列車の窓から牧場が見えました。
放牧場に黒い肉牛が居ます。
白黒まだらなホルスタインではありません。
十勝平野で思い浮かべるのは酪農ですが、酪農は乳牛を育てて乳を搾る畜産業の一部門です。
なので、肉牛飼育は畜産業ですが酪農業ではありません。
酪農の酪は、「酉」【「液体を入れる器」の意が転じて「時間をかけて発酵させる」を意味する】と「各」【久(下向きに降りてくるの意)+口(固くなるの意)】をあわせた字で、数千年前に、西アジアで山羊の乳から作られたチーズなどの醗酵乳製品を意味する字が、全ての乳製品を意味するようになりました。
十勝川を渡ると、丘陵地を背にした緑の畑が続きました。
幕別駅を出た列車は6分後に利別駅に停車しました。
利別はすぐ傍を流れる利別川に由来します。
利別の名は、アイヌ語の「トウシぺッ(網・川)」とされ、十勝アイヌと釧路アイヌの境界争いで、十勝アイヌが河口に網を張って釧路アイヌを妨げたことに由来するそうです。
その利別川は、陸別町と置戸町との町境、十勝と北見の分水嶺である山岳地帯を源とする延長150㎞の一級河川です。
十勝川の延長が156kmですから、その長さは本流に引けを取りません。
次に列車は池田駅に停まりました。
現在の池田町付近一帯は以前、アイヌ語で「セイオロサム(貝殻・の処・の傍)」と呼ばれ、「凋寒(しぼさむ)」の字が当てられました。
そして十勝ワインには「セイオロサム」という銘柄があります。
しかし根室本線が開通し、徳川慶喜の五男が営む「池田農場」の敷地に駅が設置されて池田駅と命名、その後1926年の町制施行時に、町名を「池田」としたそうです。
そして池田町と言えば十勝ワインです。
列車の窓から「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」通称ワイン城が見えました。
十勝ワインは、当時町長だった丸谷金保氏の発案で開発されたワインで、1964(昭和39)年に池田町に自生する山ブドウから作られたワインが国際ワインコンペティションで銅賞を獲得し、注目を集めました。
その後、フランス産のセイベルという品種から、実付きの良い赤ワイン品種「清見」を選別し、山ブドウとの交配を重ね、耐寒性の高いワイン用ブドウの品種開発が行われました。
今では、全国のコンビニで十勝ワインを見かける程に名が知られています。
ちなみに、池田ワイン城の住所は、池田町清見83番地の4です。
更に、ちょっとトリビアな話題を二つ、
町長だった丸谷金保氏の長男の池田智保氏はセイコーマートの会長だそうです、北海道にセイコーマートが多い理由が分かりました。
そして、小説家の冲方丁が、2011年発生の東日本大震災原発事故で、福島市から一時池田町に避難していたことがあるそうです。
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