ドッグフード原材料シリーズ、今回は国産フードのランフリーです。
Run Free のニコ、ドッグパークにて爆走の直前
この会社はオーダーメイドのフードがセールスポイントですが
一般向けのフードもいろいろな種類を販売しています。
人間が食べられる食材だけを使っているのがこだわりポイント。
Amazonで取り扱いがないため使える画像がなかったので
Amazonで取り扱いがないため使える画像がなかったので
公式サイトのリンクを貼りました。
いろいろな種類がありますが、No.1と書かれていた(多分売上が)
アンデスポークを取り上げます。
アンデスポークを取り上げます。
アンデスポークヒレ肉・じゃがいも粉.・香麦・小麦粉
コーンフラワー・マダラフィレ
さつまいも粉・ポークレバー・にんじん・栗かぼちゃ
ブルーベリー・バナナ・ひまわり油・ナガイモ
キャノーラオイル・ホタテカルシウム・大麦若葉
利尻昆布・干ししいたけ・オリゴ糖・魚油・しその葉
亜麻仁油・キャッツクロー
アンデスポークヒレ肉、いかにも高級そうな豚肉です。
原材料の時点では生なので水分量が多く調理後のカサは減ります。
ですからこのフードのメイン原料は後に続く穀類になります。
ヒレ肉は脂肪の少ない部分ですが、なぜこのような加工品に
ヒレ肉を使う必要があるのか?というのは疑問を感じます。
じゃがいも粉、じゃがいもを乾燥させて粉に挽いたものですね。
炭水化物源となりますが、じゃがいもとこの後に続く小麦には
難消化性デンプンが含まれ、その分は消化吸収されずに
食物繊維のような働きをします。
香麦は小麦の品種の名前です。
通常の小麦よりもグルテンを多く含み
パンやうどんを作るにはもっちり感が強く出ます。
犬には小麦グルテンは消化しづらいものですから
ドッグフード向けの素材とは言い難いです。
小麦粉 通常の小麦粉も使われています。
炭水化物とグルテン(タンパク質)を含みます。
コーンフラワー 乾燥コーンを粉に挽いたものです。
炭水化物とタンパク質の他に食物繊維も多く含みます。
小麦やコーンのタンパク質は犬に必要なアミノ酸のうち
いくつかが大きく足りません。
これらがタンパク源として理想的ではない理由です。
マダラフィレ マダラと言えば鍋物が定番ですね。
白身でクセのない味なので、いろいろな料理によく合います。
フィレというのは3枚におろした身部分のこと。
タンパク源として良質ですが量が少ない!
フィレではなくアラ部分も使っていればミネラルも摂れるのに勿体無い。
さつまいも粉 さつまいもを乾燥して粉に挽いたもの。
炭水化物源ですが食物繊維も含みます。
ここまでで5種類の炭水化物が出てきました。
ポークレバー レバーはビタミンやミネラルの宝庫。
タンパク質はもちろん、ビタミンA、B群、D、
鉄や亜鉛も自然な形で摂取できます。
にんじん、栗かぼちゃ、ブルーベリーはβカロチンや
アントシアニンなどの抗酸化物質が豊富な食材です。
老化を抑え細胞を健康に保つのに重要です。
バナナも糖質の外にビタミンやミネラルを多く含みます。
ただ、この4つの食材全て糖質を多く含みます。
先に挙げたように5種類の炭水化物源に加えて
さらに糖質をプラスするのはあまり感心しません。
ひまわり油はビタミンEを多く含みます。
必須脂肪酸であるオメガ6脂肪酸のリノール酸が豊富なので
オメガ6の摂取源としても重要です。
ナガイモは食物繊維、ミネラルが豊富な野菜です。
この製品ではツナギとしての役目を果たしていると推測します。
キャノーラオイルは品種改良した菜種のオイルで
オメガ6とオメガ3脂肪酸を含みます。
ただし犬は植物性のオメガ3脂肪酸をほとんど活用できないので
ここでの役割はオメガ6摂取源ということになります。
ホタテカルシウムは高温処理したホタテガイの貝殻を粉にしたものです。
カルシウム源としての他に抗菌の役割でも使用されていると思います。
大麦若葉は青汁の原料としてよく使われるものですね。
ビタミンやミネラルを多く含みます。
原材料一覧の最後の方に書かれているので乾燥粉末だと思います。
利尻昆布 ミネラルのヨードとナトリウム源として使われます。
干ししいたけ ビタミンD源として使われていると思います。
オリゴ糖は多糖類の一種です。
プレバイオティクス として腸内細菌のエサとなりますが
オリゴ糖の種類によって働きが違うのでそこが明記されていると良いですね。
魚油 必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸の摂取源です。
魚のオメガ3は犬が体内で有効に活用できるDHAとEPAという種類です。
シソの葉、これも大麦若葉同様に乾燥だと思います。
シソはビタミンやミネラルが豊富な和ハーブなので
ペットフード にネトルなどが配合されるのと同じ目的だと思います。
亜麻仁油 フラックスシードオイルとも呼ばれるものです。
植物性オメガ3脂肪酸の代表的なものですが、
残念ながら犬の体内ではほとんど活用できません。
キャッツクローは強い抗炎症作用と抗菌作用のあるハーブです。
