タイトルの件「何を今さら?」と言われそうですね😅
犬にブドウを食べさせてはいけないというのは20年くらい前から言われており、今では広く知れ渡っています。
ブドウやレーズンは犬に腎臓障害を引き起こすリスクがあるのですが、その原因やメカニズムは解明されていませんでした。
しかし2年前の2021年、アメリカ動物虐待防止協会の研究チームがこの長年の謎についての調査結果を発表しました。
「2年前って、おかーさん情報遅くない?」
遅いです。すみません。
私も1年くらい前に知ったのですが、その時点で「もう1年経ってるし他で発信されてるだろう」と思い、自分では書いていませんでした。
でもあんまり見かけないことに気づいて、今さらながら「書かなきゃ」と思ったというわけです。
最初に書いておくと、アメリカ動物虐待防止協会が発表したのは「有力な仮説」です。詳細についてはさらに研究が必要だとされています。
ブドウやレーズンを食べた犬が急性腎臓障害を発症する理由は『酒石酸』ではないかと考えられています。
酒石酸とはブドウやワインに多く含まれる有機化合物で、人間には無害です。
ブドウなどから抽出された酒石酸は調味料やph調整剤として使われることもあります。
お菓子作りをする人なら、シフォンケーキなどのメレンゲを安定させるために使うクリームオブタータをご存知かもしれませんが、あれは酒石酸水素カリウムです。
酒石酸が犬の腎障害を引き起こすのでは?と考えられるきっかけになったのは、子供が遊ぶための手作り粘土を食べて急性腎障害を発症した犬の症例です。
残念ながらこの犬は命を落としてしまい、原因解明のために解剖が行われました。
手作り粘土は小麦粉や食塩を使って作られることが多いのですが、この犬は大量の食塩で起こる高ナトリウム血症を起こしていませんでした。
この犬は重度のアゾ血症(血液中のチッ素濃度が高い状態)と嘔吐の症状があり、これはブドウ中毒による急性腎不全の多数の症例とよく似たものでした。
犬が食べてしまった手作り粘土の材料を確認したところ、食塩ではなくクリームオブタータ(酒石酸水素カリウム=酒石酸とカリウム塩の化合物)が使用されていました。
・ブドウにも酒石酸と酒石酸水素カリウムが多く含まれている
・犬は酒石酸に過敏な動物種であることがわかっている
・亡くなった犬とブドウ中毒の犬の症状が一致していた
これらの理由から、犬がブドウを食べた時に腎障害を起こすのは酒石酸のせいではないかという仮説が立てられました。
ブドウやレーズンを食べた犬の全てが腎障害を発症するわけではないのは、犬の個体差の他に、ブドウの種類、栽培方法、産地、熟し方によって含まれる酒石酸の量に違いがあるからだと考えられます。
ブドウに含まれる酒石酸が急性腎障害の原因ではないかという仮説はかなり有力だと考えられていますが、実際にどのくらいの酒石酸を摂取すると危険なのか、どのような治療が有効なのかはさらに研究が必要だとのことです。
危険な摂取量がまだわかっていないので、酒石酸や酒石酸水素カリウムを含む食品は犬が食べないよう厳密に管理することが大切です。
ブドウやレーズンの他にはタマリンドというインドやタイでよく食べられているマメ科の果実も酒石酸を多く含みます。馴染みの薄い果物ですがペーストやチャツネなど加工品も同様なのでお気をつけください。
もっと身近なものでは、お菓子作りに使われるベーキングパウダーは重曹と酒石酸水素カリウムを混ぜたものです。お菓子全体に大量に使うものではありませんが、犬用クッキーなどにベーキングパウダーを使うのは止めましょう。
※追記
ベーキングパウダーは重曹とクエン酸を混合しているものもあります。クエン酸か酒石酸か分からない場合は犬用には避けておきましょう。
また犬の手作りごはんのレシピでリンゴ酢を使うものがありますが、リンゴ酢の代用でワインビネガーを使うことは厳禁です。ワインビネガーには酒石酸が非常に多く含まれるからです。
「うたがわしいものは全部やめとけってことよーーー!」
そういうことです。
「前にも食べて大丈夫だった」としても、今回のブドウやレーズンは酒石酸の多いタイプかもしれない。大切な愛犬にそんな危険なロシアンルーレットをやらせるわけにはいかないですもんね。
犬とブドウの件で続報が発表された際には遅れずに紹介するようにしますね。
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