早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十六年 九月 第三十二巻三号 近詠 俳句

2022-08-29 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十六年 九月 第三十二巻三号 近詠 俳句
  
   近詠
  棧庭日常
初秋や夜の音水のひろきより

新涼や川くる風の北々東

月澄めりビルの肩より我肩へ

秋されし稲の匂ひをきゝたくて

我縁の六橋見ゆる秋の空

水の秋遠く蜻蛉の失せずゆく

飛機しきりに來りて低し出水川

濱蔵の炭木材に地蔵盆

向ふ河岸筏しずかな草老ひ咲き

はたはたの交める跳びし露朝日

草すこやか踏めば踏まれて實をちらす

子規忌來併修百六十句友嗚呼 

秋の蝿拂子振るよりしばし來ず

病むもまたよかりし日あり天の川

秋光や手にイーチョール黒く塗る

病苦句にいふは卑怯やちゝろ鳴く

露草のはびこり塀に螇蚸付く

棧庭に葛かゝり咲く友よ見よ

  蜂
鳥のあと蜂のゆく空朝ひろく

山驛に汽車の停る間蜂の晝

蜂の翅いつもあたらし日を泳ぐ

  十五日會

かたばみの夜を寝る葉に蝿くろし

片づけのこゝつくるより海の砂

潮の香に藷茂り草しげる哉

  青鈴句會
萬兩のくれなゐさめず夏たちぬ

雲立夏湖にうつれば戰儀蹴り

餘花は朝一つの窓と崖のうへ

  二葉句會
鳥さとき中に沈もり栗拾ふ

菊の外夜を芒の老ひにけり