ドッグフード原材料シリーズ、今回は『トライバル』です。
過去のドッグフード原材料の記事はこちら
サーモンとダックとターキーがあるのですが、2月にチキンが新発売となっています。
公式サイトによるとターキーは長期メーカー欠品中とのことなのでチキンに置き換わるのかもしれないですね。
どのフードもタンパク質源が違うだけで、他の原材料は同じです。
せっかくなので、新発売のチキンの材料を見ていくことにします。
チキンは発売されたばかりのせいかAmazonでは扱っていなかったのでサーモンの画像。
↑こちらは公式サイトです。
フレッシュチキン 35%、スイートポテト 35%、加水分解タラ 13%、
全卵 5%、ビートファイバー 4.5%、ビール酵母 1.5%、
チキンファット 1.4%、リグノスルフォン酸塩 1.25%、イヌリン 0.5%
ハーブブレンド 0.25%(パセリ、ローズマリー、イラクサ、カモミール、セージ、タイム、コリアンダーの葉、タンポポの葉、カンゾウ)
グルコサミン 0.098%、緑イ貝 0.05%、コンドロイチン硫酸 0.045%
ビタミン類(D3 1,500IU/kg)
ミネラル類(硫酸第三鉄一水和物 75mg/kg、酸化マンガン(II) 27mg/kg、硫酸銅(II)五水和物 13mg/kg、硫酸亜鉛一水和物 1.3mg/kg、無水ヨウ素酸カルシウム 1.3mg/kg、亜セレン酸ナトリウム0.2mg/kg)
酸化防止剤(トコフェロール抽出物)
原材料の一番最初にフレッシュチキン=鶏生肉がきています。
この製品はミールを使っていないことをアピールしているので、わざわざフレッシュという言葉を使っています。
35%とありますが、これは重量ベースでの割合です。
生肉は水分が多いので調理後は水分が飛んで、実質の割合はもっと低くなります。
スイートポテトがサツマイモでなくスイートポテトと表記されているのは良い点です。
公式サイトに掲載されている写真もオレンジ色のスイートポテトです。
炭水化物源ですが、食物繊維が多いため血糖値の上昇が緩やかな低GI食品です。
またニンジンのような色が表す通りβカロチンが豊富です。
スイートポテトも35%と書かれていますが、ここにはフレッシュの表記がないので乾燥イモかもしれません。
その場合、鶏生肉と同じ重量で入っていると、実質的にはポテトの割合がとても高くなります。
成分値を見ても粗タンパク質20.1%以上とあり、かなりタンパク質低めです。
加水分解タラ 酵素または酸を使って加水分解したタラで、タンパク質源となります。
タンパク質はアミノ酸がつながって成り立っていますが、酵素や酸を使って加水分解することでつながったアミノ酸がバラバラになります。
そのため消化吸収がしやすくなり、元々の食材にアレルギーがある場合もアレルギー症状が出ないなどの特徴があります。
加水分解されるタラは食用にしないアラ部分が一般的です。
加工後の形状は粉末で水分も少ないので、割合は13%と表記されていますが実質の製品中の加水分解タラの割合はもっと高いと思われます。
全卵は言うまでもなく良質なタンパク質源です。
ペットフードに使われる全卵は私たちがイメージする卵と違って、乾燥した粉末状です。
上記の加水分解タラと同様に、5%と表記されていますが実質の割合はもっと高いと思われます。
もしも乾燥していない普通の卵が使われているとしたら、5%という割合はツナギにもならないくらいの少量です。
ビートファイバー ビート(てんさい大根)から砂糖を作るための汁を搾った後の残りの繊維質です。水溶性と不溶性両方の食物繊維源となります。
4.5%と表記されていますが、英語表記ではパーセンテージが書かれているのは上記卵までの主原料のみです。
多分、信頼性を高めるために輸入業者が配慮して表記したのだと思われますが、率直に言って「その配慮は不要かな〜」と思います。
ビール酵母 エビオス錠などでお馴染みのビールを発酵させる際に使われる酵母です。
各種アミノ酸、ビタミンB群、ミネラル類を豊富に含み、腸内細菌のエサにもなります。
チキンファット 鶏脂肪です。オメガ6脂肪酸(必須脂肪酸)のひとつリノール酸とオメガ9脂肪酸のひとつオレイン酸を豊富に含みます。
リグノスルフォン酸塩 いきなり化学物質的で聞きなれない名前の登場で驚きますよね。
この製品は通常のドライフードよりも低温で加工されプレスして成形されています。
そのために製品を固めるための役割を果たす賦形剤(ふけいざい)として添加されているものです。
植物の細胞壁を構成するリグニンを化学処理して作られたものです。
一言『賦形剤』という表記が欲しいところです。
イヌリン 水溶性食物繊維の一種で、腸内細菌のエサとなるプレバイオティクスとして添加されています。
ハーブブレンド 9種類のハーブが挙げられています。
イラクサ、カモミール、タンポポなどマイルドで日常使いできるものも含まれていますが、
