「ちょっと待って!プレミアムフードってゴージャスでリッチなフードじゃないの?!」
惑わされるよね〜。参考までにこちらを貼っておきます。
さて、話をピュリナプロプラン に戻しましょう。原材料一覧は以下の通り。
チキン、米、家禽ミール、牛脂、脱脂大豆、コーングルテン、とうもろこし、小麦、とうもろこし胚芽、
卵、たんぱく加水分解物、酵母、小麦アリューロン、フィッシュパウダー、植物性油脂、
ミネラル類(カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、クロライド、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素、セレン、硫黄)
ビタミン類(A、D、E、B1、B2、パントテン酸、ナイアシン、B6、葉酸、B12、コリン、K、ビオチン、C)
グリセリン、酸化防止剤(ミックストコフェロール)
一番最初の原材料がチキンというのは評価できます。
ただし生の状態のチキンは水分含有量が多く、調理後に水分が飛ぶと実質のタンパク質量は
かなり少なくなると認識しておかなくてはなりません。
2番目の米、これは英語の原料表記を見るとground riceと書かれています。
挽いた米、つまり米粉ですね。白米か玄米かの区別がないので多分白米だと思いますが
その場合、粉に挽いた米は炭水化物の吸収が早く、血糖値が早く上がる可能性があります。
3番目の家禽ミール、これも英語の表記で見ると poultry by-product mealとなっています。
by-productつまり副産物ですね。トサカや足、内臓など人間の食用にならない部分を
ミールに加工したものです。
家禽というのはチキンの他ターキーやダックなどが使われていると思います。
ただ理想を言えば家禽と一括りにするのではなく、チキン、ターキーなど食材を明確にして欲しいところです。
ピュリナはミールや副産物も、人間用の食肉原料から取ったものだと発表しているので、その点は安心です。
牛脂は書いて字のごとく牛の脂肪。常温で固まる飽和脂肪酸を多く含みます。
このタイプの固まる脂肪はかつてはコレステロール値を上げると不健康な食材扱いでしたが
牛や豚の脂肪にも悪玉コレステロールを低下させる働きがあることが分かっています。
植物性のオイルよりも素早くエネルギーとして利用されるという特徴もあります。
脱脂大豆はオイルを搾った後の大豆を乾燥させたもので、タンパク質を豊富に含みます。
醤油の原料としても使われるもので、けっして「大豆のカス」ではありません。
大豆は植物性のタンパク質の中ではアミノ酸スコアが100で、犬に必要なアミノ酸をバランス良く含みます。
ただし食材としてはバランス良く含まれるのですが、犬の体内で消化吸収し易いかというと別の話。
大豆のアミノ酸は犬にとっては消化率があまり高くありません。
コーングルテンはトウモロコシのタンパク質です。
デンプン質であるコーンスターチを採った後の残りの部分を乾燥させて作られます。
トウモロコシのタンパク質は犬にとっての必須アミノ酸であるトリプトファンやリシンが少なく
バランスが良いとは言えません。
とうもろこし、コーングルテンの他にトウモロコシそのものも使われていますね。
食物繊維、炭水化物源でもありますが、ドッグフードの原材料として気をつけたい点は
トウモロコシの油分に含まれるリノール酸の多さです。
リノール酸は必須脂肪酸であるオメガ6脂肪酸の一つですが、体内で炎症作用を促進するという面があります。
リノール酸は体内でガンマリノレン酸に変換され、そうすると抗炎症作用という反対の働きをしてバランスが取れます。
しかしこの変換能力は加齢と共に低下する傾向があります。
ですからリノール酸の過剰摂取は注意が必要なのですが、この製品のように油分としてではなく
トウモロコシやその副産物が多く使われている場合はつい見落としがちになります。
トウモロコシはアレルギーの原因になり易いとよく言われますが、
リノール酸の過剰摂取による炎症反応という面も大きいのではないかと思います。
小麦は炭水化物とタンパク質両方のソースとして使用されます。
ただタンパク質である小麦グルテンは必須アミノ酸であるメチオニン、リシン、スレオニンが少なく
犬にとっては消化率も低いため、良質のタンパク質とは言えません。
炭水化物源としても、この製品では米やトウモロコシも多く使用されているため穀類が多すぎる感があります。
とうもろこし胚芽、またトウモロコシが登場しました。
胚芽はトウモロコシの粒々の付け根の辺りで、コーンスターチを採る際に分離されます。
コーン油はこの胚芽部分を搾ったオイルで、上のとうもろこしの項目で書いたリノール酸の宝庫です。
コーン自体は食物繊維やビタミンB群、抗酸化物質も含み、食材の一つとして悪いものではありません。
ただ、フードの大きな部分を占める原材料として犬が毎日食べるものではありませんね。
卵、英語の表記ではdried egg productなので、乾燥して粉末状にした卵です。殻は含みません。
チキンミールなどと同じく、水分がない分タンパク質が凝縮して含まれます。
卵は犬にとっても理想的なタンパク源で、オメガ6脂肪酸やビタミン類も含みます。
たんぱく加水分解物は動物性(この場合は食肉副産物)または植物性のタンパク質を
酸または酵素を使って分解しアミノ酸にしたもので、旨味成分として使用されます。
ペットフードでは表面に吹き付けるなどして、風味を良くして食欲を促すために使われます。
酵母、ここでは種類が書かれていませんが、一般的にはプロバイオティクスとしての働き、
ビタミン類やアミノ酸類の補給源として加えられます。
小麦アリューロン、これはまた聞き慣れない名前が登場しましたね😅
