Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

Cashmere

2020-02-22 | 生地
カシミヤは手触りが良いし軽いし柔らかいし...そう書くだけでイタリア人が挙げる良い服の条件と重なりますし、その価値を認めるにやぶさかではありませんが、偏重され過ぎるきらいがあったのも手伝って、「ウールで本当に良いものはそれに勝るとも劣らないですよ」という気持ちからあまり積極的に推してきませんでした。


川瀬巴水『鴛鴦』1950年

直接首に触れるマフラーなどはやはり質の良いカシミヤが手離せませんし、南イタリアの仕立屋さんが柔らかく仕上げたカシミヤ・ジャケットなんかは着てる事を忘れるようで、言うことがありません。ホーズに至るまで、たいてい何でも試してみました。

売る場合は着方やケア、耐久性を考えると、デリケートさゆえに苦慮します。
私共が想定しない、例えばバリスティック・ナイロンのショルダーバッグを肩にかけて穴が開きかけた、なんてのを実際に見ました。
(もちろん、これではウールでも穴があくのは時間の問題です)

またご存知のように、ここ25年くらいエスコリアル・ウールという並のカシミヤを凌ぐ細さの素材が現れ、生産量も質も安定してきています。


川瀬巴水 『真鴨』 1950年

少し前の記事のように昨秋カシミヤを探して以来クセになって、機会があれば見ています。
すると半年の間に3点ほど、眺めているだけで嬉しくなるような生地に巡り合いました。
グレードによってやはりエスコリアルもかなわない手触りで、春夏用で薄いにも関わらず打ち込みは強く、持ち重りする素材なんていう贅沢なのがあります。

F.アステアの歌に「干し草の中から針を探すようなもの」というのがありますが、色柄にこだわると、普通にバンチだけ眺めていてもこれはと思うものになかなか巡り会えなかったようです。
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ジャケット

2020-01-26 | 生地
生地はバンチで世界中に供給されるものが一般的ですが、限定数量をたまたまアナウンスをもらって発注できるというものがあります。

世界の著名な仕立屋から私のようなところまで、オークションではないので、基本的には通知をもらったところの早い者勝ちです。
作る時には時間をかけますが、生地の選択は人一倍早いほうで、発注した段階でもう入手した気でいます。
しかし昨年、国内では一番早い段階で発注したにも関わらず、海外の方がもちろん情報が早かったようで、何回か素晴らしい生地を逃し残念な思いをしました。



そう考えると、ちょっと大袈裟ですが入手できたのが奇跡のような生地...と言えなくもないのが画像のジャケットです。
もちろんそれを一目で気に入って頂き、注文して頂いたお蔭でかたちになりました。

基調はグリーンで、透明感のあるブルーやベージュ、明るいグレーなどの繊維がない混ぜとなり、光によっては多少濃くも淡くも見え、2色のペインとも好相性です。



仕事で関係して最も影響を受けたのは、親子ほども年齢の違う最早レジェンドのような方でしたが、美しい生地や良い服をお見せすると、しげしげと眺め「いいね」と呟いた後、来シーズンに活かす為、網膜に焼き付けるようにまた暫く眺めるのが常でした。
おそらくこの服もそう言ってもらえたのでは、と思うような何とも言えない色合いです。
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le week-end

2020-01-07 | 生地


年明け最初の週末、というか5日といったほうが早いと思いますが、お洒落な方をお見かけしました。
私より少し上くらいの女性でキャメルカラーのコートに鼈甲柄の眼鏡、近づくにつれ「あぁイディス・ヘッドに似てる」と思っていると、前から来る自分と同じような色のポロコートを着た男が見るからか、その目線は私の頭にいってたように見えました。
イディス・ヘッドは、グレース・ケリーの衣装をはじめ数々の映画で衣装を担当して8度オスカーに輝いた人です。
清潔感があって何気ない感じも、本でみるE.Hのイメージと重なります。

その方が衣装を扱う可能性が0とは限りませんから、遠くない所にイディス・ヘッドがお住まいかと無理にも妄想をかき立て、横に並んでも遜色ない例えばケーリー・グラントのみたいにコンプレックスを補完してくれる服とか、作ろうとするものにも力が入ります。

E.Hは自分のデザインが流行に取り入れられるようになっても、「私は流行を作り出したいわけではない、ただ女優たちの美しさを引き出したいだけ」と語ったそうです。
グレース・ケリーのウェディング・ドレスをぜひ担当したいと念願しながら叶わなかった話など伝説は、川本三郎さんの本がお薦めです。



何度も使ってるこのイラストですが、記憶の中では手前のスーツは普通のグレー・ヘリンボーンのイメージでした。
よく見直すと隣り合う柄がイーブンでなく、だいぶ違ってます。
似たのがありましたが、やはり頭の中ではこれでなく普通のヘリンボーンだと言ってます。