免疫活性作用があるのでアトピーを含む自己免疫疾患には禁忌です。
アルカロイドとタンニンを多く含むため胃に影響が出る恐れがあります。
長期使用は避けるべきなので、フードへの配合は疑問です。
この製品は他の一般的なフードのように原材料一覧の最後の方に
ビタミンやミネラル類がズラッと並んでいません。
大麦若葉やシソなどはその代替として使われているのだと思います。
でも、率直に言って全然代替になっていないし、補えていない......。
「なんか、すでに怒ってる気配がするわ😨 」
上にも書いたように動物性タンパク質が少なく穀類が多いですね。
動物性脂肪も極端に少ないです。
原材料一覧の他に栄養成分値を見てみましょう。
カロリーは100gあたりの数値です。
代謝エネルギー:327kcal
たんぱく質:15%以上
脂質:3%以上
炭水化物:70%以下
食物繊維:4%以下
灰分:2.4%以下
ナトリウム:0.05%以下
水分:9%以下
たんぱく質:15%以上
脂質:3%以上
炭水化物:70%以下
食物繊維:4%以下
灰分:2.4%以下
ナトリウム:0.05%以下
水分:9%以下
エネルギーについては、他社のフードとほぼ同じです。
たんぱく質が15%というのは腎臓療法食並みの低さです。
一般的には25%前後、プレミアムと呼ばれるものでは30%前後の製品が多いです。
脂質3%というのも消化器サポートの療法食より低いです。
たんぱく質と脂質は三大栄養素のうちの2つです。
それがどちらも極端に低いというのは大きな問題です。
そして炭水化物70%、これは極端に多いです。
一般的に「炭水化物多めだな」というフードでも50%前後です。
さらに心配になったのは灰分2.4%という低さ。
灰分というのは簡単にいうとミネラルです。
カルシウムとか鉄分などですね。
一般的には7%くらいの製品が多く、少なくとも5%前後です。
栄養成分表の用語についてはこちらをご参照ください。
この会社の公式サイトには総合栄養価の一覧が公表されています。
ミネラルの中でも馴染みのあるカルシウムを見てみますと
「製品100g中 236mg」と書かれています。
給餌目安表を見ると100gは体重8kgの成犬の1日分に当たります。
体重8kgの成犬のカルシウム摂取の目安は1日に800mg。
最低必要量でも530mg、この製品ではその半分もありません。
AAFCOの基準ではカルシウムは製品の0.6%以上となっており
この製品100gならば600mgは含まれていなくてはなりません。
(AAFCO=全米飼料検査官協会
日本のペットフード公式取引協会も同じ基準に従っている)
カルシウムは骨や歯だけでなく血液、筋肉、神経にもあり
心臓をはじめとする筋肉の収縮、細胞の機能調節など、
つまり命を保つために絶対に必要な栄養素です。
だから食べ物から摂る分が少ないと骨からカルシウムが使われます。
骨を犠牲にしてでも血液中のカルシウム量は一定に保たれるので
血液検査をしてもカルシウムが不足しているかどうかは分かりません。
慢性的にカルシウムが不足する食事は確実に体を蝕みます。
もう1つ、おなじみのミネラルである鉄分を見てみましょう。
公式サイトの栄養価一覧では100g中2mgと書かれています。
AAFCOの基準では製品100g中最低8mgと定められています。
最低基準の4分の1しか含まれていません。
鉄分が不足すると貧血というのが一番に思い浮かびますが
鉄は免疫機能にも関与しており、体全体の防衛機能に関わります。
他の栄養素も全部は見ていませんが、三大栄養素のバランスだけでも
長期的に与えると健康に不安を感じるレシピです。
他の種類の製品を見ても、炭水化物の率が突出して高く
他の栄養素は極めて低いという点は同じです。
特に怖いのはパピー用フードです。
成犬用よりもやや栄養素が多めになっていますが
それでも一般的な成犬用にさえ満たない数値です。
パピー用は成長する体を作るためにタンパク質も
ミネラルも計算された高い割合でなくてはいけません。
このパピー用フードでは、身体が大きくならないだけでなく
内臓や脳の働きさえおぼつかなくなってしまいます。
「たいへんじゃないの!」
うん、たいへん。
今まで取り上げてきたフードのほとんどは
AAFCO(アメリカ基準、日本もこれに準ずる)または
FEDIAF(EUつまりヨーロッパ基準)の定める栄養基準を
クリアしている=総合栄養食と表示されているものでした。
一般的に購入できるフードのほとんどは同様です。
市販のフードを与える最大のメリットは
フードと水だけで必要な栄養素が摂取できるということです。
それがここまでのレベルで引っくり返されると、何というか......。
ここまで栄養素の不足した栄養価一覧を公開しているというのは
企業としての姿勢は誠実なのだろうと思います。
でも、どんなに吟味したブランド肉を使って
人間が食べられる高級野菜を使っていても
栄養が足りないものは身体に悪いです。
せめてオーダーメイドのフードはもう少しちゃんとしているよう祈ります。
原材料シリーズ過去記事一覧はこちらです。