上尾幌駅を出た列車はなだらかな曲線を描く丘陵地を進みます。
森に囲まれた牧草地が陽の光を浴びていました。
列車は尾幌と表示された駅に停車しました。
尾幌の地名は、アイヌ語の「オポロテッ(川尻の・大なる・かわ)」に由来します。
駅前広場に一台の乗用車が停まっています。
この駅に車を置いて、列車で釧路か札幌に出かけたのでしょう。
この駅は無人駅ですが、駅の花壇を赤いサルビアの花が飾ります。
厚岸町の関係者か、近隣住民のボランティアでしょうか。
朝と夕に、この駅へ女子高生を送迎する、ばあちゃんの姿が見えた気がしました。
列車が駅を離れる時、駅名表示板に隠れていた駅舎が見えました。
この駅舎は貨物列車の車掌車(ヨ3500形車掌車)で、1986(昭和61)年に設置されたそうです。
尾幌駅を出た列車の窓から、牧草地に草を食む馬の姿が見えます。
その背後に丘陵地が連なり、その後ろは太平洋です。
列車が走る場所は尾幌川が作る沖積低地(尾幌原野)の泥炭地です。
明治40年頃、尾幌駅の辺りから海への分水路を開削しました。
尾幌原野の排水を促し、尾幌川の氾濫原を農地に変えたのです。
列車は尾幌原野を国道44号と並走しながら根室を目指します。
列車が次の門静駅に停車する直前、車窓右手に砂利を敷き詰めた広場を目にしました。
皆さんはこれを何だと思いますか?
これは昆布の乾燥場です。
ということは、海はすぐそこです。
そして門静駅に停車しました。
門静は、アイヌ語の「モイスッ(入江・の根本)」に由来するそうです。
門静駅は無人駅で、洒落な雰囲気の駅舎に小さな待合所が付属します。
地図で確認すると、門静駅の北側を国道44号線が走り、300m程南側の場所に厚岸湾が浪を寄せます。
海辺に20~30軒程の集落が軒を並べ、湾に付き出す小さな漁港を認めました。
門静駅を出ると直ぐに、車窓に海が広がりました。
厚岸湾の先に、湾に接する厚岸湖を囲む丘陵地の一部が見えます。
振り返えれば、太平洋に突き出た尻羽岬(しれぱみさき)と仙鳳趾村の台地が望めます。
仙鳳趾村は、尾幌分水を町境として厚岸町に接する釧路町の村です。
つい最近、そんな仙鳳趾村の放牧地で、OSO18の名で怖れられてきたヒグマが駆除されました。
OSO18は2019年から標茶町や厚岸町で牛66頭を襲い、北海道庁が特別対策班を設置するほどの凶悪なヒグマでした。
そんなヒグマの住む牧草地の道を辿り、農道終点の駐車場から10分程歩いた岬の下にラッコやアザラシが暮らしています。
そんな仙鳳趾の海は夏でも海水温が低く、太平洋の潮の流れの影響を受けてプリプリの牡蠣が育ち、年間を通して、美味しい牡蠣を食べることができます。
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