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Coating Fabrics

2019-12-25 | 生地
Chestnuts roasting on an open fire
Jack Frost nipping at your nose
Yuletide carols being sung by a choir
And folks dressed up like Eskimos

静かな店に、顔はコワイが声は優しいアーロン・ネヴィルのクリスマス・ソングが流れています。

というわけで「寒いですねェ〜」と挨拶して、薄着のエスキモーくらい厚着してますが、全国的には暖冬だそうで、スキー場は雪がなくて悲鳴をあげているそうです。
そう言われたのでは仕方ありません。
ただ年末年始は北から冬将軍がやって来ると言います。
箱根駅伝はどうなることでしょう。



右のようなダイアゴナルで良い色は、最近のものではほとんど見ません。
替わりに、毎度おなじみのヘリンボーンを引っ張ってきました。




忘れていましたが、これは20年くらい前のLoro Pianaのカシミヤ100%生地。
オーソドックスなダイアゴナルに、やはりトーンを抑えたネップが散らしてあります。



投稿するのを忘れていて、後から投稿したものです。
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プレゼント

2019-12-23 | 生地
今年は、異業種の方と話していてちょっと為になることがありました。
直接的ではありませんが、こうしたらダメだったとか聞いてると、仕事の外堀を補強してもらったように思えました。

この仕事の醍醐味は、例えば素晴らしい色柄・素晴らしい質感の生地が最適な芯をだいて、見るからに柔らかそうな優雅なロールを描いて出来上がって来た時などがそうです。

同業者と話していたら、「何かいい生地の時に不出来なことがある」なんて聞いて、それはもちろん期待値が高まっていたせいもあるかも知れませんが、良い生地(及び作る人)に敬意をはらっている私だったら泣きますね。
量は少ないですが、私が扱う素材は高い安い関係なく100%良いと思うものですから、適切に扱ってもらえるよう念じます。

そんな風にして、誤差許容範囲±1.0cmなのに0.5cmのことで悩んだり、無駄なことに念を込めて、出来上がってくると今年も素晴らしい瞬間がありました。
そして試着の段になり仕上がりが間違いないことを確認いただくと、安堵とともに単純にお役に立てたかなと思います。
着心地・見映えを実感して頂くのは日常のことになろうかと思いますが、残念ながらその瞬間には立ち会えません。


プレーンなものにも、その良さがあります。
(お客様のご好意により、出来上がりを撮影させて頂きました)

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Loden green

2019-12-17 | 生地
何だか妙に暖かい日がありますが、12月も半ばを過ぎました。
師走という感じは薄くとも、冬らしさは日々増しているように感じます。

冬に思い出すのは、前にも書いたある年のフィレンツェの光景です。
狭い階段を登ってドゥオモの頂上からの眺望に脚をすくませたり、ピッティ宮殿やウフィツィを観たり、中心地をフラフラしていると、顔見知りの商店主もまたよく散歩してるのに出会いました。
「こんにちは、店来ます?」
「じゃ、昼食後に!」
昨日も会ったばかりなのに。



その頃プリンチペのあった場所は、前に少し空間があって、とても寒いのにメリーゴーラウンドがあったように思います。
ドゥオモの方からジッリの前をレプブリカ広場に入ろうとすると、記憶の中では一瞬静止画になったように感じました。

左右から来る男も女も思い思いのコート(膝がかくれる丈)を着て、その中の一割がローデンコートを着ていたイメージですが、実際にはもっと少ないかも知れませんし、ローデンの色も紺やキャメルの人もいます。

グリーンも浅いのや深いのと一様ではありませんが、申し合わせたように真っ赤か黄色で襟元をかため、この時ばかりは装束のように他人と一緒でも気にならない様子でした。

行き交う人の着ているものが調和して、一枚の絵のような光景は一瞬のことで、残念ながら写真がありません。
知り合いの方々がローデンコートを着る季節になると、記憶を反芻します。



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映画「婦系図」

2019-12-09 | 生地
シリアスなのはふだん身体が受けつけないので、すすんでは観ないのですが、先日なぜか三隅研次監督 市川雷蔵・万里昌代主演「婦系図」(1962)というのを観ました。

「オツタ・チカラ」とか、「別れろ切れろは芸者の時にいう言葉」とか、それぞれ聞いたことはありましたが、それが泉鏡花原作のこの話だったのは知りませんでした。
それがまた、とても泣けるんですねぇ。

じゃ観てみようという方がいらっしゃるといけないので、それ以上書けませんが、ご覧になって「なんだ全然泣けないじゃないか」という方もいらっしゃるかもしれません。
通販のCMじゃありませんが「あくまでも個人の感想です」ということで、その時はご容赦ください。

バランスを取ろうという訳ではありませんがちょうど長谷井さんのところで先週末、映画を観て飲んで語り合うという集いがあって、気のおけない方々とのおバカな話で「婦系図」で抱えた不憫さを相殺してもらいました。

