたもので、旨味成分です。
この製品では多分最後の仕上げ工程で表面に吹き付けられているのだと思います。
リン酸カルシウム、塩化カリウムはカルシウムとカリウムのサプリメントですね。
海塩、犬にも塩分は必要です。ミネラル類を含む海塩は良い塩分のソースです。
ブルーベリー、抗酸化物質アントシアニンを多く含むフルーツです。
アントシアニンは熱の影響を受けにくいので、フードに含まれているものも有効です。
クランベリーも抗酸化物質を多く含みます。ビタミンCが豊富なことでも知られますが
これについては熱加工でほとんど失われてしまいます。
タウリンはアミノ酸の一種で、肉類に含まれるシステインとメチオニンという別の2種類の
アミノ酸から体内で合成することができます。
体内で合成することが可能なので必須アミノ酸ではないのですが、心臓の機能を正常に
保つなど重要な役割を果たすものです。
このフードでは、高温調理されているラムミール、また米ぬかやえんどう豆繊維、亜麻仁など
の高食物繊維といったタウリンの吸収のジャマになってしまう要素がいくつかあるので、
こうしてタウリンが添加されていることは重要な安心材料です。
プロバイオティクスは腸内環境を良好に保つための微生物群です。
熱に弱いので、この製品では冷却後に添加されているそうです。
この製品は真空パックなので、輸送中なども微生物群は保たれていると思われますが
開封後の常温保存では減少していくと思われるので、その分は差し引いて考えましょう。
月見草油、これはこのフードの大きな特徴のひとつです。
月見草油にはガンマリノレン酸というオメガ6脂肪酸の一種である脂肪酸が含まれます。
オメガ6の代表であるリノール酸(コーン油、大豆油、ヒマワリ油などに豊富)は体内でガンマリノレン酸に変換されます。
リノール酸には体の炎症反応を促進させる働きがあるのですが、
ガンマリノレン酸に変換された時点で炎症反応を抑えるという逆の働きになります。
しかしこの体内での変換能力は年齢とともに低下することが多いのです。
若い頃は大丈夫だったのに、年とともに皮膚の痒みなど炎症が出やすくなったりする理由の一つです。
ですから変換の必要がなく最初からガンマリノレン酸の形で含まれているオイルは
体への負担が少なく、なんらかの炎症がある場合は症状を和らげることもあります。
ガンマリノレン酸を含む食品は非常に少なくて、この月見草油の他にはボラジオイル、
ブラックカラントオイルなどがあります。
ただし月見草油はてんかんなどの発作活性を誘発する可能性があるため、
てんかんなど発作性疾患のある場合はこのフードは避けた方が良いかと思います。
塩化コリン以下は他のフードでもおなじみのビタミン、ミネラル類の添加物なのですが
いくつか特筆すべき名前があります。
グルコサミン塩酸塩とコンドロイチン硫酸塩、これは関節をサポートするサプリメントとしておなじみの名前ですね。
他のフードでもたまに見かけますが、これらが配合されているフードはそれほど多くはありません。
それからコンドロイチンから数えて3つ目のベタイン。
これはドッグフードの原材料としては初めて見ました。
ビート(甜菜)から採れるアミノ酸の一種で甘味調味料としても、
肝臓の働きをサポートするための機能性食品としても使用されています。
酸化防止剤は天然成分であるローズマリー抽出物のみであるのも安心材料です。
「全体として、おかーさんはどう思いますか?」
原材料を見て受ける印象は「とても意欲的に良いフードをお手頃価格で作ることを
目指していらっしゃる」という印象です。
ハーブ類などが使われていないので、自分流アレンジにも勝手が良さそうです。
一方でオメガ3脂肪酸源や月見草油など、知っておきたい注意点もあります。
それから粗タンパク18%とやや低めなので、成長期の犬や運動量の多い犬には向きません。
毎回ではなくても、ゆで卵や茹でたお肉を少量トッピングするのもお勧めします。
同じベーシックフォーミュラのシリーズで、タンパク源がターキーのものは
タンパク源だけでなく、炭水化物源もラムとは違うものが使われているので
アレルギーがない場合のローテーションにも良いかと思います。
同じくベーシックフォーミュラのフィッシュは、フィッシュミールが使われていないので
その点は安心なのですが(米国を流通するフィッシュミールには合成酸化防止剤の
エトキシキンの使用が義務付けられているので)その分動物性タンパク質が少なくなります。
一番最初の原料もソルガムという植物性タンパク質豊富な穀類ですから、
無塩タイプのサバ缶やなまり節、さっと茹でたイワシなどを少量トッピングすると
バランスが良くなるかと思います。
ターキーにはフィッシュオイル などオメガ3サプリを、
ターキーとフィッシュ共に月見草油に関する注意点はラムと同じです。
ナチュラルハーベストでは、マイリトルダーリンという製品についてもリクエストを
頂いていたのですが、これはレシピがガラリと違うので、次回に単独で書きます。
ヴァンガードインターナショナルフーズさんのサイトはこちら