ドッグフード原材料シリーズ、今回はフィールドゲインズ。
久しぶりの国産フードです。
過去の原材料シリーズはこちらから。

「コクサンフード?」
アメリカやヨーロッパから日本に輸入したのではなくて日本の会社が作ってるフードだよ。
アマゾンでの取り扱いはないので、公式サイトのリンクを貼っておきます。
いくつか種類があるのですが、公式サイトで一番上に書かれていたウルトラプレムアム全犬種用を取り上げます。
生肉(牛、鶏、馬、豚、魚肉)、大麦全粒粉、魚粉、サツマイモ
玄米粉、ココナッツパウダー、植物油(菜種油、ひまわり油)
醗酵大豆、コーン蛋白、ビール酵母、ホエイ蛋白、海藻粉末
脱脂粉乳、米ぬかエキス、オリゴ糖、カルシウム粉末
L-リジン、DL‐メチオニン、ローズマリー抽出物、ユッカ
乳酸菌群、酵母菌醗酵抽出物、麹菌醗酵抽出物、枯草菌
一番最初に生の獣肉が3種類と鶏肉と魚肉が記載されています。
生肉50%使用と公式サイトに書かれていますので、重量ベースで全体の50%使われているようですね。
ただし毎度書いているように、生の肉は水分が多く含まれるので加工後に水分が飛ぶと実質の割合はもっと少なくなります。
原材料一覧では魚粉、発酵大豆、コーン蛋白と別のタンパク源が続いて登場しています。
成分分析では粗タンパク28%と記載されていますが、そのうちの少なくない割合がこれらのタンパク質である可能性はあります。
この製品に限らず、国産のプレミアムと呼ばれるフードでは複数種の肉類が使われていることが多い印象があります。
若くて元気でお腹も丈夫なら問題ないのですが、お腹が弱かったりシニア以降には負担になる場合もあるのでご注意ください。
大麦全粒粉
大麦は水溶性と不溶性両方の食物繊維が豊富な炭水化物源です。
食物繊維のおかげで急激な血糖値の上昇が抑えられる低GI食品でもあります。
全粒粉(ふすまや胚芽も含まれる)なのでビタミンやミネラルも豊富に含みます。
大麦に含まれるタンパク質は小麦のタンパク質であるグルテンとは違うものなのですが
分子構造がよく似ているため大麦でもアレルギーが出る場合があります。
重度の小麦アレルギーがある場合は避けた方が無難です。
魚粉
アメリカやヨーロッパ産のフードではフィッシュミールかドライフィッシュかは定義が違うのですが
日本のペットフード公正取引協議会では魚粉の定義が厳密ではありません。
そのため魚粉が「魚を加熱して油を搾り乾燥粉砕したもの」なのか「乾燥させた魚を粉砕したもの」なのかが分かりません。
これは国産のフードでいつも悩ましく感じる点のひとつです。
どちらであっても水分を含まないため、同じ重量であれば生の魚肉よりもタンパク質含有量は多くなります。
サツマイモ
お馴染みのお芋ですね。食物繊維を多く含むため低GIの炭水化物源です。
ビタミンB、C、Eも含まれます。
玄米粉
その名の通り玄米を粉に挽いたものです。
米の全粒粉ですから、白米よりもビタミン、ミネラル、食物繊維を多く含みます。
炭水化物源ですが、食物繊維が豊富なため低GIです。
ココナッツパウダー
ココナッツの実の内側の白い部分(胚乳)を搾ってココナッツオイルやココナッツミルクを取った残りの部分を粉に挽いたものです。
低カロリーで食物繊維を豊富に含みます。
植物油(菜種油、ひまわり油)
菜種油はアブラナの種子のオイルです。
必須脂肪酸であるオメガ6脂肪酸の一種リノール酸も含みますが、最も多いのはオメガ9脂肪酸のオレイン酸です。
オレイン酸はオリーブオイルや鶏肉に多く含まれる脂肪酸で血中コレステロールを正常に保つ働きをします。
オメガ3脂肪酸の一種アルファリノレン酸も含みますが、犬はこの脂肪酸を体内でほとんど活用できません。
ひまわり油はひまわりの種子のオイルです。
必須脂肪酸であるオメガ6脂肪酸の一種リノール酸を多く含みます。
リノール酸は体の免疫機構を正常に保つために必要です。
菜種油もひまわり油もビタミンEを多く含むため酸化しにくいオイルです。
醗酵大豆
醗酵大豆は近年、魚粉の代替として動物用飼料に多く使われるようになっています。
従来は飼料やペットフードの大豆は大豆油を搾った後の脱脂大豆が多かったのですが
