前回はホームセンターやドラッグストアで買える国内大手メーカーのフードを見て行きましたが、今回は手軽に買える海外大手メーカーのフードを取り上げます。
「毎度おまたせで申し訳ありません」
コーングルテンなど、普段ここではあまり出てこない原材料についての説明は前回の記事をご参照ください。
原材料のうち赤字で示したのは「これが入っているフードは避けたい」というもの。
紫字で示したものは「どちらかと言えば避けたい」「書き方が曖昧で不明」というものです。
まずは世界で2番目に大きいペットフードメーカー、ネスレピュリナの製品です。
ピュリナワン
チキン、米、コーングルテン、とうもろこし、牛脂、チキンミール、
小麦、脱脂大豆、たんぱく加水分解物、えんどう豆、にんじん、
ミネラル類(カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、クロライド、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素、セレン、硫黄)
グリセリン、カラメル色素、
ビタミン類(A、D、E、B1、B2、パントテン酸、ナイアシン、B6、葉酸、B12、コリン、K、ビオチン)
アミノ酸類(リジン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール)
たんぱく質26%以上、脂質16%以上
価格帯は2kgで2,000円くらいです。
一番最初の原材料=重量ベースで最も多く含まれているのがチキンです。この価格帯の製品としては注目に値する点です。
ただし原材料の時点で生の鶏肉は水分が多いため、調理後に水分が飛んだ状態では実質量はかなり少なくなります。
チキンの後には米、コーングルテン(コーンのタンパク質)、とうもろこしと穀類が並んでいるので、総合するとこの製品も穀類の方が多く含まれます。
使われているチキンの内訳には、「ほぐし粒」と称されている乾燥鶏肉も含まれます。
この乾燥鶏肉、英語表記を見るとグリセリンで過乾燥対策が取られていますが、日本語表記ではグリセリンの表記がありません。
グリセリンには植物由来のものと、石油由来(より安価)がありますが、後者の場合はあまり与えたくはないものです。
表記されていないものに赤信号や黄信号をつけるのは難しいところですが、ちょっと覚えておいてください。
チキンミールは英語表記の原材料ではチキンバイプロダクトミール=チキン副産物のミールとなっていますので、日本で買えるものもチキン副産物ミールが使われている可能性が高いです。
アメリカでのチキン副産物の定義は「頭部、足、内臓、首」で羽根は含まれません。
副産物というと「粗悪な原材料!」と決めつけられることが多いですが、犬にとってはそれほど悪い理由はありません。
鶏の頭やモミジ(足)首肉をわざわざ買って与える人もいるくらいですから。
食資源を無駄にしないという点でも、目くじらを立てる必要はないかと思います。
タンパク源は鶏肉とチキン(副産物)ミールの他、コーングルテンや脱脂大豆などの植物性タンパク質も「タンパク質26%以上」と書かれているうちの結構大きい部分を占めていると考えられます。
コーンや小麦に不足している必須アミノ酸のリジンが添加されているのは良い点です。
価格と品質のバランスから言えば、悪くないと思います。
(私が個人的にネスレピュリナ社がどうしても好きになれないということは別にして😔 )
次は今やペットフード業界世界No.1のマースペットケア社の製品です。
療法食のロイヤルカナンもマースの製品ですね。
アイムス
肉類(チキンミール、家禽ミール)、小麦、とうもろこし、大麦、チキンオイル、
植物性タンパク、家禽エキス、乾燥ビートパルプ、乾燥酵母、フィッシュオイル、STPP (トリポリリン酸塩)、フラクトオリゴ糖、
ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、D3、E、K3、コリン、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸)
ミネラル類(亜鉛、カリウム、カルシウム、クロライド、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マンガン、ヨウ素)
