ブログを読んで疑問に思ったことをメーカーに問い合わせて下さった方が
会社からの回答を連絡してくださいました。
・乾燥サーモンに使われている酸化防止剤はミックストコフェロールとローズマリー抽出物
・乾燥サーモンは温風ではなく熱加工したもの(ミールですね)
・回答も早くて感じの良い対応だったとのことです
「ああ、またあたしが食べないごはんの話をしている......。」
それではドッグフード原材料シリーズ第5回、今回はナチュラルバランスのフードです。
プレミアムフードと呼ばれるものの中では手頃なお値段で人気のフードです。
アレルギー対応やタンパク源の種類も多いブランドです。
とても種類が多いので、最もベーシックと思われるオリジナル・ウルトラ・ホールボディヘルスから。
鶏肉、玄米、オート麦、チキンミール、ポテト、ブリュワーズライス
鶏脂肪(天然混合トコフェロールで酸化防止)、乾燥ニンジン、ダックミール
サーモンミール、豆ファイバー、オートファイバー、自然風味、トマト、亜麻仁
ブリュワーズドライイースト、ニシン油、塩、塩化カリウム、DL-メチオニン、
塩化コリン、第二リン酸カルシウム、亜鉛アミノ酸キレート、硫酸亜鉛、硫酸鉄、
鉄アミノ酸キレート、硫酸銅、銅アミノ酸キレート、亜セレン酸ナトリウム、
硫酸マンガン、マンガンアミノ酸キレート、ヨウ素酸カルシウム、
Lアスコルビン2ポリフォスフェイト(ビタミンC)、
L-トリプトファン、ビタミンE、ナイアシン、Dカルシウムパントテン酸塩、
ビタミンA、リボフラビン、一硝酸チアミン、ビオチン、ビタミンB12、
ピリドキシン塩酸塩、ビタミンD3、葉酸(ビタミンB)、
天然混合トコフェロール、クエン酸、
タウリン、乾燥クランベリー、乾燥ブルーベリー、乾燥ほうれん草、
L-リジン、乾燥ケルプ、
乾燥ユッカシジゲラエキス、ローズマリーエキス
一番最初が鶏肉というのは良い感じですね。
鶏肉は良いタンパク質源ですが、水分が多いので加熱調理した後は水分が飛んで実質量はかなり目減りします。
次に穀物が二つ連続で来るので、この合計で鶏肉よりも穀類が多いと思われます。穀物は乾燥していますからね。
玄米は単なる炭水化物源ではなくビタミンミネラル、食物繊維などの栄養素も期待できますが、消化はあまりよくありません。
その次にオート麦と書かれていますが、英語での表記はOat Groats=ひき割りオート麦です。
オート麦は栄養価が高く玄米よりも消化しやすい穀物です。
グルテンを含みますが、小麦グルテンとは種類が違うため
セリアック病やグルテン不耐性の人や犬も食べられるものです。
次に来るチキンミールが、このフードの実質のメインタンパク源ですね。
ミールは原材料を加熱して油を搾り、高温で乾燥させて挽いて粉にしたものです。
最初から水分が飛んでいる分、タンパク質がギュッと多く含まれるからです
ポテト、ブリュワーズライスと炭水化物が続きます。
ブリュワーズライスは他のフードでは「ひき割り米」と表記されている場合があります。
しかし先に挙げたひき割りオート麦が、全粒穀物をひき割り加工しているのに対し
ブリュワーズライスというのは、精米した時に出る割れ米やくず米を集めたものです。
栄養価の高い部分ではなく、含まれるのはほぼ炭水化物のみです。
鶏脂肪は天然ビタミンEで酸化防止されています。
乾燥ニンジンは乾燥していても食物繊維やβカロチンは生と同じように豊富です。
次にダックとサーモン2種類のミールが来ています。
ダックミール、英語でダックというとアヒルと鴨の両方を指すのですが
ドッグフードにワイルドダック(鴨)を使うとも思えないので、養殖のアヒルですね。
サーモンミール。以前に書いたようにアメリカではフィッシュミールには
合成酸化防止剤のエトキシキンを使うことが義務付けられていますので
アメリカの製品であるこのフードにはエトキシキンが含まれています。
2022年9月8日追記
輸送の際にエトキシキン、BHA、トコフェロール由来の酸化防止剤のうちどれかを使うことが義務付けられています。
そのため、このフードにはエトキシキンが含まれる可能性があります。
原材料として仕入れた時点で使用されている添加物は表示されないので
原材料一覧を見てもエトキシキンは表示されていません。
「エトキシキンは気になるが、このフードを続けたい」という場合、
エトキシキンを解毒分解するのに働く肝臓や腎臓をサポートするハーブなどをプラスするという手があります。
ネトル、ワイルドストロベリー、バードック、クリーバーズなどの乾燥ハーブをパラパラと振りかけたり
ティーにして飲ませたりフードにかけたりして与えます。
これらのブレンドハーブも市販されています。
薬局で売っているゴボウ茶もバードックと同じ効果が期待できます。
2022年9月9日追記
ハーブをプラスする時は5日続けたら2日休むのペースで。
忘れたり、たまに切らしてしまっても別にかまわない、くらいのスタンスで。
豆ファイバー、オートファイバーとファイバーが続きますね。
その後にトマトとありますが、これはジュースなどを絞った後のトマトの繊維を乾燥させたものです。
これらの原材料名から、このフードは食物繊維がかなり多いことがわかります。
食物繊維は腸内環境を整えたり、便通をスムーズにするなどの働きがありますが
不溶性の食物繊維はアミノ酸やミネラルの吸収の邪魔になることがあります。
アミノ酸の吸収に関して言えば、食物繊維の他にもう一つ。
