早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十九年二月 第三十七巻二号 近詠 俳句

2023-12-06 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十九年二月 第三十七巻二号 近詠 俳句

     近詠
如月や筏によする波の皺

よべの雪いらかに濡れて春たちぬ

荒東風を見上げて空に戰果あり

栗鼠せはし春の立ちしと樹に告ぐる

眞夜の川寂々積みて冬果てる

春寒やときたま聞ゆ沖の汽笛

風の音障子に失せて春日南

土ひろく早春の風渡けり

しろ椿しろき極みに蕋を点つ

    春の音
春の音野に工場の夜業あり

厨晴れて何かともらす春の音

みのむしの深寐に知らず春の音

春の音百蟲出でゝ草走る

春の音背に堤の往來して

     六橋観句抄 
       宋斤を六橋観に見舞って慰問の句筵
       宋斤 南畝 冬尊 大露 雲啼 布丈 源泉 友女 明子 妙女 阿南
花萬朶散らず一閃鳥の影

見るほどに花のそよぎの遠き行く

舟つけてあがるいづこも蓬かな

磧行き蓬母子も露白み

春光に牛乳一石青きかな





      







宋斤の俳句「早春」昭和十九年一月 第三十七巻一号 近詠 俳句

2023-12-06 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十九年一月 第三十七巻一号 近詠 俳句

     近詠
勝ちぬかん元日に思ふこの一事

初鳥その空さらに飛機渡る

    退院
我家の朝の日南はたとへなき

冬の日は川面を二階障子照る

凍つる夜や葛湯の匕を舌に受く 

    病めば
ゆたんぽが足にさからひだぶだぶす

隙間風病みてわが鼻たかきかな


   長野同人より眞綿着を贈られて
てんとう蟲の如くに著よと背藍綿

大根煮夜陰の湯気を吸ひにけり

冬の部屋深紅の花が一輪す

石叩霜の筏を轉々と

冬のはれ鳶川に來て大いなる

川向ひ住まず冬燈幾夜亡く

枯れ草のさまも見たしと野を思ふ

熱あれば蕪のあつちやら舌によき

生駒より六甲すこし眠ろかな

年の内の燈圍ひくらすかな

   早春本句會納會  十二月五日 於 本社
題「蝋梅」即景「冬の橋」
人ひとゝき舟ひとゝきの冬の橋

冬の橋に忙人の背を見送りつ

冬の橋孤なり夕照塔にあり

冬の橋渡りて島の淺きかな

   水取り (二月堂にて)
凍泥に修二會へ参ゐる杉の下

村繼ぎに運ばるゝ霜の御松明

御松明卍字火の粉の巴なす

お水取り昨日に霜のお差懸

   矢車 
矢車の夜の空はのと舞ひにけり

矢車のかげ地にあるは舞ひにけり

矢車の音をきゝつゝ讀みすゝむ


   昭和十八年の早春回顧より
一年は捷ちて過ぎたり初仕事

初東安易を蹴つて拜しけり

初日野にかゞやかし若者ら