今回取り上げるフードはどちらも日本未発売です。
でも原材料がなかなかユニークで面白く勉強になることが多いと感じました。
(テラ・カニスは日本ではウェットフードだけが発売されています。)
まずはワンダー・ブー、スウェーデンのフードです。
リクエストをいただいたノルディック・ビーフを取り上げます。
......が、リクエストをいただいてからかなり時間が経ってしまって
このレシピは近々変更されるそうです。すみません!
レシピが変更されたらこの記事に追記します。
「おかーさん仕事が遅いから」
そうね、そうね😓
では原材料
牛肉40%、ルーメン40%、ポテトファイバー、ニンジン、
オックスブラッド、ブルーベリー、ブロッコリー
分析成分 5330kCal/1000g、粗タンパク質36%、粗脂肪37%、粗繊維6.8%、
粗灰分2.2%、カルシウム1.2%、リン1.1%、水分3%、炭水化物14%。
栄養添加物/kg
ビタミン類、A 2400IE、D520IE、E 12.7IE、B1 0.5mg、B2 0.2mg、
B3 2.3mg、B6 0.8mg、B12 0,6mg、C 8mg、K3 0.8mg、
ナイアシン 6mg、B3 6.0mg. コリン32mg、葉酸0.16mg、ビオチン0.06mg
微量元素:0.4mg, Mg 0.14mg, Cu 1.4mg, Co 0.08mg, Zn 10mg,
Se 0.06mg, IO 3mg
牛肉
原材料の時点で生の牛肉が、重量ベースで原材料全体の40%使われています。
言うまでもなく良質のタンパク源で、鉄分も豊富です。
製品の粗脂肪の多さから見て、脂肪の多い部分を使っているのかなと思います。
ルーメン
耳慣れない名前ですよね。これは牛の胃です。
サイトの画像を見るとグリーントライプのようなものではなく洗浄された胃が使われているようです。
焼肉のミノ、ハチノス、センマイ、ギアラを思い浮かべてもらうとイメージが掴めるかと思います。
これも良質のタンパク質で、牛肉同様全体の40%使用されています。
牛肉とルーメンで全体の80%を占めるわけですが、このフードの粗タンパク質は36%です。
これは牛肉もルーメンも調理によって水分が飛ぶと原材料全体に対する割合が80%よりもずっと少なくなるからです。
しかしドライフードの中ではタンパク質36%は高い部類ですし、
このフードは高温調理ではなく低温エアドライ製法なのでアミノ酸の損失も少ないと考えられます。
粗脂肪36%というのはかなり高い数字でちょっと驚いています。
低温エアドライ製法もジウィと共通するので、ジウィに近い感じなのかもしれないですね。
ポテトファイバー
これはポテトスターチ(馬鈴薯デンプン)を製造する時の副産物です。
ポテトスターチを摂る際、ジャガイモを粉砕して水に浸し沈殿したデンプンを精製します。
この時に残った部分がポテトファイバーです。
食物繊維は55%ほどでデンプンが約3割、タンパク質もわずかに含みます。
他の食物繊維同様に糖質の吸収スピードを遅くして、血糖値が急激に上がるのを緩和します。
また腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整えるプレバイオティクスでもあります。
ニンジン
おなじみの根菜で、βカロチン、カリウムが豊富です。
糖質はやや高めですが食物繊維が豊富なので急激な血糖値の上昇を緩和します。
オックスブラッド
牛の血です。推測ですが、乾燥して粉末状になったものではないかと思います。
家畜の血は乾燥させて農作物の肥料などに使用されることが多いです。
血液ですから鉄分とタンパク質を豊富に含みます。
ペットフードの原材料として書かれているのは初めて見ました。
ブルーベリー
抗酸化物質であるアントシアニンを豊富に含みます。
ブロッコリー
食物繊維やβカロチン、ビタミンB群、ビタミンCを豊富に含むスーパー野菜です。
この製品は穀類の代わりにこれら野菜や果物を使っていると書いています。
原材料はこれだけですので、かなりシンプルです。
その他にビタミンやミネラル類が添加されています。
しかし原材料に骨が含まれるものは何もなさそうなのにカルシウムの添加がない。
粗灰分が2.2%とかなり低いのも原材料に骨が含まれないからだと思われます。
(粗灰分とは製品に含まれるミネラル類全般の大体の量のことです。
製品を灰になるまで燃やすと、その灰はミネラル類のみであるためこのように表記されます。)
灰分は通常4〜10%が理想とされているので、この低さは気になります。
しかしカルシウム1.2%というのは基準値をクリアしており、リン1.1%もカルシウムとのバランスは良い。
色々謎の多い製品とレシピだなあという感想を持ちました。
次はドイツのフード、テラ・カニス
「仕事が遅いから、今日は2つ行くのね」
テラ・カニスもビーフを取り上げます。
Terra Canis: Dog food in 100% human-grade quality of all ingredients
Das beste Hundefutter enthält alles, was Ihr Tier braucht: Hochwertiges Fleisch, aber keine unnötigen Zusatzstoffe – darauf setzt Terra Canis!