アミノ酸類(メチオニン)、酸化防止剤(BHA、BHT、クエン酸)
タンパク質25.0%以上、脂質14.0%以上
価格は2.6kgで約2,000円なので、ピュリナワンよりも少し低価格ですね。
この製品には原材料の時点で生の肉は使われていません。
チキンミールと家禽ミールという書き方をしていますが、家禽ミールというのは多分チキン副産物のミールだと思います。
小麦、とうもろこし、大麦とやはり穀物が多く使われていますね。
紫字で示した「植物性タンパク」これでは正体が何なのかさっぱりわかりませんよね。推測ですが、多分大豆ミールなんじゃないかなあ。何にせよ曖昧で不誠実な書き方です。
STPP(トリポリリン酸塩)という名前が並んでいて「何の添加物だ?」という感じですが、これは安全な食品添加物です。
フードに添加されている目的は歯石の予防です。STPPが唾液中のカルシウムと結びついて歯垢の石灰化を防ぎ歯石になるのを予防します。
タンパク源であるミールは高温処理によってアミノ酸が吸収されにくくなっていることを考慮して、必須アミノ酸のメチオニンが添加されているのは良い点です。
最後の最後に赤字で示した添加物が出てきてしまっていますね。
BHAとBHTはどちらも合成酸化防止剤です。動物実験では肝臓組織の変異などが確認されているため使用量上限が決められています。
ペットフードに用いられるのはもちろん安全であると認められた基準値の範囲内なのでこのフードを食べると健康に悪いというわけではありません(そんなものは売れませんからね)
ただ、こういう使用上限のある食品添加物は、意識していないとトリーツなど他のものからも摂取して、知らず知らずに結構な量を摂ってしまう恐れがあります。
だから私はBHAやBHTが使われている製品は避けるようにしていました。
実はアイムスのフードはアメリカで売っているものとレシピが微妙に違います。
その一例はアメリカのアイムス製品にはBHAやBHTは使われておらず、ミックストコフェロールやローズマリーエキスなど天然由来の酸化防止剤が使われています。
マース社は以前はロイヤルカナンの療法食などにBHAやBHTを使用していたのですが、ロイカナが天然由来の酸化防止剤に変更した後、それまでBHAやBHTが使われていなかったアイムスでこれらの合成酸化防止剤が使われるようになりました。
なんだか引っかかる部分ですよね。
主となる原材料の内容自体はそれほど悪くはないのですが、合成酸化防止剤を使用しているという点で、「私だったら」と考えると選択肢から外します。
ちなみに、ここでは取り上げませんでしたがアイムスよりもさらに低価格帯のペディグリーは、使用原材料の表記の曖昧さ、合成酸化防止剤と合成着色料使用などもありお勧めしません。
(でもペディグリーって世界で一番売れてるドッグフードなんですってよ。なんか色々悲しいわ。)
次もマースペットケアの製品でニュートロ・シュプレモです。
同じニュートロでナチュラルチョイスは以前に記事にしているのでご参照ください。
2019年の記事ですが、その後原材料が変更になった部分は加筆訂正しています。
チキン(肉)、チキンミール、モロコシ、大麦、オーツ麦、玄米、鶏脂、
タンパク加水分解物、ラムミール、サーモンミール、ビートパルプ、
粗挽き米、亜麻仁、チアシード、ココナッツ、乾燥卵、
トマト、ケール、パンプキン、ホウレン草、ブルーベリー、リンゴ、ニンジン、
ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、コリン、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸)
ミネラル類(カリウム、クロライド、セレン、ナトリウム、マンガン、ヨウ素、亜鉛、鉄、銅)
アミノ酸類(メチオニン)
酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、クエン酸)
タンパク質26.0%以上、 脂質17.0%以上
ニュートロはナチュラルチョイスもシュプレモも1kgで2,000〜2,500円くらいの価格帯で、ピュリナワンやアイムスの約2倍くらいです。
原材料の最初に挙げられているのが、チキンミールではなくチキンなのは良い点です。
