おなかの話の続きです。
「おなかおなか〜」
前回はプロバイオティクスとプレバイオティクス の
説明をしたところまででした。
今回はまるで私に助けの手を差し伸べるように
ブログThe Science Dogで腸内細菌叢のお話でしたので
そちらの内容も参考にさせて頂きました。
さて、腸内に住んでいる微生物たちのお話です。
腸内の微生物は何万種類もあるのですが
〇〇門〇〇属という風にそれぞれグループがあります。
ものすごく大雑把に言うと、肉食系グループ、草食系グループ
雑食性グループという感じで、その中で種別に分かれています。
このグループの勢力は宿主であるヒトや犬が食べたものによって日々変化します。
「毎日変わるの!?」
そうだよ。
まあ犬の皆さんは毎日の食事にそれほど大きな変化はないから
毎日ガラッと微生物グループの勢力地図が変わるわけではないけど。
ここでは微生物グループの中の大勢力である2つの属
フィルミクテス属とフソバクテリア属の微生物を取り上げます。
●フィルミクテス属
食事から摂る炭水化物や食物繊維の量が増えると
このフィルミクテス属の微生物たちが増えます。
炭水化物は胃で消化して小腸から吸収されますが
一部は消化吸収されずに大腸までやって来ます。
この難消化性デンプンは食物繊維と同じような位置付けになります。
フィルミクテスたちが食物繊維や難消化性デンプンを
分解発酵させて酪酸をはじめとする化合物を産生します。
これら化合物は犬の腸細胞の良いエネルギー源となり、
腸環境のpHを低下させ、抗炎症作用を発揮します。
また腸の粘液層を厚くし、微絨毛の成長を促し
病原性細菌の付着を防止する働きがあります。
プレバイオティクス を摂って期待される効果はこれです。
なかなか素晴らしいですね。
ただしプレバイオティクスの犬への効果は
単純にそこに含まれているものだけでなく
食事の炭水化物とタンパク質の量、元々の腸内細菌叢の分布
などの要素で変わって来ます。
その点はプロバイオティクスも同じです。
●フソバクテリア属
上記とは反対に犬の食事が高タンパク、低炭水化物になると
フィルミクテス属は減りフソバクテリア属(他にもありますが)が増えます。
フソバクテリアはタンパク質を発酵分解して別の化合物を産生します。
(このタンパク質が動物性であっても植物性であっても
フソバクテリアは同じように増えます。)
ヒトの場合はタンパク質を発酵分解してできる化合物は
健康のためにはあまり良いものではないのですが
犬の場合にはこの化合物は体に利益があるのでは?という
研究結果がいくつか示されています。
このフソバクテリアは犬の年齢とともに減少して行くことも
最近の研究で明らかになりました。
シニアになった犬の食事は消化の良さがより重要になる理由の1つです。
消化が良いというのはアミノ酸が効率良く吸収されるということで
動物性のタンパク質が重視されます。
●生食を与えた時の腸内細菌叢
一時に比べると生食ブームは少し落ち着いた感がありますが
ブームではなく生の肉を中心とした食事が定着したとも言えます。
12ヶ月間生肉を与えた犬とドッグフードを与えた犬の腸内細菌を
比較調査した研究では、生食の犬の腸内細菌叢は総数も多様性も
高かったということです。
ただし、これは必ずしも良いこととは限りません。
生食の犬は病原性細菌のレベルが高く、排泄物から他の動物に
感染させるリスクもあります。
食事によって腸内の微生物の勢力図が変わることを
大変かいつまんで書きました。
食べるものの変化は腸内細菌叢の変化にダイレクトにつながるので
フードを変える時には少しずつ混ぜながらというのはそういうこと。
また長年加熱した食事(フードも含めて)を食べて来た犬は
生肉の食事にするのはリスクが高いことも知っておきたい点です。
手作り食の場合、野菜が多すぎるとお腹を下すことがあるのも
フィルミクテス属の子たちを働かせ過ぎたんだなと考えると
納得がいくかと思います。
次回はその「お腹を下しやすくなるのはなぜ?(特に老犬)」について
傾向と対策を書きたいと思います。