「ドライヴ」「オンリー・ゴッド」のニコラス・ウィンディング=レフン監督最新作
色彩感覚が独特な世界観をいつも以上に発揮した本作
カンヌでは賛否あったというけどわたしはこれ、断然好きだー
リンチ作品のように、一見不可解な印象を受けるシーンもありつつの
後で繋がるとその意図するものがくっきり浮かび上がるような不思議な魅力のある作品。
美への執着、嫉妬、自信、歪んだ愛、そして狂気。
永遠の美への憧れが生んだ、その先に。
ジェシー演じるのは近年、ダコタの妹という肩書きがいらないほどに活躍しているエル・ファニング。
エルに関しては個人的にはダコタの方が整ってると思うし
誰もが憧れる「美女」という感じではないし、むしろ垢抜けない感を抱くんだけど
創られたものではなく、天然の美しさを持つ原石のような魅力を持つ、という意味で
本作に抜擢されたのは納得。
カメラに立つ時、自信を身につけた時(あるいは最初から、、、)魔性の、天性の光るものが突出してきて
そこにいるモデルの誰よりも輝いてる
現場で知り合ったメイクアップアーティスト、ルビーに、ジェナ・マローン。
モデルのジジに「高慢と偏見とゾンビ」のベラ・ヒースコート。
モデルのサラに、「マッドマックス 怒りのデスロード」のアビー・リー。
モデル事務所のオーナーにクリスティナ・ヘンドリックス。
and キアヌ・リーブス。
8/10(89点)
ネタバレあり
独特の、コントラストが強い映像美に圧倒される。
整形したり、過度なダイエットなどで美しさを手に入れたモデルたち。
美に対する価値観はそれこそ人それぞれ。
わたしは一般人でもモデルでも、整形するのは勝手だとは思うけど
整形して手に入れたって本物の美がやっぱり美しいと考えるし、
お金をかけてシワを取ったりボトックスで頬を膨らませたりして若返るより
年齢なりの年の重ね方でシワが増えてもそれはそれで美しいんじゃないか、
むしろ何もしないでどこまで綺麗でいられるかということへのチャレンジの方が楽しいと考えるので
(個人的には作られた美には)惹かれないのだけど、
女性なら愛する人のためもしくは自分のために綺麗になろうと思うのはもちろん当たり前だ。
モデルの寿命、美しさの寿命は若さとともに薄れていくと信じられているような世界。
実際、男の人は「女は若ければ若いほどいい」というのも本音としてあるだろうけど
創られた美と、執着して生まれた美、無意識から生まれる美、唯一無二の美は天然、ナチュラルな美しさなのか。
カメラマンやデザイナーの、ジェシーを見たときの反応があからさまでまた面白い。
本作の中でも、デザイナーがモデルと飲んでいる酒の席に、
無名カメラマンの友人を伴って入ってきたジェシーは、今では自信ありげに近くの席に座る。
整形美人であるモデルの前で、そのカメラマンのジェシーの友人に、「この女性を見てどう思う?」と尋ねる。
答えは「(Fine,)いいね。」
でもあくまでそれは創られた美くしさ。隣にいるジェシーを指して、唯一の美しさは天然であるがゆえ
だと説く。それに「その考えには賛成しない」と反論するそのカメラマンは
「では、ジェシーが綺麗じゃなかったらそれでも惹かれたか?」「中身が勝負とでもいうのか」というような会話がされる。
ここはどこの世界でも、美に対する永遠の問いというか
女は見た目か中身かという話なんだけど、そこのテーマだけに終わらずに
美しさを手に入れるには、そのものを自分の体内に取り込む。
という考えのもと、カニバリズム行為がなされる方向に流れていく。
はじめからなんだか怪しげなルビーの存在が次第にクローズアップされてきて、
ジェシーに対する執着が明らかになってくるから面白い。
ルビーというこのメイクアップアーティストは、一流カメラマンと組むくらいこの世界ではトップクラスだけど、
そんな多忙な人が、実は死体のメイクもしている。依頼された仕事なのかは定かでないにしろ趣味からきてるのは明らか。
いろいろと後で繋がる描写も多くてそこがまた面白いんだけど、
ジジとサラという二人の現役モデルは、ジェシーという素朴な新人の突然の出現によって
自分のモデルとしての地位が脅かされて、自信も揺らぐ。
ルビーはジェシーに拒絶されたことで、いや、初めから狙っていたのだろうけど
その存在感からくる嫉妬と欲望でジェシーは狙われる。(結果、襲われる。)
その兆候は伏線があって、オーデションで負けたサラがトイレでジェシーの腕を掴んで
その血を舐めて自分に取り込もうとするところにも表れている。
ルビーは月を浴びながら恍惚となり、結局は、、、、
自分の中に足りない美を取り込むために、その美を食って宿すという考え方。
ラストでジジが吐き出した目玉はもちろんジェシーのものであって、
それをまたサラが口にし、自分にはない美を取り込む。
そしてジェシーの魂はサラの姿を借りて復活を遂げた、、、ように見える。
途中の死体とのセックスや目玉ポロン。といい、こないだ観たばかりの「ファウンド」とかぶってて、こっちもか!
と突っ込みたくなった 笑
でも、嫌いじゃない(むしろ好み❤︎)
キアヌに関してはかなり思わせぶりで、無名の役者がやるよりも、あのキアヌだからこそ良かった。
その存在感は是非、ファンの方は直接見て欲しいな。
数々のブランドの提供した衣装や、ポイントで煌びやかな、普通はできないようなメイクも美しく見どころの一つ。
エル・ファニング演じたジェシー。
昔から何かやらかす危険な子と親に言われてた。と言ってるシーンもあるように、
素朴な女の子が田舎からハリウッドに出てきて垢抜け、トップになってその仕打ち、というよりも
もともとあったこの子の中の魔性=デーモン=悪魔が呼び覚まされたという展開が、
実はしたたかという雰囲気も醸し出して、エルちゃん素敵に演じてた。
これまでの田舎くさい垢抜けない感じ(ファンの方ごめん、)から一転、本当にレフン監督は美しく撮った。
今まで見たエルの中でダントツ綺麗
メイク、いつものエルよりこっちの方がいいのに。
この独特な世界観、ぜひ劇場でご堪能あれ
わたしは好きだけど、あまりに展開はスローなのでやたら長く感じる映画で
内容も内容だけにかなり人を選ぶかな。
ちなみにこれ、ホラーです。完全に、美しきホラー映画。
美しく純真な16歳の田舎娘ジェシーは、トップモデルになる夢を叶えるためロサンジェルスへとやって来る。するとその美貌が人々の目に止まり、すぐに事務所と契約できたかと思えば、気難しいことで有名な一流カメラマンのジャックに撮影してもらうことにも成功する。トップモデルの夢に向かって順調すぎるほどの素晴らしいスタートを切ったジェシーだったが…。
THE NEON DEMON アメリカ=デンマーク=フランス 118min
1月13日より、公開中〜
プレミアにて。
クリスティナ・ヘンドリックスの胸が相変わらず凄すぎ!
左はジジ役、ベラ・ヒースコート。
姉のダコタと。こう見ると、エルの方がメイク映えはするのかも。
エルの方がモデル体型。
いつもムサいキアヌ、この日も変わらず。
監督もお茶目❤︎