この脱脂大豆を乳酸菌や納豆菌を使って醗酵させることで、風味と消化が良くなります。
この製品は納豆菌を使って醗酵させた大豆を使っているようです。
コーン蛋白
他のペットフードではコーングルテンという名で表記されていることが多いものです。
とうもろこしからコーンスターチ(でんぷん)を精製する際に、粉砕したコーン粒を水分に浸し沈澱した部分がでんぷん。
上澄み部分にはタンパク質が多く含まれ、この上澄み液を脱水乾燥させたのがコーン蛋白です。
このような製法ですから、非常に消化しやすいタンパク質です。
ただしコーンのタンパク質は犬が食事から必ず摂取しなくてはならない必須アミノ酸のうちトリプトファンが不足しています。
犬にとってとうもろこしのタンパク質が良くないと言われるのはこれが主な理由です。
この製品では5種類もの動物性タンパク質を使用しているのに、なぜコーン蛋白を使うのか?はちょっと謎です。
ビール酵母
ビールを醸造する時に加えられる酵母なのでビール酵母と呼ばれます。
ビタミンB群、必須アミノ酸を豊富に含むため栄養補給になり、さらに腸内環境を整えるプロバイオティクスの働きもします。
ホエイ蛋白
これは牛乳由来のタンパク質です。ヨーグルトの上澄み液の乳清、あれに含まれるタンパク質です。
牛乳由来ですから必須アミノ酸のバランスは良いのですが乳糖を多く含むためお腹が緩くなる可能性はあります。
乳糖を含む乳類は、動物では幼齢の時だけの食べ物なので成体になると乳糖の消化酵素が分泌されなくなるからです。
海藻粉末
ドッグフードに加えられる海藻は昆布が多いですが、海藻としか書かれていないので数種の混合なのかもしれません。
海藻の種類にもよりますが、水溶性と不溶性の食物繊維、ヨードなどミネラル類の摂取源となります。
脱脂粉乳
ホエイ蛋白に続いてまた乳製品ですね。
乳製品が使われているペットフードが少ないのは上に書いたように成体と乳糖の関係が理由のひとつです。
食べた上で支障がなければ良いのですが、お腹の弱い子はこれが引き金になる可能性はあります。
米ぬかエキス
これはちょっとわからない原材料です。
一般的に米ぬかエキスと言えば米ぬかをアルコールなどで有効成分を抽出した化粧品に原料ですが、それじゃないだろうし(笑
米ぬかはビタミンB群や食物繊維を豊富に含みますが、この製品は玄米を使っているので重複しますね。
ビタミン類のサプリメントを極力使わない方針とのことなので、ビタミン補給だろうか?
でも該当するビタミンはビール酵母などと重複するし。曖昧ですみません。
オリゴ糖
オリゴ糖は砂糖やブドウ糖などの単糖類(糖の分子が独立している)と違って糖の分子が複数連なった多糖類です。
オリゴ糖にもいくつか種類があるのですが、ここで使用されているのは消化酵素で消化できないタイプのものでしょう。
消化できないオリゴ糖は大腸で腸内細菌によって発酵し、その時に出す物質が腸内細菌のエサとなって腸内環境を整えます。
つまり頼もしいプレバイオティクスとして働くというわけです。
カルシウム粉末
この製品に唯一サプリメントとして添加されているミネラルですね。
カルシウムは何の原料由来なのか(卵殻とか乳酸とか)を知りたいところですね。
他の種類のフードではカルシウム粉末は牛骨と卵殻と書かれていましたが。
L-リジン DL-メチオニン
リジンとメチオニンは犬にとっての必須アミノ酸10種類の中の2つです。
頭に付いているLとかDLというのはアミノ酸の構造を示すものです。
詳しく知りたい方は味の素さんの説明のリンクを貼っておいたのでそちらへ。
必須アミノ酸とは、体内で合成できないので食事から摂取することが必須のアミノ酸のことです。
肉類や魚のタンパク質には犬の必須アミノ酸は全て含まれています。
この製品はアミノ酸を変質させる高温調理もしていないのでわざわざアミノ酸を添加する必要がわかりません。
ローズマリー抽出物
公式サイトでは何度も保存料や酸化防止剤を使っていないと表記されていますがローズマリー抽出物は酸化防止剤です。
もちろんメーカーの意図するところは合成保存料や合成酸化防止剤を使っていないというのはわかるのですが。
保存料はともかく、酸化防止剤を使っていないフードというのはかえって不安です。