Terra Canis
新鮮な牛の肉(筋肉)(64 %)、ポテトフレーク(15 %)、スイートルーピン豆、
りんご*(1.6 %)、ココナッツ粉(1.5 %)、にんじん*(1.4 %)、
ズッキーニ(1.4 %)、セロリ *(1.1 %)、牛新鮮レバー(1 %)、
亜麻仁(1 %)、カボチャ種子粉(1 %)、カボチャ* (0.8%) 、
パースニップ*(0.8%)、卵殻粉末(0 . 6 %)、ビール酵母* (0.5 %)、
桃* (0.5 %)、ルートパセリ* (0.4 %)、菜種粉 (0.4 %)、
フェヌグリーク (0.4 %)、セージ (0.4 %)、ミネラル粘土 (0. 3 %)、
ほうれん草* (0.2 %)、海藻 (0.1 %)、ローズヒップ* (0.1 %)、
ローズマリー (0.1 %)、タイム (0.1 %)、エルダーフラワー* (0.1 %)、
ダンデリオン*、アロエベラ (0.1 %)、ミネラル *乾燥品
栄養添加物/kg:
ビタミンA:8000 IE、ビタミンD3: 1000 IE、
ビタミンE :150 IE、銅: 4mg、ヨウ素: 1.6mg、亜鉛: 40 mg
新鮮な牛肉
新鮮なというのは元々は「フレッシュ」と書かれています。
つまり冷凍や乾燥ではない生の肉という意味です。
筋肉とわざわざ書かれているのも、骨を含まないという意味です。
このメーカーの原材料はヒューマングレードだと書かれているので、肉も高品質だと思われます。
ポテトフレーク
ジャガイモを薄くスライスしてフレーク状にしたものです。
炭水化物源ですが、食物繊維を含み、デンプンの一部は難消化性で食物繊維のように働くので血糖値が急上昇しにくい低GIです。
スイートルピナス豆
ルーピン豆とかルパン豆と呼ばれることもあります。
日本ではあまり馴染みがない豆ですがヨーロッパでは広く使われているようです。
大豆のようにタンパク質が豊富で、他の豆類同様に食物繊維も豊富です。
りんご
これは乾燥品だと書かれています。
原材料のうち、生のものと乾燥品を明記してくれているのはありがたいですね。
表記のパーセンテージは重量ベースでの数字なので乾燥品ということは生よりも実質量が多いということです。
りんごはビタミンや食物繊維、カリウムなどを多く含みます。
ココナッツ粉
ココナッツを乾燥させて粉に挽いたものです。
食物繊維を豊富に含み、脂質も多く含みます。
ミネラル類も豊富で中でも銅やマンガンを多く含みます。
にんじん
これも乾燥品です。抗酸化物質であるβカロチンと食物繊維が豊富です。
ズッキーニ
こちらはニンジンと違って生で使われています。
にんじんもズッキーニも1.4%と書かれていますが、乾燥のにんじんの実質量は生のズッキーニよりもずっと多いというわけです。
ビタミンB群やβカロチンを多く含む野菜です。ドッグフードの原材料でズッキーニを見るのは初めてです。
セロリ
これも乾燥品です。ビタミンB群、βカロチン、食物繊維が豊富な野菜です。
牛新鮮レバー
この「新鮮」というのも元は「フレッシュ」つまり乾燥ではない生という意味です。
犬にとって必要なビタミン類やミネラル類をバランスよく含みます。
亜麻仁
亜麻の種子です。大型のゴマのような見た目ですがゴマとは違う種類です。
抗酸化物質のリグナンや食物繊維、ミネラル類、ビタミンEを豊富に含みます。
植物性のオメガ3脂肪酸であるアルファリノレン酸を多く含むのでオメガ3の摂取源として知られていますが
犬はアルファリノレン酸を体内で変換して活用する能力が低いため、オメガ3摂取源としては心許ないです。
カボチャ種子粉
カボチャの種を粉に挽いたものです。
多分、このカボチャというのは日本のグリーンのカボチャではなくオレンジ色のペポカボチャだと思います。
カボチャの種にはアミノ酸、アルファリノレン酸が含まれ、各種抗酸化物質も豊富です。
(ただし亜麻仁同様にアルファリノレン酸は犬には活用できません。)
カボチャ
これも種子と同じく、多分オレンジ色のペポカボチャです。
βカロチンと食物繊維が豊富です。日本の緑色のカボチャよりも糖質は少なめです。
