去年のカンヌ国際映画祭で脚本賞、第72回ゴールデングローブ賞で外国語映画賞を受賞、
今年のアカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされたロシア映画(受賞はポーランドの「イーダ」)
「父、帰る」のアンドレイ・ズビャギンツェフが、ロシア北部の小さな町を舞台に、
市井の人々と権力を振りかざす行政の対立を描いた人間ドラマ。
原題の「LEVIATHAN」(レビヤタン)は、旧約聖書に登場する海中の怪物(怪獣)。 悪魔と見られることもある。
邦題通り、裁かれるのは善人のみ
アメリカで実際に起きた土地の再開発をめぐる悲劇的な事件(キルドーザー事件。2004年、町の再開発に反対する自動車工が改造ブルドーザーに乗って市役所や工場、新聞社、市長の自宅などを破壊し最後に車中で自殺した事件)をベースに書かれた。
ひどい。人権無視。
さらに、無実の罪を問われて財産を奪われた男の物語「ミヒャエル・コールハースの運命」、旧約聖書の「ヨブ記」、
トマス・ホップスによって書かれた政治哲学書「リヴァイアサン」からも着想を得ている。
LEVIATHAN 2014年 ロシア 140min
10月31日より、公開中~
裁かれるは善人のみ - 映画予告編
ロシア北部の小さな町で、自動車修理工場を経営しているコーリャ。住み慣れた家で、若い後妻リリア、 息子ロマと生活していたが、
市長のヴァディムが彼の土地を買収しようとする。
権力を武器に自分の土地を容赦なく奪おうとするヴァディムに激しい怒りを覚えたコーリャは、モスクワから友人の弁護士ディーマを呼んで市長の悪事を暴露して徹底抗戦に挑む。次第に両者の攻防は激化し、思わぬ事態を引き起こす。
6/10(62点)
エゴまるだしの悪人市長に歯向かう術もなく、法のもとに戦おうとするも
権力により簡単に邪魔者は跡形もなく消される。
ロシア北部の美しくも冬枯れの荒涼をはかない人生との対比で魅せる。
理不尽、カネや権力を持たない者の無力さと、それらを手にする者が勝ち取るものとは。
殺伐とした光景の中、正しき者が罰せられ、卑しき者は生き残る。
次第に引き起こされる負の連鎖。やるせない。
そもそもその若い後妻が、親友であった男にも気に入られ、応じたものだからこんなことに。
責任を感じて身を投げようとするのも自分勝手な話だし、
本気で愛していたからこそ、許しを決めた主人公、コーリャは想いを馳せて親友の男の元に逃げたのだと納得するが
後日、死体が見つかった。
不倫現場をみた事で、思わず発した「殺してやる」が命取りになり
殺意があったとされて犯してもいない、自分の妻の殺害容疑で逮捕。
そして家を奪われるどころか、人生までも奪われた。
不条理で無慈悲、悪の連鎖。
正しいものだけが罪をきせられ、本当の悪人はのうのうと暮らしている。
悪が罰せられずに何も変わらずこのまま生きていく。罪を罪だと意識することなく。
なんと恐ろしい。
裁くのは人間であり、証拠がなくてもどうにでも出来る、権力と金さえあれば。
そんな世の中が怖い。