タウリンのことについて、やっと書きます!
「遅かったね〜」
以前にサラッとタウリンとカルニチンについて書いた記事はこちら。
犬とタウリンとカルニチン
上の記事にも書いていますが、タウリンはアミノ酸の一種です。
その主な働きは
1. 心臓の機能を正常に保つ
2.脂肪の消化に必要な胆汁酸塩の成分になる
3.目の網膜の機能を正常に保つ
4.生殖機能を正常に保つ
今回の記事で関係してくるタウリンの働きは最初の2つです。
犬は基本的には肉に含まれるアミノ酸であるメチオニンとシステインから体内でタウリンを生成することができます。
また肉や魚にはタウリンそのものも、ある程度含まれています。
(一方、植物性のタンパク質にはタウリンは全く含まれておらず、メチオニンの含有量も少ないため
大豆やエンドウ豆など植物性のタンパク質を多く使用しているドッグフードでは
メチオニンが後から添加されている場合が多いです。)
「かわいい子にはお肉と魚を食べさせろってことね!」
ですから本来なら、動物性タンパク質を必要量摂取していれば
犬の体内でタウリンが不足することはないはずなのですが
犬が食べているものの中にはタウリンのジャマをするものもあるんですね。
今日はタウリンの吸収をジャマする食べ物について書きます。
これには上にあげたタウリンの働きの2番目「胆汁酸塩の成分になる」が関連します。
(他のタウリンを阻害する要因は明日以降に分けて書きます)
タウリンは胆汁酸と結合して胆汁酸塩となり、食べたものを消化する時に小腸内に分泌されます。
小腸内で脂肪の消化を助ける働きをした胆汁酸塩は腸管で再吸収されてタウリンは再利用されます。
しかし、食べ物に含まれる特定の食物繊維は小腸内に分泌された胆汁酸塩と結合し再吸収の邪魔をします。
そうすると胆汁酸塩に含まれているタウリンは、動物の便として排出されてしまいます。
このような状態が長く続くと、タウリン欠乏症につながるおそれがあります。
最近の研究では、米ぬか、セルロース、ビートパルプが低品質のタンパク源と組み合わさった時
犬の血漿タウリンレベルを低下させること、中でもビートパルプが顕著であることが示されています。
その他の食物繊維でも同様のことが考えられ、豆類や芋類が動物性タンパク質に比べて多すぎる場合
タウリンレベルの低下が予想されます。
「なんだかよくわからなくてポカーン」
豆類は総じて食物繊維が豊富ですが、芋類ではサツマイモは食物繊維が豊富です。
ジャガイモは不溶性の食物繊維自体はサツマイモに比べると少ないですが
デンプンの一部が犬には消化が困難で、その一部のデンプンは不溶性食物繊維と同じような働きをすることがわかっています。
つまり、市販のドッグフードで言えば、高品質の動物由来のタンパク質を十分に含み
植物由来のタンパク質をメインのタンパク質源として含まず、高レベルの食物繊維を含まないことが
タウリンを有効活用し心臓を守るために大切です。
ダイエットや下痢対策で食物繊維が多く含まれるフードを食べさせる場合は
与える期間が長期にならないようにすることと、場合によってはタウリンのサプリメントを使うことを
獣医師に相談することも一案です。
またダイエット対策として、野菜を細かく刻んで大量にフードにトッピングするのもあまり好ましくありません。
手作りの食餌の場合には、まず動物性のタンパク質の量がどれだけ必要かを把握すること、
穀類と野菜の量が極端に多いバランスにならないように注意することが大切です。
食餌に含まれる食物繊維の量が極端に多い場合は、タウリンだけでなく
カルシウムや鉄などのミネラル類の吸収も阻害することがあります。
「そりゃ犬がお肉より野菜たくさんなんてまちがってるもん」
次回はタンパク質の質とタウリンの関係について書きます。
単純に植物性か動物性かという話だけではないんですってよ。
人気ブログランキング
《参照》
Delaney SJ, Kass PH, Rogers QR, Fascetti AJ. “Plasma and whole blood taurine in normal dogs of varying size fed commercially prepared food.” Journal of Animal Physiology and Animal Nutrition 2003; 87:235-244.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12752830
Torres CL, Backus RC, Fascetti AJ, et al. “Taurine status in normal dogs fed a commercial diet associated with taurine deficiency and dilated cardiomyopathy.” Journal of Animal Physiology and Animal Nutrition 2003; 87:359-372.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14507418
Ko KS, Fascetti AJ. “Dietary beet pulp decreases taurine status in dogs fed low protein diet.” Journal of Animal Science and Technology 2016; 58:29-39.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27489723