長閑な海の景色を眺めながら、列車は厚岸駅に到着しました。
厚岸の地名は、アイヌ語の「アッケシト(オヒョウニレ・下の・沼)」が由来だそうです。
オヒョウニレは北海道-九州、サハリン、東シベリアなどに生育するニレ科の落葉樹で、アイヌはこの木の樹皮から繊維を取り、アツジ(厚司)と称する衣類を作りました。
厚岸駅は花咲線の途中駅として唯一の有人駅です。
そんな厚岸駅のホーム横に、クロマツかもしれない木を見かけました。
厚岸は。慶長9年(1604年)に松前藩が交易の為のアッケシ場所を開設し、文化元年(1804年)将軍家斉の命によって官営国泰寺の建立を決定しています。
古くから和人が関わってきた土地ですから、和人によって、北海道にはないクロマツが持ち込まれた可能性を考えます。
列車は厚岸駅を出ると、吃水湖である厚岸湖の岸に沿って進み
暫く進んで、別寒辺牛(ベカンベウシ)湿原の南端を車窓に映し始めました。
湿原にアオサギらしい鳥を見たのですが、シャッターが間に合いませんでした。
環境省の資料に因ると、厚岸湖周辺で約240種の鳥類が確認され、100羽以上のオオワシ、オジ ロワシが越冬します。
また、厚岸湖岸、別寒辺牛川流域や支流の湿原で、例年約70つがい以上のタンチョウが繁殖するそうです。
列車は別寒辺牛湿原を流れるチライカリベツ川の畔を進みます。
チライカリベツ川の名の由来は「イトウ(幻の魚)・取る・川」です。
花咲線のパンフレットに使われていた写真はこの辺りを俯瞰した光景です。
こんな風景を見ると、カナディアンカヌーで湿原を巡りたい思いに駆られます。
そんな時突然、列車に急ブレーキがかかりました。
私は即座に運転席の横に駆け付けました。
シャッターは間に合いませんが、2頭のシカが線路から逃げる姿を目にしました。
かなりピンボケですが、湿原の中に、線路から逃れたエゾシカの姿を捉えました。
読売新聞のオンライン記事によると、シカの事故が多い花咲線、釧網線の一部列車で冬期に減速運転を行ったそうです。
シカとの衝突を避ける為に急ブレーキをかけ、車輪が損傷し、修繕で車両14両のうち8両が使用できないことがあったそうです。
そう言えば、2019年に青春18きっぷで稚内を往復したとき、ワンマンかーの運転手さんが、シカにぶつかると苦労すると話してくれました。
釧路駅でもらった、花咲線のパンフレットに、この辺りを含め、上尾幌、落石周辺(青紫色に塗られた地区)に、シカが多く出没することが紹介されていました。
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