早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句 「早春」大正十五年五月 第一巻四号より  その3

2019-12-26 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
 四月例会 兼題 「木蓮』 席題『春深し』

      春深し芝の小中にもの咲いて
      春深し椶櫚きたなく枯れ下がり

 比叡山行  山王院堂より大講堂まで
      
         湖上
      湖の風花には早き寒き哉
      甲板の春の日ねむく面はゆし
      かげろうを亂して湖の船は著く

 早春社安治川例会
      子雀の啼くが見えねど屋根ぬくく

 早春社神戸例会
      東風が来て動くは茨木の芽哉
      春の燈の田舎港の出船前

 早春社初島例会
      河岸窓へ舟から笊の諸子かな

 早春社発行所例会
      下村の日南のび来ぬ胡葱畝 

早春社きたの例会 
      渦つくる春暁の水のたへまなく
 
 早春社郡山創会
       菜の花に水邊は霽れて暮れゆとり

 蜆心亭寓座
       木蓮や提灯あげて雨を見る
 
      

      


      

宋斤の俳句 「早春」大正十五年五月 第一巻四号より  その2

2019-12-26 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」大正十五年五月 第一巻四号より  吟行 舞子より須磨まで

    耕

       耕して行く下照りにちる木の葉
       耕や椿と椶櫚に照り曇り

    吟行   舞子より須磨まで
       貝いろいろのなかにうとりと春あした
       のどかさの砂拂うパンの粉拂う

       春の日が顔に海邊も旅もなし
       春風の濱玉垣に松古く
       草萠に貝盃の露振って

       薄野の春の日向に仰ぐ山

       紅梅に須磨は夕日敦盛忌
       

  
  

宋斤の俳句 「早春」大正十五年五月 第一巻四号より

2019-12-26 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」大正十五年五月 第一巻四号より  近詠


 近詠 
       堺の浜にて
     陽炎を浮いて蝶々の海を指す
     浜の子が砂掘る其處もかげろひぬ
     飛行機のあがるも見やう春の潮
     沖の方濃きまさり春満ちにけり
     時ありて海吹く風のやなぎ哉
     住む人に入濱飛べるつばめ哉
     みどり子に婢二三人春の濱

       道頓堀界隈にて
     古本屋まはりして花にそむきけり
     橋に立つ脊を春宵の往来かな
     川の水迅く春夜の障子かな
     春の燈の町たちまちに暗きあり
     春の闇我にあらねど妓が呼べる

       小 庵
     筆立てやみな不用ぬ筆春日さす
     水仙のみだれに入りぬ春の蠅
     籐椅子を年中縁に桃長閑
     春日さす厨にて愚妻何うたう
     葉蘭鳴らすはぬすびと猫の子猫かな


 三月例会 貝類その他

     春の貝小さきほどがつぶらにて
     貝いろいろかがやく中の桜貝