早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句 「早春」大正十五年四月 第一巻三号より

2019-12-24 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
「早春」大正十五年三月 第一巻三号

 春寒
     孟宗の端山日向春寒し
     蜷ついて杭の引き汐春寒し
     道ほこりかむり野蒜の春寒し

 三月例会 貝類その他

     春の貝小さきほどがつぶらにて
     貝いろいろかがやく中の桜貝
 
 早春社北句会 兼題「冴え返る」 席題「猫の子」
     お針子に日毎なぶられ猫の子は
     冴返り鳥は高きに飜へり 
 早春社きたの句会
     煤降って小雨も来る木の芽哉
     ぬるむ水コップに汲んで藁の塵
 早春社阪神例会
     ふところに読まぬ冊子や青きふむ
 早春社尼崎句会
     春風に吹かれ艸の實艸の枯れ
 早春社西宮句会
     盆梅やあまりにさいてほのいやし
 神戸早春社
     おしまれて鳴雪逝かれ梅のころ
     沼べりの古艸野火を収めけり
     野火の端旅あきうどが踏みてゆく
     小島崎引き明けに野を焼ける
     春の泥町が野になる燈にて

 発行所句会
     松のかげ水に春夜につのる哉
     春の海全く暮れて雲あかし
     
 巻末  
     足もとにたんぽゝゆるゝ静かな日
     はこべやれば雛子ら箱に踏み踏まれ
     死にきって吹けば散る蜘蛛にあたゝかし
     物賣りの村悪み去る葱のはな
     花蘇枋何も植らぬ畝に散る
     野のふかし薊の花に潜る鳥
     壬生念佛いつぞや見たり眠りたり
     釋尊や堂後の李花に床を置く