アリューロンというのは、小麦や米など穀類の外皮と胚乳(平たく言うと中身の本体部分)の間にある薄ーい層のことです。
小麦の粒のうち、外皮が占める割合は1割強、胚乳が約8割、アリューロン層は1割に満たない7%くらい、残りが胚芽。
このアリューロン層と胚芽には各種ミネラルとタンパク質が豊富に含まれます。
小麦の希少な部分を使っているのですが、そうは言っても小麦は小麦。
それよりも肉や卵を増やしてくれる方が良いと思うんだけど😔
フィッシュパウダー、一般的にはフィッシュミールと呼ばれることが多いものですね。
魚の油を搾った後、細かく挽いて乾燥させたものです。
タンパク源の一つですが、製品の説明ではグルコサミン源と書かれています。
製造時に油を搾って取り除いていることと、高温で加熱調理されているため、
オメガ3脂肪酸の摂取はあまり期待できません。
植物性油脂、これは多分パーム油、コーン油、大豆油など比較的安価なオイルだと思います。
できれば油の種類をちゃんと表記して欲しいところですね。
上記のオイルはリノール酸を多く含むため、上の方のトウモロコシの所の説明をご参照ください。
ミネラル類は吸収しやすくするためのキレート加工などはされていないようです。
ビタミン類については特筆すべきことはありません。
もちろん総合栄養食ですから、必要なビタミンやミネラル類は全て添加されています。
グリセリン、ジャーキーなどオヤツには保湿や保存の目的でよく使われますがフードでは初めて見ました。
油脂を加水分解して製造され、原料である油脂は石油系のものが多いです。
大豆油など植物性油脂から作られたものはベジタブルグリセリンとか植物性グリセリンと呼ばれます。
石油系のものを敬遠する人も多いですが、毒性はないとされています。
この製品は、普通の粒状フードの他に、小さく切ったササミジャーキーのような鶏肉が混じっています。
多分その小さい鶏肉の保湿や保存の目的で使われているのだと思います。
最後の酸化防止剤ミックストコフェロールは代表的な天然系酸化防止剤です。
「それで、このフードのことはどう思うの?」
合成着色料や合成保存料が使われていない点は良いと思います。
でもこれは私がニコニヤに食べさせてもいいかなと思える条件の最低ライン。
最低ラインの他では、穀類が多すぎるなあと言う印象です。
私は必ずしもグレイン(穀類)フリーフードが良いとは思いませんが、このフードは多過ぎ。
特にトウモロコシは上に書いたようにリノール酸の過剰摂取にもつながるのでフードでは避けたい食材です。
またこの製品がアメリカ原産であることと、価格から考えて使用されている小麦、大豆、トウモロコシは
遺伝子組換え作物である可能性が高いと思います。
(私はアメリカで「Non-GMO(遺伝子組み換えではない)」と書かれていない上記3つの穀物は
遺伝子組み換えだと考えています。)
この製品の保証成分は「たんぱく質29%以上」と書かれており、一般的に見てやや多めの部類です。
しかし、そのうちの少なくない割合が大豆タンパクやコーングルテンなど穀物由来のものです。
つまり必須アミノ酸の一部が足りないのですが、この製品にはアミノ酸が添加されていません。
このように植物性のタンパク質が多いフードではメチオニンやリシンと言ったアミノ酸が
添加されていることが多いものですが、原材料一覧には見当たりません。
上でいくつか「英語の表記では」と書きましたが、日本の製品とアメリカの製品では微妙に違うところもあります。
アメリカの製品は通常の粒状フードのみで、ジャーキー状の鶏肉片は入っていません。
またアメリカの製品には必須アミノ酸であるアルギニンとリシンが添加されています。
アメリカの製品に入っていて日本では入っていないものにフィッシュオイル があります。
日本の製品ではオメガ3脂肪酸が含まれていると思われるものがフィッシュパウダーのみです。
けれども、これも前述した通りオメガ3脂肪酸の摂取源として期待できるものではありません。
さらにこの製品では、オメガ3とバランス良く摂取しなくてはいけないオメガ6脂肪酸が
かなり多く含まれているのではないかと思われます。
原材料の中では植物性油脂、トウモロコシ類、牛脂がオメガ6脂肪酸を含むものです。
オメガ3が足りなくてオメガ6が過剰な状態では、皮膚や被毛の状態の悪化、様々な炎症、免疫力の低下につながり
長期的には心臓や脳の健康にも影響を及ぼします。
このフードを利用している場合は、フィッシュオイル や無塩サバ缶をトッピングするなど
オメガ3脂肪酸を追加で与える方が良いかと思います。
最後に個人的な感想です。
私はこのフードのメーカーであるネスレピュリナ社を信用していません。
2014〜2015年にピュリナブランドのベネフルというフードを食べた犬が重篤な体調不良や
突然死に襲われる事例が相次ぎました。アメリカ全土から数千件の報告が寄せられ、大規模な集団訴訟となりました。
被害に遭った犬を診察した獣医師はプロピレングリコールや原料のカビの可能性を指摘したのですが
メーカー側は診察した獣医師は毒物の専門家ではないので証拠能力に欠けると主張、
しかもそれが認められ、原告が敗訴という結果に終わりました。
訴訟の結果がどうであれ、そんなメーカーの製品は絶対に与えたくないですし、信用もできません。
そんなわけでピュリナプロプラン の原材料を見ていく時に「先入観を捨てて気持ちをニュートラルに」と
自分に言い聞かせながら読んでいきました。
「で?正直どう思ったの?」
「思っていたほど酷くなかったわ」と思いました。
ピュリナプロプラン は動物病院のみで取り扱っている療法食も出しているのですが
療法食の代表的ブランドRCと比べるとBHTやソルビン酸と言った合成保存料が使われていない点は評価できます。
でも個人的には使わないけどね。