真の信仰とは何か? なぜ神は沈黙しているのか?
マーティン・スコセッシ監督が'88年に原作と出会ってから28年の時を経てついに完全映画化。
原作は戦後日本文学の最高峰とも称される遠藤周作の「沈黙」
江戸幕府による激しいキリシタン弾圧が行われていた17世紀の長崎。
日本で棄教したという高名な宣教師を追い、弟子のロドリゴとガルペが海を渡ってやって来る。
師を追い日本へやって来る若きポルトガル人宣教師ロドリゴには、アンドリュー・ガーフィールド。
ガルペには、ベン・スティラーとの「ヤング・アダルト・ニューヨーク」や
「スター・ウォーズ フォースの覚醒」でカイロ・レンのアダム・ドライバー。
二人の宣教師、フェレイラにリーアム・ニーソン。
日本勢のキャストも素晴らしい
キチジローに窪塚洋介。
イノウエさま、にイッセー尾形。
通辞に、浅野忠信。
モキチ、塚本晋也。
小松菜奈と加瀬亮。
8/10(85点)
もちろん、アンドリューやアダム・ドライバーも素晴らしかった、
そして塚本晋也、通辞役の浅野忠信、加瀬亮、小松菜奈、と日本からも名優たちが沢山出演したハリウッド作品。
皆素晴らしかったけど特に、長崎奉行の井上筑後守役でイッセー尾形さんと窪塚洋介くんがすごく良かった。
一度目のオーディションでガムを噛んでたらすぐに落とされて、
2年後にまたオーディション。まだ探してたんだ。と思うくらいで
「想像してたキチジローとは違うキチジローを演じられる奴が現れた!」と監督に言わしめた彼は
その場その場でちょこちょこ現れて要領よくその場を切り抜けるキチジローがハマっていて微笑ましかった。
少年時代はカトリックの司祭を目指していたというスコセッシが、
長い月日をかけて撮っただけあって いやーこれは作品自体長いこともあるけど、見応えが大いにあった。
スコセッシ監督が最も伝えたいことは、「弱さを否定するのではなく、受け入れることの大切さ」。
日本人は信仰を持たない人が多い。 わたしも神という存在も、キリストも信じていないけど
戦国時代末期、当時の日本は今の日本よりもキリスト教信者が3倍ほどにも多い。
(総人口の当時、3パーセントがキリスト教信者(キリシタン)
そんな中で、キリスト教信者が弾圧され、1614年からは日本全国でキリスト教徒狩りが始まった。
形だけでも踏めばいい、と言いながらも どうしても信念を曲げられないものは処罰を受ける。
そして実際、キリスト教は日本で滅亡。
高校か中学の歴史の授業で習ったこの歴史を改めて映画として観ると、
滑稽ながらも事実、とんでもないことが起こってたんだと感じる。
踏み絵など、形だけでいいって言ってるんだから、踏めばいいじゃん、
そんなことで命を落とすよりマシ。って簡単に思えちゃうんだけど
信仰とはそんなものじゃないから。
簡単に棄教できれば命は助かるも、信念は捨てることになる。
この本の核である「それでも神は、黙って見ている」=「沈黙」している。
神は我々の犠牲になったのだから、とか、神がどこかで見てくれている、だとか
神はいつか思し召しをくれる、と本気で思っていた人々。
当時は何もすがるものもなく、どんな形でもいいから何かにすがらないではいられなかった時代だった
というのもわかる。
とにかく見応えがあるので、気になる人には是非観て欲しい1本。
窪塚洋介は、スコセッシ監督について「役者の意見を受け入れることができる懐の深い監督」と言っている。
スコセッシ作品はいろんなタイプの作品があって、一辺倒じゃないところが興味深い。
今後の作品もまだまだ楽しみ。
17世紀江戸初期、激しいキリシタン弾圧の中で棄教したとされる師の真実を確かめるため、日本を目指す2人のポルトガル司祭ロドリゴとガルペ。2人は長い旅の中継地であるマカオで出会った日本人キチジローを案内役に、やがて長崎へとたどり着いたが、彼らの目に映ったのは想像を絶する日本だった。信仰を貫くか、棄教し信者達の命を救うか― ロドリゴは究極の選択を迫られる。
公式サイト SILENCE
SILENCE 2017年 アメリカ=イタリア=メキシコ 162min
1月21日より、公開中〜
日本プレミアにて。