今日はいきなりコレクションです。

【コレクション 186 『随想集 河豚のひれ』】
きょうは、たいがいの人が持っていない本を1冊お見せしましょう。

大きさは、表紙を測ったところ、タテ225×ヨコ205×厚さ23mm、本体240㌻、グラビア3㌻の構成です。
上の写真は、スキャナーでの取り込みがうまくいかず、装丁のシックな味わいが伝わらないきらいがありますが、表紙は濃い紺地の布が張られていて、タイトルが表表紙と背表紙に金文字で書かれ、さらに3本線の刺しゅう(中央に白、左青、右紫)が、表表紙の右側と裏表紙の左側に、ちょうど1周するように付けられています。
2箇所に『河豚(ふぐ)のひれ』とあるうちの、右が背表紙の箇所で、ここを境にして、左に表表紙の全面と、右に裏表紙の一部が取り込んであります。
(2)面白そうですか?これが100円で転がっていました。
といって自慢しても、あとで「なあ~んだ」と言われそうですから、先に何の本か明かしておきます。

タイトルの下に「朝日新聞西部本社創刊三十周年記念」と副題がついています。
発行部数は「限定650部」で、この本はそのうちの「第460冊」とありますから、必要なら元の所有者も特定できるかもしれません。
そして、刊行は「昭和40年12月15日」です。この時、私は高校受験を控えた中3で、そこへ父の不幸が重なって家中があたふたとしていた時期でしたから、この日付を見た時、内容とは別に深い感慨・因縁を感じ、「読むのは後」としてすぐに買い求めました。
「買い求めた」などと大げさですが、100円ですから、迷いなどありませんでした。
(3)もちろん、パラパラとめくってタイトルくらいは見ました。当然です。
内容は朝日新聞西部本社の社員や関係者の随筆集ですから、それだけでも興味深いですが、あちこちについている挿絵・イラストも楽しいのです。この挿絵などだけでも「買い」です。100円でなくて、1000円でも買ったでしょうね。
ともかく、家に帰っておもむろにあちこちを開いて中を見ました。
(4)全部をお見せできなくて残念ですが、目次の最後のところを載せました。

こういう挿し絵が、本文中にもページの余白を生かしてたくさん入れられてあるのです。楽しいですね。
しかも、上の目次の終わりから5行目に「題字・もくじ装画 松本清張」とあります。
『河豚のひれ』という題字と上の目次の挿し絵は清張作だそうです。
そうでした。松本清張は小倉で長いこと下積み生活をしていて、そのことは『半生の記』にも記されています。それから、作品に『ある小倉日記伝』というのがありました。主人公が、小倉時代の鴎外の足跡を苦労して追って、ようやく調べがついたと思ったら資料が出てきた、というような筋だったかと思いますが、自分にもそういう経験があるので、忘れられない作品です。
そこで、随筆も書いているのではないかと気が付いて目次を見直すと、177㌻のところに「三分の一の人生 松本清張」が出ていました。
(5)オット、清張に傾いてしまいましたが、この本が出たのが昭和40年で、「30年記念」として編纂されたわけですから、内容は昭和10(1935)年以降のことになります。この随筆集には120編が収められていますが、その多くに「戦時中の回想」が含まれています。歴史家がこういうものに目を通すことがどのくらいあるのかわかりませんが、重要な記録だと思われますからぜひ目を通していただきたいと思いますが、歴史家だけでなく皆さんにも、どこかでご覧になれる機会があるといいと思っています。
(6)最後に、古本に関する川柳を一つ。
掘り出しの本で幸せつなぐ日々
もう一つ。
本さがし まだまだほんの50年
*出典は2作とも『川柳 古書まみれ」(中川道弘/古書 上野文庫刊 平成5年)
今日はここで。
大船渡、目途が立ってきました。
ウクライナ、がんばれ!
アメリカの民主主義、がんばれ!
ロシアのマーマ、死んで英雄もないぞ~! 死ねば、死者だ!

雪の日:さむいよ~!