パースニップ
白いニンジンという感じの見た目の根菜ですが、セロリやパセリの仲間です。
ビタミンE、ビタミンB類を含みます。
卵殻粉末
カルシウムの摂取源として使用されています。
ビール酵母
ビールを発酵させる際に使われる酵母です。
各種アミノ酸、ビタミンB群、食物繊維を豊富に含みます。
桃
桃もドッグフードの原材料としては初めて見ました。
でも多分日本人がイメージする桃とはだいぶ違うカリッとしたタイプだと思う。
食物繊維とカリウムが豊富です。
ルートパセリ
パセリの根です。根と言っても、見た目は白いニンジンみたい。
パースニップはパセリの仲間と書きましたが、見た目もパースニップに似ています。
ビタミンK、ミネラル類を多く含みます。
菜種粉
菜種を粉に挽いたものだと思うのですが、キャノーラオイル用に品種改良された菜種だと思います。
菜種はオメガ3、6、9の3種の脂肪酸をバランスよく含みますが、亜麻仁同様にこのオメガ3脂肪酸は犬には活用できません。
ビタミンEも豊富に含みますが、亜麻仁だけで十分じゃないかなあという気がします。
フェヌグリーク
マメ科植物でスパイスやハーブとして使われます。
種子と葉、両方が食用とされますが、このフードに入っているのは多分種子だと思います。(多分ですみません)
消化促進、抗炎症作用などの働きがあります。
セージ
強力な抗菌作用のあるハーブですが、長期使用は控えた方が良いものです。
副作用のない範囲で使用されているとは思うのですが、個人的にはフードに入っていて欲しくないハーブです。
ミネラル粘土
ベントナイトなどの非常に細かい粒子の天然粘土です。(具体的な種類は分かりません)
消化管内で水分を吸収したり、化学物質を吸着したりするので、下痢の時に使用されたりデトックス効果が謳われたりします。
化学物質を吸着するということは処方薬などを飲んでいる場合には薬の効果を低下させる可能性もあります。
フードに使われている量は微量なので影響はないかもしれませんが、考えたり心配したりすることを思うと入っていて欲しくないなあと思います。
ほうれん草
緑黄色野菜の代表ですね。βカロチンや鉄分が豊富です。
海藻
海藻に豊富なヨウ素は栄養添加物として別に表記されているので、他の目的ですね。
この製品に使われている海藻の種類はわからないのですが、ある海藻は歯垢を軽減するとも言われています。
そのためかなあと思うのですが、はっきりとわからなくてすみません。
ローズヒップ
バラの実です。ビタミンCを非常に多く含みます。
この製品は栄養添加物にビタミンCの表記がないので、ローズヒップはビタミンC源として使用されています。
ローズマリー
抗酸化作用の強いハーブです。
この製品は酸化防止剤の表記が見当たらないので上記のセージもローズマリーも天然の防腐剤や酸化防止剤として配合しているのかもしれません。
タイム
これも抗菌作用の強いハーブです。長期使用は避けた方がよいものです。
セージやローズマリー同様に、天然の防腐剤として使用されているのかもしれません。
エルダーフラワー
発汗作用(犬には関係ないですが)や利尿作用があるので、風邪やインフルエンザの際に使われるハーブです。
抗炎症作用や体の熱を取る作用もあります。でもドッグフードに配合する理由はわかりません。
ダンデリオン
タンポポの葉です。利尿作用、消化促進作用のあるハーブです。
アロエベラ
人間には健康食品としてお馴染みのアロエベラですが、犬にはNGとされています。
害のないように調整されているのだろうとは思いますが、わざわざドッグフードにいれる意味はわかりません。
犬にアロエベラを与えても大丈夫という間違ったメッセージにもなるし、止めて欲しいなあと感じます。
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シンプルレシピのワンダー・ブーと、色々と目新しい原材料がたくさんのテラ・カニス、対照的ですね。
日本では発売されていませんが、国が変わるとフードの内容も様変わりするなあとしみじみ感じさせられました。