ドッグフード原材料シリーズ、今回はアメリカのフードBLACKWOODです。
ロウファットでリクエストをいただいたので、これを取り上げますが
他の種類のものもそれほど大きくは変わりません。
日本ではレシアンという会社が輸入代理店となっています。
「アメリカのフードだけどニコは食べたことがないよ」
では原材料を見てまいりましよう。
この会社のサイトによると「日本の犬に合わせた日本レシピで製造」と書かれていますが、下の紫の字の原材料がアメリカのサイトと違う部分です。
チキンミール、玄米、キビ、グレインソルガム、オート麦、パール大麦
ニンジン、セロリ、ビート、パセリ、レタス、クレソン、ホウレン草、
乾燥てんさい、米ぬか、天然香味料、鶏肉脂肪(天然配合トコフェロールで保存)
乾燥ビール酵母、卵製品、ニシンミール、鶏軟骨、炭酸カルシウム
亜麻仁、レシチン、海塩、モノナトリウムリン酸塩、DL-メチオニン
ニシン油、塩化カリウム、L-リジン、ローズマリー、タイム、クミン
カラシ種子粉、赤唐辛子、クランべリー、アップル、カボチャ、海藻
塩化コリン、乾燥乳酸桿菌発酵産出物、フラクトオリゴ糖、タウリン
グルコサミンHCL、ユッカ・シディジェラ抽出物、ビタミンE
ミネラルオイル、アスコルビン酸、ナイアシン、天然乾燥海藻
d-カルシウムパントテン酸塩、リボフラビン、ビオチン、ビタミンB12
チアミン硝酸塩、ビタミンA酢酸塩、塩酸ピリドキシン、クエン酸
ビタミンD3、葉酸、硫酸鉄、硫酸亜鉛、タンパク質含有亜鉛
タンパク質含有鉄、硫酸銅、酸化亜鉛、硫酸マンガン
タンパク質含有マンガン、タンパク質含有銅、酸化マンガン
セレン、ヨウ素酸カルシウム
最初の原材料はチキンミールです。生の鶏肉は原材料として使われていません。
チキンミールは鶏肉を骨ごと加熱して油脂を搾り、さらに乾燥させて粉状に挽いたものです。
水分と油分がほとんど取り除かれているため、タンパク質がギュッと凝縮されて含まれます。
ただしチキンミールの製造時に高温調理されているので、タンパク質に含まれるアミノ酸は損なわれている可能性が高いです。
それを補う意味もあってか、この製品には必須アミノ酸のメチオニンとリジン、アミノ酸様物質のタウリンが添加されています。
その次に5種類の穀類の名前が並んでいます。
玄米 お馴染みの白米の前の段階、ヌカと胚芽が付いたままの状態の米です。不溶性食物繊維とビタミンB群、ミネラルを豊富に含みます。
キビ 桃太郎のきび団子のキビです。不溶性と水溶性の食物繊維、ビタミンミネラル、タンパク質を豊富に含みます。
グレインソルガム これもキビの一種、日本語ではタカキビと言います。ビタミンミネラルタンパク質が豊富です。食物繊維は不溶性が大半を占めます。
オート麦 オートミールの原料になる麦です。水溶性食物繊維とビタミンB群、タンパク質を多く含みます。
パール大麦 大麦のふすま(皮)を取り除いたものです。水溶性食物繊維とビタミンミネラルを多く含みます。
これらの穀物類は「タンパク質などを多く含む」と書きましたが、メインとなる栄養素は炭水化物です。
ニンジン、セロリ、ビート、パセリ、レタス、クレソン、ホウレン草
推測ですが、これらの野菜群は乾燥ミックスではないかと思います。
フードの原材料は重量ベースで多い順に表記されているのが普通ですが、一覧の前半(つまり多く含まれる)にこれだけの野菜が個別で使われているとは考えにくい。
特にパセリやクレソンが個別にドバッと入っているとは思えないですよね。
これらの野菜が含まれる乾燥ミックスが重量ベースで穀類の次と考えるのが妥当です。
それから3番目にビートというのがちょっと疑問な点です。
ボルシチに使われる赤い根菜ならビーツと表記するのが普通です。
ビートだと甜菜大根(砂糖大根)なのですが、これはそのまま食べる食材ではありません。
ビーツだとしてもペットフードに使われているのは相当珍しいのですが、表記の間違いなんだろうなあ😒
ちなみに乾燥野菜ミックスとはこんな感じです。
基本的にペットフードに使われる野菜や果物は乾燥品です。
乾燥てんさい
これは他のフードではビートパルプと表記されるのが普通です。
てんさい(甜菜)は砂糖を採るための農作物で、そのまま食べるものではありません。
砂糖を製造するため汁を搾った際の残りの繊維がビートパルプで水溶性と不溶性の食物繊維を含みます。
米ぬか
米の胚芽と種皮です。ビタミンB群、ビタミンE、食物繊維を豊富に含みます。
でもこの製品は玄米を使っているし、他にも食物繊維を含む材料が非常に多いのでちょっと過剰な気はします。
天然香味料
英語でもナチュラルフレーバーと表記されていて、内容がわかりません。
