早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句 「早春」大正十五年七月 第二巻一号より 『太平記』 

2020-03-22 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
     太平記

     南北戦争時代凡五十年間の亂世兵戦を綴れるものを『太平記』といふ作者は皮肉なり。
     何人の筆になりしや確かに知り定めたるものなし。
     太平記は良質に値せずといふ、さらば太平記は歴史講談小説の元始的なる歟、何にても可なり。
     余に、愛読の書一冊を問うものあらば、言下に『太平記』と答うべし
     若し、何を読むべきかを尋ぬれば、言下に『太平記』を読みしやと問うべし。

     近時の俳句人、徒らに作ることのみに熱心にして、読書に怠ることを無き歟。
     近時の俳句人、徒らに新しきを読みて作句の思想に迷を起せること無き歟。
     両者の輩、太平記を読みしや否や、重ねて云ふ、太平記は文章妙なりと雖も通俗軍団の類なり。
     風雅あること尠し、元より俳句なし。
     然も、日本の俳句を作らんとするほどのものは、先づ日本の太平記より読み初めて可なり。
     太平記すら読みたること無しとは、恥ずかしきかぎりなり。