このフードのタンパク源はミールがメインなので、加熱加工された時にできる物質で
アミノ酸の吸収が邪魔される可能性があります。
それを補うために、メチオニン、トリプトファン、タウリン、リジンなどアミノ酸が添加されていますが
たまに、軽く茹でたお肉や魚を少しトッピングすることでも、その点を補うことができます。
亜麻仁はフラックスシード とも言いますが、植物性のオメガ3脂肪酸であるアルファリノレン酸を多く含みます。
アルファリノレン酸は体内でDHA、EPAに変換する必要があるのですが、犬はこの能力が高くありません。
そのためオメガ3のソースとしてはあまり期待できません。
リグナンという抗酸化物質、水溶性と不溶性の食物繊維の両方を多く含みます。
ブリュワーズドライイーストとはビール酵母のことです。
ビタミンB群とアミノ酸を多く含み、腸内環境も整える働きがあります。
自然風味、なぜ訳した?という感じですが、ナチュラルフレーバーですね。不要なんですけれどね。
ニシン油。これは正確にはメンハーデンフィッシュという小型のニシンの仲間の魚の油です。
犬が体内ですぐ活用できるオメガ3脂肪酸であるDHA、EPAを多く含みます。
塩、塩化カリウム、どちらも体に必要な必須ミネラルです。
DLメチオニンはアミノ酸です。必須アミノ酸の一つで、タウリンを合成するのにも必要です。
DLというのは合成方法の名前です。
本来、肉や魚には必須アミノ酸が全て含まれているのですが
先に書いたように食物繊維やミールの加熱加工との関係で、アミノ酸が吸収されにくくなるため
多くのドッグフードではこのようにアミノ酸が添加されています。
塩化コリンはビタミン様物質(ビタミンの様な働きをするけれど厳密にはビタミンではない)
神経伝達物質として重要で、本来は体内で合成できる物質ですが
アミノ酸が吸収されにくい状態では合成が不十分になるためフードに添加されます。
次にずらりと並ぶ第二リン酸カルシウム〜ビタミンC まではビタミンとミネラル類です。
硫酸やアミノ酸がミネラルの名前にくっついているのは、吸収を高めるための結合加工した物質です。
Lトリプトファンもアミノ酸です。Lは合成方法の名前。添加理由は他のアミノ酸類と同じです。
その後に再度ズラリと並ぶのは、ビタミンE〜葉酸まではビタミン類です。
天然混合トコフェロールというのもビタミンEなのですが、こんな風に書かれている場合は酸化防止の役割としての添加です。
トコフェロールは植物性油脂から抽出されたもので、いくつかの種類があり、その総称がビタミンE。
クエン酸、これも酸化防止剤として添加されています。天然由来の安全なものですが、一つ注意点があります。
アメリカで1994年から10年に渡って追跡調査された統計によると
クエン酸を含むドッグフードに水分をかけて与えていた場合、胃拡張/胃捻転のリスクが4倍以上になっています。
この調査は統計なので、その因果関係までは追求されていませんが、知っておきたい点です。
タウリン、これもアミノ酸ですが本来は体内で合成できるので食物から摂取が必要な必須アミノ酸ではありません。
しかし心臓の働きに重要な役割を果たし、不足した場合には拡張型心筋症を引き起こすなど重要なアミノ酸です。
このようにタウリンが添加されていることは安心材料の一つと言えます。
(ミールではない肉や魚が豊富に含まれるフードではタウリンが添加されていない場合も多くあります。)
次の乾燥フルーツと野菜類は抗酸化物質源として働きます。
Lリジンは必須アミノ酸の一つ。添加理由は今までのアミノ酸と同じです。
乾燥ケルプは昆布粉末です。ヨードの補給に大切です。
乾燥ユッカシジゲラエキスはユッカという根茎植物のエキスです。
海老芋みたいな野菜で、抗炎症作用があり関節炎にも良いと言われています。
ローズマリーエキスは天然の酸化防止剤の代表的なものです。
よく「てんかんの持病がある場合ローズマリーは禁忌」と言われますが
危険なのはローズマリーの精油で、生や乾燥の葉っぱ、酸化防止剤のエキスは安全です。
「話長くない?」「ホントよね〜長いわよ」
確かに長くなりました。
このブランドはアレルギー対応の「限られた原材料シリーズ」が売りでもあります。
バイソン、ベニソン、ダックなどタンパク源もバラエティに富み、ありがたいシリーズです。
ただこのシリーズは原材料の一番最初がスイートポテトまたはポテトで、肉類はその次に来ています。
ミール類は使われていないので、含まれる材料が良くわかり安心感がある反面、タンパク質は20%と少なめです。
タウリンは添加されているし、きちんと調整されていますが、知識として知っておきたいところです。
反対にハイプロテインシリーズ(特にラム)はタンパク質32%と高めなのですが
その中にマメプロテインも多く含まれていることは考慮に入れておきたい点です。
まとめますと、ナチュラルバランスは内容をよく知って、少し工夫して補助することでより安心感が高まるフードだと言えるでしょう。
そのまま与えてももちろん心配はありませんが「〇〇な点だけが気になる」という飼い主さんにとっては、そこを補う方法を知っておくことはお勧めです。
アレルギーがあってこのブランドにしているという方はローテーションも難しい場合がありますし
ローテーション以外のリスク管理も知っておくに越したことはありません。
「毎度長くなってすみません。ニコがあやまっておきます。」
次回はNOWフレッシュの予定です。