多分タンパク加水分解物ではないかと思います。
(肉副産物または植物性タンパク質を酵素または酸で分解して旨味の素のアミノ酸にしたもの)
鶏肉脂肪
鶏脂肪は必須脂肪酸であるオメガ6脂肪酸のリノール酸とオメガ9脂肪酸のオレイン酸を多く含みます。
乾燥ビール酵母
ビールを醸造する際に使われる酵母なのでこう呼ばれます。ビールの成分が含まれるわけではありません。
ビタミンB群、水溶性食物繊維、アミノ酸を豊富に含み、プロバイオティクスとしても働きます。
卵製品
これもはっきりしない表記の仕方なのですが、英語でもエッグプロダクトとあるので直訳ですね。
ペットフードの卵製品と言えば、全卵の乾燥粉末だと思われます。良質のタンパク質源です。
ニシンミール
正確にはニシンではなくメンハーデンのミールです。
メンハーデンは小さくて骨が多いので人間の食用に適さず、漁獲高のほとんどがフィッシュミールのになります。
メンハーデンはニシン科の魚ではあるのですが、この表記はちょっといただけないですね。
鶏軟骨
鶏の骨つき肉でよく見かける関節をつなぐ軟骨です。
コンドロイチンとコラーゲンを多く含むので、関節ケア食材として使われています。
次に炭酸カルシウムが書かれていますが、ビタミンミネラル類は後にまとめます。
亜麻仁
亜麻の種子(仁)、フラックスシードとも呼ばれます。
ゴマと似ていますが、ゴマはゴマ科、亜麻はアマ科と別のものです。
オメガ3脂肪酸の一種であるアルファリノレン酸を豊富に含み、植物性オメガ3の代表として知られています。
アルファリノレン酸は体内でDHAやEPAに変換して活用されるのですが、犬はこの変換能力が低いためオメガ3脂肪酸摂取源としては適切ではありません。
しかしリグナンなどの抗酸化物質、水溶性と食用性の食物繊維を多く含むので健康上のメリットはあります。
海塩
英語ではシーソルト。精製塩ではない天然塩だということです。
適量の塩は生命を維持するために必要です。
ニシン油
これも前述のニシンミールと同じくメンハーデンの油です。
オメガ3脂肪酸のDHAとEPAを含み、犬にとっては良質なオメガ3脂肪酸源です。
L-リジン、DL-メチオニン、タウリン
リジンとメチオニンは必須アミノ酸のうちの2つで、タウリンはアミノ酸様物質です。
リジンもメチオニンも肉や魚に含まれており、タウリンはメチオニンと他のアミノ酸から体内で合成されるのですが
高温での加工によって、アミノ酸の一部が分解されてしまい必要な機能が果たせないことがあります。
この製品のタンパク質源は高温加工されたミールなので、アミノ酸が不足しないようこうして添加されています。
ローズマリー、タイム、クミン、カラシ種子粉、赤唐辛子
これらはハーブ類として使用されているものですが、ローズマリー以外酷いラインナップだと思います。
ローズマリーは酸化防止剤として使用されるくらい抗酸化作用の強いハーブですが、犬の体にはマイルドなものです。
タイムは抗菌作用の強いハーブで、そのため長期摂取は避けるべきものです。毎日食べるフードに使うものではありません。
クミン、カレーやチリに不可欠のスパイスですが辛いものではありません。抗酸化作用など良い面もあるのですが犬が毎日摂るには強過ぎます。
カラシ種子粉、カラシは犬の胃にはきつ過ぎて胃痛や吐き気を引き起こす恐れがあるものですが、アメリカの公式サイトではこのカラシは犬にも安全なものと説明しています。
カラシの辛味成分は大根の辛味成分と同じなのですが、生の大根でさえ犬の体調によっては胃に負担になることがあります。
安全な種類で少量とは言え、カラシは犬が毎日食べるものに添加する必要はないものです。
赤唐辛子、これもカラシと同じで添加する必要がありません。確かに唐辛子にも健康に役立つ面はあります。
しかしカラシや唐辛子の成分は必要不可欠ではないし、他に代用できる安全なものが沢山あります。
以前にネギの仲間のリーキを使っているフードの時にも書きましたが、他に安全で良いものがあるのに何故こんなものをドッグフードに使うのか。
奇をてらって他社と差別化を図っているのかもしれないけれど、これらが原材料一覧に並んでいることは誤ったメッセージを発信することにもなります。
クランベリー
日本ではあまりなじみがないですが、コケモモの仲間の果物でビタミンCと抗酸化物質が豊富です。
アメリカではドッグフードにもよく配合されています。
アップル
アップルと書かれていますが、正確にはアップルポマース=ジュースなどを搾ったりんごの残りの繊維を乾燥させたものです。
このブランドの他の製品では「りんごの絞りカス」と表記しているものもあって統一されていないようですね。
カボチャ