ただし実質的には水分の多い生のチキンよりも乾燥したチキンミールの方がタンパク源のメインです。
トウモロコシなど穀類も使用されていますが、小麦ではなく大麦やオーツ麦が使われているのは栄養上うれしいですね。
プレミアムフードなどで見かける緑黄色野菜などが使われているのも良い点です。
(ただしトマトと書かれているのは、トマトジュースなどを搾った後の副産物です)
動物性タンパク質がチキンの他にラムミール、サーモンミールと複数の種類が使われているのはお腹の弱い犬には負担になる場合もあるかもしれません。
(元気な場合には何の問題もありません)
ニュートロはオメガ3脂肪酸の摂取源となるものが弱いです(犬は亜麻仁のオメガ3脂肪酸をうまく活用できない)
このフードを与える場合はフィッシュオイルなどのサプリメントか、週に1〜2回無塩サバ缶を汁ごと少量トッピングするなどをお勧めします。
最後はペットフード大手No.3のヒルズの製品です。
ヒルズ サイエンスダイエット 小型成犬用チキン
トリ肉(チキン、ターキー)、トウモロコシ、小麦、米、
動物性油脂、トリ肉エキス、植物性油脂、亜麻仁、ポークエキス、
トマト、柑橘類、ホウレンソウ、
ミネラル類(ナトリウム、カリウム、クロライド、銅、鉄、マンガン、セレン、亜鉛、ヨウ素)、
乳酸、
ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、ベータカロテン、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、コリン)、
アミノ酸類(タウリン)、
酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物)
タンパク質21.0%以上、脂質13.0%以上
3kgで約2,500円、ピュリナワンやアイムスとほぼ同じ価格帯です。
原材料の一番最初がトリ肉とターキーと表記されていますが、これは多分チキンとターキーのミールです。
全部がミールではないにしてもミールが含まれているはず。(でも多分全部ミール)
コーングルテンなどを使わずに生の肉だけを使ってタンパク質21%にするには、この価格では難しいでしょうから。
その後にトウモロコシ、小麦、米と穀類が続くので穀類の割合はやはり高めです。
この米というのは輸送や保存の際に割れたり欠けたりしたクズ米です。
(他社で粗挽き米と書かれている場合も同様のクズ米です。)
紫字で示した動物性脂肪と植物性脂肪、どちらも具体的に何の油なのかがわかりません。複数の種類の油脂を混合して使用している場合、こういう表記になります。
トマト、柑橘類と表記されているのはどちらもジュースなどを搾った後の繊維です。
トマトジュースやオレンジジュースの副産物ですね。
この価格帯としてはそれほど悪い内容ではないですが、わざと誤解させるような表記の仕方が多い印象です。
この製品もニュートロ同様にオメガ3脂肪酸の摂取源になるものが亜麻仁だけなので、フィッシュオイルや無塩サバ缶などのトッピングをお勧めします。
アミノ酸としてタウリンが添加されているのは良い点ですが、ゆで卵や茹でた鶏肉、ヨーグルトなどを少量トッピングすると良い形で必須アミノ酸が摂れます。
「あのね、おかーさんネスレピュリナが好きになれないって言ってるけど、マースもヒルズもアレなんだよ」
うん、ピュリナもマースもヒルズもアレだよね。
ピュリナもヒルズも過去に大規模な健康被害を伴うリコール騒動を複数回起こしていて、その時の対応が非常に悪印象だった。
マースは大規模な健康被害が出たリコールは記憶にないけれど、動物病院向けに療法食の無料サンプルを大量配布している。その分はもちろん製品価格に反映される。
療法食なんて気軽にサンプル配るものじゃないことはメーカー自身がわかっているはずなのにね。
療法食と言えば3社すべてが販売しているけれど、日本では療法食が通販などで普通のフードと同じように買える仕組みをメーカーが許しているのもおかしい。
(アメリカでは通販で療法食を買うにも獣医師の処方箋が必要)
他にも山のように言いたいことがあるのですが、要するに海外超大手メーカーの企業としての姿勢が好きじゃないんですよ。
そういう点で言えば、ホームセンターなどで手軽に買える大手メーカーのフードなら国内メーカーの方が良いかもしれません。