早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十六年六月 第三十一巻六号 近詠 俳句

2022-08-11 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十六年六月 第三十一巻六号 近詠 俳句

    國母殿下を京洛に迎え奉りて
わか葉雨浄きに仰ぎありがたき  永尾利三郎 

    近詠
五月雲富士より生まれて昇るか 

五月なる旦の空ゆ瀧の鼓

夏來る樹々の中なる欅ぞ

初夏の海の霽るゝ遠島暈生み

沙羅咲けり廊下に雨をふみて佇

まへ梅雨の葉桜を降り垂れにげ

好み好みの窓にて薔薇を置くもあ

蝉聴ひて夏はっきりと雲にあ

草矢しつ洫満水の樋尻よ

いとまありて蝿をとる手に自信あ

住みし縁の釣しのぶ何時何處なり

美女爪を剪る湯あがり圖青す

尾を曲げて雲を怖るゝ日高かな

老鶯や梢ひろきに水せまく

日本全島即空母艦たれ薫風裡

鮎涼し小皿にあまり結ぶ口

桐の花移轉訪ねて此處ならず

雨の日の矢車に見る風の宋

梅落ちて弾むを渓の奪ひけり

舟蟲の金魚を覗く相不識

しもと屋の船場の庭に蟻を見て

儀禮章を胸に薫風街路かな

降る雨は雨後照る楠は楠公忌

太陽を毛蟲の背に與え置く

夕ながし芭蕉玉巻き人とあり


丘のそと小浦してゐてよもぎ摘み

蓬の上撫でゝあしたの露つめた

水をゆき石原もどりよもぎ摘み

  十五日會句抄
二尊院のあたりの梅雨をふと思ふ

梅雨未だはちす浮く葉のかゞやけり

百合をかざし掌上に蟇を童子あり

  早春社五月本句會  兼題「五月雲」席題「松蟬」
たちすゝむ五月の雲や滝のうえ

五月雲夜風となれば海に散る

松蝉を湖からきいて登り來し

松蝉や山から海へ白一路

  神戸本句會四月初會
夜かすみの岬邊燈込みにけり

ひた凪の海をましたに花のくれ

花ふかく潜つてちりもそめざりき