たとえ合成酸化防止剤使用でも酸化した製品の危険性の方がずっと悪いですから。
そういうわけで、天然由来の酸化防止剤ローズマリー抽出物を使っている点は安心しました。
ユッカ
ユッカはリュウゼツラン科の植物で、海老芋によく似た地下茎を食用や薬用に用います。
免疫強化作用のあるサポニンを多く含むこと、強い抗炎症作用があることから関節炎に処方されたりもします。
ユッカの成分には便のニオイを抑える働きもあります。
乳酸菌群、枯草菌(こそうきん)
乳酸菌はお馴染みの名前ですね。枯草菌は納豆菌に近い菌種の微生物です。
どちらも腸内環境を改善するプロバイオティクスとして働きます。
酵母菌醗酵抽出物、麹菌醗酵抽出物
前者は一般的に酵母エキスと言われるもの、後者は麹エキスとは呼ばれないけれど
どちらも酵母菌や麹菌を酵素を使って醗酵させて作った食品です。
製品に旨味を加える他、腸内環境を良好に保つプロバイオティクスとプレバイオティクス両方の働きを持ちます。

「あいかわらず話が長いけど、全体にどうなの?」
全体に......悪くはないが、ところどころ「?」となるね。
公式サイトの作りは非常にしっかりしているのですが、説明にところどころ間違いがあります。
例えば「新鮮な肉や魚の腐敗を防ぎタンパク質を変性させないまま抗菌剤無添加のもと製造する技術開発」という記載があります。
抗菌剤というのは抗生物質のことを指します。防腐剤のことは差しません。
抗菌剤は家畜や家禽に与えることは認められていますが、食品や飼料に加えることは法律で認められていません。
つまり日本のどこを探しても抗菌剤を添加したペットフードはないということ。
細かいことのようですが、こういう言葉の定義や表記はとても重要です。
またこの製品は生の肉や魚を一度も加熱せずに乾燥させていると書かれています。
「長年の研究で開発した独自製法」と書かれていますが、説明はこの抽象的な言葉だけです。
トライバルのようなコールドプレス製法なのか?フリーズドライなのか?
せっかくの公式サイトなのですから、もう少し消費者への説明が欲しいところです。
またAAFCOの栄養基準はクリアしていると書かれているので、大きく不足している栄養素はないはずですが
内臓肉が使われているという記載はないし、ビタミンやミネラル類も極力添加しないと書かれています。
その点でちょっと不安は残ります。
リジンやメチオニンなど肉や魚から摂れる必須アミノ酸が添加されているけれど亜鉛や銅などは大丈夫なんだろうか?
製品中のミネラルは成分分析の「粗灰分」が目安になりますが、この製品では5%以下と書かれています。
一般的には粗灰分は7〜8%の製品が多いです。
栄養成分では粗脂肪も10%以上と記載されていますが、これもやや低めです。
アニモンダやフォルツァディエチの消化器ケアフードでも12%程度、一般的には15%前後です。
他の種類のウルトラプレミアムライトでは粗脂肪5%以上と、ロイヤルカナンの消化器用療法食並みの低脂肪です。
日常的に脂肪が不足すると免疫力の低下、皮膚や被毛の健康に関わります。
原材料の質にこだわっている点は評価できますので、もし私がこのフードを利用するとしたらトッピングを必須にします。
それからこのメーカーは他社にOEMを提供しています。
自社で他社ブランドの製品を製造しているということですね。
それは悪いことでもなんでもありません。公式サイトにも書かれていることです。
ただ国産のプレミアムフードという数少ないコマの中で「違うブランドも試してみよう」と買ってみたら
パッケージが違うだけで中身は全く同じということが起こり得ますので、その点はご注意ください。
このメーカーの良いところは、他の国産”プレミアムフード”の多くと違って公式サイトで製品や原材料の説明がしっかりされているところです。
他の国産フードのサイトは定期購入の方法の説明ばっかりで肝心の製品の説明がちっとも出てこないものがたくさんあります。
サクラ感満載の「利用者の声」と「涙やけが気になる方に!」ばかり並んでいたりね。
フィールドゲインズのサイトはそういう怪しさはいっさい無い真摯な姿勢が素晴らしいと思います。