きのうの続きです。
酒巻芳男『皇室制度講話』で先行研究の3番目に高木三郎『皇室会計法規大意』を挙げています。
まず、高木がこの本を作った理由どういっているか見てみましょう。「序」に次のようにあります。
「皇室経済の如き稍もすれば法規の拘束を脱して放漫に流るるもの、・・・法規を知らずして無視するは職に不忠なるもの、・・・宮内職員の会計法規に対する観念政府部内職員に比し著しき径庭あるを否む能はす」。それで「大正15年の頃」に「宮内職員学術講習」のために本書を作成した。
本来なら、ここで冒頭部分の画像を紹介すべきですが、許可を得ていないのでできません。ご覧になりたい方は宮内公文書館(識別番号93920)で閲覧してください。
いま細かい説明はできませんから、表面的になりますが、目次を挙げます。(数字は各項が始まるページ数です)
第1章 総 説 1
第1節 会計の意義 1
第2節 皇室会計の基礎法規 2
第3節 皇室会計の種別 4
第4節 皇室会計上の機関 7
第5節 皇室会計上の年度 22
第1款 会計年度意義及期間 22
第2款 整理期間 22
第3款 年度所属 23
第2章 予 算 29
第1節 総 説 29
第2節 予算の準備及提出 41
第3節 予算の議定及成立 49
第3章 現 計 55
第1節 総 説 55
第2節 収支の命令 57
第1款 収納手続 57
第2款 支出手続 60
第3款 予備金支出の手続 75
第3節 収支の執行 76
第1款 預金銀行 76
第2款 出納官吏 78
第3款 収入及支払 98
第4章 決 算 104
第1節 総 説 104
第2節 決算の調製 111
第3節 会計監督 112
第1款 監督機関 113
第2款 審査の範囲及方法 115
第5章 契 約 118
第1節 総 説 118
第2節 会計上の契約の種類 118
第3節 契約の当事者 128
第4節 契約の手続 135
第5節 契約の帰結 145
第6節 契約違反に対する制裁 145
第6章 財本及資金 152
第1節 財 本 152
第2節 資 金 154
附 録 皇室会計令 同施行規則 略。
どうでしょうか。「皇室」という言葉がなければ、会計法の教科書らしい整然とした組み立てを感じますが、高木は「序」で述べていたように「会計法規」を講じたはずです。概観としてですが、どこに重点があるでしょうか。章ごとでは、第3章現計と第5章契約で、節ごとでは、7ページ「機関」、60ページ「支出手続」、78ページ「出納官吏」、138ページ「契約手続」などが目につきます。ここはそれぞれ多くのページを費やしています。
内容説明なしで申し訳ありませんが、私が読んでの感想は、明日取り上げる池田秀吉『皇室会計法規要義』をその前に読んでいたせいか、わかりやすい、納得しながら読める、違和感は感じない、でした。
しかし、高木が一生懸命に説明してくれているとはいえ、内容は一読するだけでもかなりしんどいです。初めて読む人は一度に10ページ読めたらいい方ではないでしょうか。なぜそうなるかというと、高木は逐条解釈的に説明しているからだと思われます。
さて、私が知りたかったのは、酒巻が『皇室財政講話』を作るのに、高木本に何を見て、どこを利用したのかですが、高木が多くのページを割いているのは、以上のようなところです。そして、逐条的に、ある意味で学者的、学問的にきっちり説明しています。それが特徴です。これを除くとページ数から見ても特に変わったところがありません。
そうすると、4番目の池田秀吉『皇室会計法規要義』はどうでしょうか。そこは明日にしましょう。
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