宋斤の俳句「早春」昭和十六年 九月 第三十二巻三号 近詠 俳句
近詠
棧庭日常
初秋や夜の音水のひろきより
新涼や川くる風の北々東
月澄めりビルの肩より我肩へ
秋されし稲の匂ひをきゝたくて
我縁の六橋見ゆる秋の空
水の秋遠く蜻蛉の失せずゆく
飛機しきりに來りて低し出水川
濱蔵の炭木材に地蔵盆
向ふ河岸筏しずかな草老ひ咲き
はたはたの交める跳びし露朝日
草すこやか踏めば踏まれて實をちらす
子規忌來併修百六十句友嗚呼
秋の蝿拂子振るよりしばし來ず
病むもまたよかりし日あり天の川
秋光や手にイーチョール黒く塗る
病苦句にいふは卑怯やちゝろ鳴く
露草のはびこり塀に螇蚸付く
棧庭に葛かゝり咲く友よ見よ
蜂
鳥のあと蜂のゆく空朝ひろく
山驛に汽車の停る間蜂の晝
蜂の翅いつもあたらし日を泳ぐ
十五日會
かたばみの夜を寝る葉に蝿くろし
片づけのこゝつくるより海の砂
潮の香に藷茂り草しげる哉
青鈴句會
萬兩のくれなゐさめず夏たちぬ
雲立夏湖にうつれば戰儀蹴り
餘花は朝一つの窓と崖のうへ
二葉句會
鳥さとき中に沈もり栗拾ふ
菊の外夜を芒の老ひにけり
近詠
棧庭日常
初秋や夜の音水のひろきより
新涼や川くる風の北々東
月澄めりビルの肩より我肩へ
秋されし稲の匂ひをきゝたくて
我縁の六橋見ゆる秋の空
水の秋遠く蜻蛉の失せずゆく
飛機しきりに來りて低し出水川
濱蔵の炭木材に地蔵盆
向ふ河岸筏しずかな草老ひ咲き
はたはたの交める跳びし露朝日
草すこやか踏めば踏まれて實をちらす
子規忌來併修百六十句友嗚呼
秋の蝿拂子振るよりしばし來ず
病むもまたよかりし日あり天の川
秋光や手にイーチョール黒く塗る
病苦句にいふは卑怯やちゝろ鳴く
露草のはびこり塀に螇蚸付く
棧庭に葛かゝり咲く友よ見よ
蜂
鳥のあと蜂のゆく空朝ひろく
山驛に汽車の停る間蜂の晝
蜂の翅いつもあたらし日を泳ぐ
十五日會
かたばみの夜を寝る葉に蝿くろし
片づけのこゝつくるより海の砂
潮の香に藷茂り草しげる哉
青鈴句會
萬兩のくれなゐさめず夏たちぬ
雲立夏湖にうつれば戰儀蹴り
餘花は朝一つの窓と崖のうへ
二葉句會
鳥さとき中に沈もり栗拾ふ
菊の外夜を芒の老ひにけり