日本の栗南瓜とはかなり違うオレンジ色のハロウィーンのカボチャです。
βカロチンと食物繊維が豊富で犬のおなかにも優しい食材です。
海藻 ヨードなどミネラル類の補給に使用されます。
乾燥乳酸桿菌発酵産出物
あまりなじみのない書き方ですが、これは乳酸菌などプロバイオティクスです。
英語サイトで見るとラクトバチルス系3種とビフィドバクトリウム系1種の4種の菌が含まれます。
腸内で働いて、腸内環境を良好に保ちます。
フラクトオリゴ糖
オリゴ糖は名前の通り糖ですが、難消化性で吸収されないため水溶性食物繊維のような働きをします。
腸内の微生物のエサになるので微生物が有効物質を産生するサポート役=プレバイオティクスです。
ユッカ・シディジェラ抽出物
一般的にはユッカ・シジゲラと表記されます。アメリカ英語だとシディジェラの方が近いね😆
リュウゼツラン科の植物ユッカの根の抽出物で、抗炎症作用と便の匂いを抑える働きがあります。
ミネラルオイル
思わず「は〜?」と声が出ましたが、これはきっと何かの間違いだと思います。
ミネラルオイルって鉱物油です。化粧品などでも「鉱物油不使用」とうたっているのがありますよね。
そもそもミネラルオイルは食用油ではないし、アメリカのブラックウッドの原材料には表記されていません。
入っていたら大問題だし、入っていないものが原材料一覧に書いてあるとしたら他の原材料への信頼も一気に崩れます。
どんなふうに解釈しても、これだけで一気にNGになるレベルです。
天然乾燥海藻
単に海藻という表記でしたが、すでに出ている原材料ですよね。
これは日本の輸入業者の管理の甘さですね。些細なことですが、こういうことは一時が万事になりがちです。
炭酸カルシウム
カルシウム補給のために添加されているもので、多分貝殻か卵殻由来だと思います。
レシチン
大豆や卵黄に含まれるリン脂質で、体内ではあらゆる細胞膜に含まれています。
神経伝達物質のアセチルコリンの材料でもあります。
モノナトリウムリン酸塩
一般的には単にリン酸塩と呼ばれ、加工食品の安定剤や保存料として使用されます。
摂り過ぎるとカルシウムや亜鉛などの吸収を妨げるという弊害がありますが、ドッグフードに含まれるものだけであれば心配はないでしょう。
(人間の場合、ありとあらゆる加工食品に使われているので知らず知らずに大量に摂取していることもあるのでよく問題視されます)
ビタミンE、アスコルビン酸(ビタミンC)などの以降はビタミンとミネラル類です。
タンパク質含有亜鉛とかタンパク質含有鉄と表記されているミネラルがいくつかあります。
これは吸収しにくいミネラルとタンパク質をキレート結合させることで吸収量を高めたものです。
タンパク質キレート亜鉛、亜鉛タンパク質化合物という表記が一般的です。タンパク質含有では少し意味が違ってくるので。
それぞれの原材料について、もっとじっくり解説したブログはこちらです。
ペットフードは何からできている? (まだ3記事しかないけど😅 )
「あ〜、怒ってるわ〜。”どうなの?”って聞くまでもないわ〜」
ニヤ、まあちょっと待ちなさい。まだ解説があるから。
このブランドのフードは低温調理がセールスポイントになっています。
しかし、動物性タンパク質はミールしか使われていない点でそれは半分くらいしか意味がないです。
ミールにする時点で高温加工されていますからね。
ただ、このブランドは全体的に炭水化物多めですが、炭水化物の低温調理は意味があります。
炭水化物を120度以上の高温で調理するとアクリルアミドという有害物質が生成されるので、低温調理ではその心配がありません。
(アクリルアミドについてはこちら食品安全委員会の解説をご参照ください。)
ただ全体的に見ると、ミールしか使っていないフードとしては値段が高過ぎる気がします。
アメリカでの価格で言えばブルーバッファローやナチュラルバランスとほぼ同じです。
日本で買える他のブランドと比べるとナチュラルバランスやナチュラルハーベストよりも高くて、アカナとあまり変わらないくらい。
原材料から見ると、割高感は否めません。
さらに原材料解説のところで書いたように、疑問点が多すぎる。
アメリカの公式サイトではいまだに「グレインフリーフードは拡張型心筋症と関連」などと書いていて情報が古過ぎます。
それからビートの説明にボルシチに入れる赤い根菜の画像を使っている!全然違う食材で大間違いです。
日本の輸入業者のサイトでは「ヒューマングレード」と書かれていますが、このフードはヒューマングレードではありません。
少し前に書いたこの記事に当てはまる項目がすごく多いので要注意です。
もしも私だったらと考えると、アメリカでも日本でもこのフードは買いません。