宋斤の俳句「早春」昭和十八年十二月 第三十六巻六号 近詠 俳句
近詠
十一月三日まことに畠のよき日和
飛機いさまし頃秋闌の空切つて
草紅葉人等しづかに野をめぐる
陶像の古びかろかり翁の日
残菊の咲きほつれたるながながし
柿みかん貰ひ豊年熱の舌に
畑空と入院一ヶ月冬立ちぬ
初冬の雲のいろなり雲をゆく
みちのくの香茸とこそ飾りけり
明治節より日和つゞきが冬になりぬ
山河また十二月八日感揚す
病めるものゝ八日の心誰か知らむ
病めるもを罵り去れり冬の鵙
辛子搗く工場のありて冬の夜
冬霞懐ふ神崎のかすみ橋
冬大晴れ寝て飛機仰ぐ畏れあり
冬日南ちりばめば蝶しろくゆく
(病室)南窗西窗持ちて冬入日
ブーゲンビル島沖大戰果を詠ふ
めつむつて戰果を秋の空におもふ
街の人野の人さやか張るこころ
氷柱
徑の上を渡り藁家へ氷柱の樋
松の根のあらは石抱き氷柱かな
汽車の窓しばらく對す氷柱あり
焚火して氷柱汚すことなきや
登校の子も杜絶へたる氷柱哉
近詠
十一月三日まことに畠のよき日和
飛機いさまし頃秋闌の空切つて
草紅葉人等しづかに野をめぐる
陶像の古びかろかり翁の日
残菊の咲きほつれたるながながし
柿みかん貰ひ豊年熱の舌に
畑空と入院一ヶ月冬立ちぬ
初冬の雲のいろなり雲をゆく
みちのくの香茸とこそ飾りけり
明治節より日和つゞきが冬になりぬ
山河また十二月八日感揚す
病めるものゝ八日の心誰か知らむ
病めるもを罵り去れり冬の鵙
辛子搗く工場のありて冬の夜
冬霞懐ふ神崎のかすみ橋
冬大晴れ寝て飛機仰ぐ畏れあり
冬日南ちりばめば蝶しろくゆく
(病室)南窗西窗持ちて冬入日
ブーゲンビル島沖大戰果を詠ふ
めつむつて戰果を秋の空におもふ
街の人野の人さやか張るこころ
氷柱
徑の上を渡り藁家へ氷柱の樋
松の根のあらは石抱き氷柱かな
汽車の窓しばらく對す氷柱あり
焚火して氷柱汚すことなきや
登校の子も杜絶へたる氷柱哉