タイム、セージ、カンゾウなど長期使用してはいけないものも含まれています。
日常使いできる種類でも、ハーブは週に2日くらいは休憩したいものです。
個人的にはこのハーブのラインナップで自分の犬に与えるのはアウトです(神経質な反応なのは自覚しています)
他の条件が良くてこのフードを与えたいという方は、全く別のブランドの製品とローテーションをお勧めします。
グルコサミン、緑イ貝、コンドロイチン これらは全部関節のケアとして使われています。
緑イ貝はオメガ3脂肪酸を含み、関節炎サプリのアンチノールの原材料でもあります。
緑イ貝にはグルコサミンやコンドロイチンも含まれています。
原材料としては何も問題はないのですが、これらの0.098%などの割合の表記は問題です。
日本語で0.098%と表記されているグルコサミンは、英語の表記では980 mg/kgとなっています。
これは製品1kg中に含まれるこの成分が980mgという意味で、その意味では0.098%は間違いではありません。
しかし日本語の表記では鶏肉35%のように原材料時点でのパーセンテージが同じ書き方で表記されています。
同じ原材料一覧の中で、表記基準が変わっているのは間違っています。
グルコサミン、緑イ貝、コンドロイチンの割合を表記したいのであれば、英語表記と同じように1kg当たりと明記するべきです。
(これは製品の問題ではなく、日本の輸入業者の問題です。)
最後に来ているのは添加されているビタミンとミネラル類ですが、これも英語表記と微妙に違います。
日本語表記では足りないものがあったり、数値が食い違っていたりします。
例えばアイムスくらいの超大規模グローバル展開のフードなら国によって処方が違うこともあるのですが
この規模のフードでそれは考えられないので、これは日本の輸入業者の間違いだと思われます。
「このフードで他に何か気をつけることはある?」
このブランドが強くアピールしているのはミールを使っていないことと高温で焼き上げるのではなくコールドプレス製法を採用していることです。
チキンミールやフィッシュミールなどのミール類は高温加熱加工されているため、アミノ酸の一部が失われます。
ですからミールを使わず生の肉を原材料にしている本製品は肉類のアミノ酸が保たれています。
また製品の最終加工も100度以下の低温圧縮(コールドプレス)の製法なので、各種栄養素の損失を防ぎます。
また低温加工のため、胃腸内での消化のしやすさもアピールされています。
この製品を与える上で注意したいことは、オメガ3脂肪酸が少ないことです。
日本語では表記されていませんが、英語ではOmega-3→ 1.95 g/kg, Omega-6→ 12.35 g/kgとあります。
原材料の中にオメガ3脂肪酸源となるものが緑イ貝のみなので、これは当然の数字です。
オメガ3脂肪酸の摂取に配慮している他社のフードではオメガ6はオメガ3の3〜4倍の割合で含まれます。
この製品を与える場合、オメガ3のサプリメントなど対策が必要です。
それとハーブの項目でも書いた通り、他の製品とのローテーションをお勧めします。
「もうすでに文句タラタラって感じだけど、全体的にどうなの?」
低温製法というのは良いと思うのですが、ところどころ詰めの甘いフードだなという印象を受けます。
アミノ酸が損失していないと言っても、タンパク質含有量が20%そこそこというのは運動量の多い犬には物足りないかもしれません。
それから上記でも繰り返している通り、輸入業者による表記の不備が目立ちます。
公式サイト自体はオリジナルを基にしているので全体的にはしっかりしているのですが、細かい(しかし大切な)間違いが目に付きます。
ところで日本の公式サイトで「オランダ産コールドプレス製法ドッグフード」と書かれていたのでオランダの会社なのかと思ったらイギリスの会社でした。
オランダ語→英語の翻訳アプリでオランダ語のサイトを読んだら、そう書いてあった!
ちょっとこれはどうなの!?って感じですよね。
また日本語公式サイトでは「ヒューマングレードのフレッシュミートを使用」と書かれていますが、英語サイトにヒューマングレードの表記はありません。
オランダ語の販売サイトには「動物福祉、食品安全、トレーサビリティ、環境保護について責任を持って製造されていることを意味するレッドトラクター基準をクリア」とあります。
ヒューマングレードというのがこれを意味するのであれば、それはちょっと雑過ぎです。
しかしイギリスの公式サイトではレッドトラクター基準の表記も見当たらないので、オランダのサイトの情報も古い可能性があります。
過去の原材料シリーズでも何度も書いていますが輸入フードを買う時のポイントのひとつに、輸入業者の信頼性があります。
その点で不安を感じるところがありますね。
本日のニコニヤは2021年11月です。