前回から随分と間が空いてしまって恐縮です。
今回はベルギー産のフード、ブラバンソンヌを取り上げます。
こちらは公式サイト
外国産のフードは日本の輸入販売会社が書いているものだけでなく原産国の表示を読むようにしています。
ベルギー産ならフランス語なのですが、最初にちょっと手抜きをして英語で検索をしたらヒットするのが香港の販売サイトばかり。
「なぜだ?」と思って調べてみたら、このフードの販売会社の親会社が香港を拠点にしているからでした。
それにしてもヨーロッパのフードならイギリスの販売サイトがひとつくらいヒットしそうなものなのに?と思いつつ
フランス語で検索をしてみたら、この名前のペットフードが全然見つかりません。
公式サイトをよく読んだら「ベルギーでの工場での製造を決めました」とあったので
キアオラやナチュラルハーベストのフードと同じように、海外のメーカーに製造委託しているんですね。
「前置き長いわね」
さて、このフードはベルギー産なので栄養基準は欧州ペットフード工業連合会(FEDIAF)の基準に基づいています。
日本やアメリカが基準にしているのはAAFCOなので、ちょっと数値が違いますが
総合栄養食なのでフードと水だけで栄養バランスが取れる点は同じです。
ここでは小型犬用のチキン・グレインフリーを取り上げます。
この会社の製品は、動物性タンパク質を1種類に限定しているのも特徴のひとつです。
チキン、サツマイモ、レンズ豆、動物性油脂(チキン由来)、エンドウ豆
加水分解チキンタンパク質、サーモンオイル、亜麻仁
乾燥チコリー(フラクトオリゴ糖、イヌリン)、セルロース
ビタミン類(A、D3、E)、ミネラル類(鉄、銅、亜鉛、マンガン、ヨウ素、セレニウム)
ビール酵母、乾燥ニンジン、乾燥リンゴ、乾燥ナシ
酸化防止剤(αトコフェロール、ローズマリー抽出物)
乾燥クランベリー、乾燥ホウレンソウ、
グルコサミン、コンドロイチン、ユッカ抽出物
チキン
原材料の一番最初に書かれているのは重量ベースで最も多く含まれるものですから
それがチキンであるというのは良いことです。
この製品のチキンは低温乾燥させた脱水チキンだと公式サイトに書かれています。
ササミを原型のまま乾燥させた犬用トリーツのジャーキーがありますね。あれを想像してもらうと脱水チキンのイメージがわくと思います。
高温処理で乾燥させたチキンミールと違って、アミノ酸の損失がないのが良い点です。
また生肉と違って最初から水分量が少ないため、加工後に実質量が減るということもありません。
サツマイモ
これも日本のサツマイモではなく、スイートポテトと呼ばれるオレンジ色の芋だと思います。
炭水化物源ですが、食物繊維が豊富なため血糖値の上昇が緩やかな低GI食品です。
またβカロチンをはじめとする抗酸化物質やミネラルを多く含みます。
レンズ豆
平たくつぶしたような形からひら豆とも呼ばれます。
タンパク質を多く含む他、ビタミン、ミネラル、食物繊維も豊富な食材です。
動物性油脂(チキン由来)
鶏肉の脂肪はオメガ9脂肪酸であるオレイン酸、オメガ6脂肪酸であるリノール酸を豊富に含みます。
オメガ6脂肪酸は必ず食品から摂取しなくてはいけない必須脂肪酸です。
えんどう豆
グリーンピースですね。
炭水化物、タンパク質、食物繊維、ビタミンミネラル類を豊富に含みます。
加水分解チキンタンパク質
これは表記に誤りがあり、正確にはチキンタンパク加水分解物です。
チキンの内臓肉などのタンパク質を酸または酵素で分解し、タンパク質の構成成分であるアミノ酸にまで小さくしたものなので、タンパク質ではないのです。
タンパク加水分解物は旨味の成分でもあり、消化の良いアミノ酸でもあります。
サーモンオイル
オメガ6と並んで必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸の理想的な摂取源です。
サーモンなど魚の油に含まれるオメガ3脂肪酸はDHAとEPAです。
サーモンオイルが他の魚油と違うのはアスタキサンチンを含むことです。
アスタキサンチンとは鮭の肉のオレンジ色の成分で強力な抗酸化物質です。
亜麻仁
別名フラックスシード。リネンの原料である亜麻の種子です。
植物性のオメガ3脂肪酸であるαリノレン酸を豊富に含んでいますが、残念ながら犬はαリノレン酸を体内でほとんど活用できません。
しかしそれ以外にも水溶性と不溶性の食物繊維や抗酸化物質リグナンを豊富に含んでいます。
乾燥チコリー
別名アンディーブで野菜としてサラダなどに使われますが、乾燥したチコリはハーブとして使われます。
消炎作用や利尿作用、ガスを排出する作用があります。
水溶性食物繊維のイヌリンやフラクトオリゴ糖を含むため、腸内細菌のエサとなるプレバイオティクスとしても働きます。
セルロース
セルロースとは食物に含まれる不溶性食物繊維の一種です。
水に溶けないので不溶性と呼ばれますが、腸内で水分を吸収して便通をスムーズにします。
ただしセルロースが含まれることで便の量が増える可能性はあります。
ビタミン類(A、D3、E)
ビタミンB群は添加されていないようですが、これは原材料のビール酵母やレンズ豆から摂取できるからでしょう。
ビタミンCは、犬は体内で合成できるので基本的には必要ありませんが、これも原材料のクランベリーからも摂取できます。
ビール酵母
ビールを醸造する時に使われる酵母なのでこう呼ばれます。
ビタミンB群、水溶性食物繊維、各種アミノ酸を豊富に含みます。
野菜と果物
乾燥ニンジン、リンゴ、ナシ(これは洋梨ですね)ほうれん草。
乾燥加工されたものですが、βカロチン、食物繊維、ミネラル類が摂取できます。
乾燥クランベリー
クランべリーはビタミンCを非常に多く含みます。
また鮮やかな赤い色は豊富に含まれる各種ポリフェノールで抗酸化物質です。
尿路感染症の予防がよく取り上げられますが、フードに含まれる量ではそのような効能は期待できません。
グルコサミン、コンドロイチン
グルコサミンは軟骨の主たる成分、コンドロイチンは軟骨は皮膚などの構成成分です。
関節を保護する働きを持つ成分なので、食事やサプリメントから補給するため配合されます。
摂取したからと言って、関節の成分になるわけではないのですが
グルコサミンにはレクチン(植物に含まれる毒性成分)と結合して排出する働きがあります。
ユッカシジゲラ
リュウゼツラン科の多肉植物ユッカの地下茎から抽出した成分です。
ユッカは中南米で芋のように食用にされるのですが、抗炎症作用など薬用ハーブとしても用いられます。
ペットフードでは便のニオイを抑えるために配合されます。
他の種類のフードも、タンパク質源が魚になるか、炭水化物源が米とじゃがいもになるかといった違いで基本的にはほぼ同じです。
消化器サポートフードでは食物繊維多めで、その分アミノ酸の吸収に影響するおそれがあるせいか、アミノ酸を添加するなどきめ細かい配合だと思います。
「良いフードなの?」
良いフードだと思います。
使われているタンパク質が単一で、お腹が弱い子やシニアに優しいのも嬉しい点です。
アレルギーがある場合にも選びやすいですし、トッピングもしやすいですね。
強すぎるハーブなどが使われていない点も使い勝手が良さそうです。
この製品はベルギー産ですが国産でこういうシンプルで良質なフードが増えていけばいいのになあと思います。