もう出来上がった頃、たぶんアストラカンって言いたかったんだと思いますが、誰か若い人が言った造語のようなカタカナの響きがおかしくて、翌朝仕事に向かいながら反芻しましたが、何せ聞いたことのない言葉なので一向に思い出せません。
思い出せたらそれを今日のタイトルにしたかったのですが、残念です。



タイトルと違って男性ばかり。
もちろんその日「婦系図」は映しませんでしたが、無理矢理よせるならば、お蔦役の万里昌代さんは白井さんと同じ生年らしいです。
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Brown suit

2019-12-01 | 生地


このイラストのスーツは転載されたものの中にもっとベージュっぽく写っているものもありますが、オリジナルのEsquireではこのような茶色に描かれています。

1935年のキャプション。

『あなたのビジネスが何であれ、すべての人が売り込めるものがありますーそれはあなた自身です。
自分を売り込むにはまずこの絵のような説得力のあるスーツを着てみてはいかがでしょうか?
スマートな服装ですが、嫌味のない程度に抑えたピーク襟の三つボタンのシングルスーツです。
襟は一番上のボタンまで返され、真ん中のボタンでとめるようになっています。
ポケットはフラップなしです。シャツは濃いめの黄褐色で幅広の襟がついています。
ネクタイは黒地に白の水玉、靴は黒のブルーチャー型の一種です。
ついでですが黒と茶のコンビネーションは最近とてもスマートな組み合わせとして好まれています。』



今日のビジネスシーンで見ることの稀な茶のスーツを、キャプションにあるような「説得力」というかどうか分かりませんが、21世紀に入ってあまりに画一的になり過ぎていましたから、自由度の高い立場の方々で好きな方には、トライしていただけたら徐々に景色が変わることでしょう。
この生地はイラストに寄せていますが、茶でも少しグレーのトーンが入った方が違和感なくお召しになれるかもしれません。

また、L.フェロウズが描いた多くのコーディネートは今日でも十分通用する要素を持っていると思いますが、このコーディネートはちょっと普遍性に乏しいと感じます。
描かれた黄褐色のシャツやベージュのシャツは、肌の白い人でも顔色や他のアイテムを必ずしも引き立るとはかぎりません。
茶に黒靴というのも、生地のトーンにグレーの要素がないと難しいと思います。
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Heavy Irish Linen Jacket

2019-11-24 | 生地
久しぶりにBlues Brothersのファースト「Briefcase full of blues」を聴いて、腕利きのバンドの巧さにあらためて感心しました。
メンバーはスティーブ・クロッパー、ダック・ダンのMG'sの二人を中心に、その頃引っ張りだこでこのライブの日も快調だったスティーブ・ジョーダン、ギターのマット・マーフィー、そして普段はスタジオの仕事で鍛えられた人たちで、当時人気の番組から出た企画でなかったら顔を合わせることのないメンバーだったでしょう。
大人がみんな本気で遊びに取り組んでいるような面白さがあります。

このバンドだったら誰が歌っても良く聴こえるんじゃないかというほどですが、ジョニー・テイラーをマッチングさせていたら名盤が出来たのではと想像しました。



上は以前ご紹介したL.バルベラのコメントです。
この季節になるとツィードのことばかり考えて忘れていましたが、上掲のコメントにインスピレーションを得て、アイリッシュリネンのジャケットを作りました。

これから春を迎えるというまだ寒い時期に麻を着る...というのにヒントを得て、素材感のあるちょっと重い英国生地を以前取り寄せていました。
生地を厚くしてしまうと、夏がまたやって来ることを実感するというバルベラ氏のニュアンスと外れますが、夏の平板な生地にはない面白味のある素材です。
もちろん他に夏にも着られる重めのもご用意できますが、画像の生地は夏に向かないようなウェイト。



素材では遊んでいますが、作りはシュランクからすべて手抜きなく真面目に時間をかけて、他の製品と同じく定評ある岩手花巻の工房での縫製です。
アイリッシュリネンの色は真っ白でなく、生成りのような色合い。
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柿色

2019-11-23 | 生地

Illustrated by Charles F. Peters.

八百屋の店先に数種の柿が並んでいます。
地味なルックスのせいか、味なのか、子供の頃は好んで食べていたとも言えません。
大人になって奈良で初めて「柚子巻き柿」を食べて、他の干し柿も食べるようになり、その後に生も毎シーズン食べるようになった気がします。

更に、たいていのイタリア人が熟してからスプーンで食べるものだと思っていると教わってから、ちょっと放置しておくとすぐ熟してしまうのもあって、食べ方のバリエーションが広がりました。

前にも書きましたが、イタリアでも「カーキ」と言い、語尾が「i」なのでイタリア人はイタリア語の複数形だと思いこんでいる人も多いそうですが、日本語の「柿」から来てるのでした。

そんなわけで、この季節は柿の葉寿司をみても、落葉を見てもツィードの色の組み合わせに見えてしまいます。



落ち着いたベースの色に配された柿色(オレンジ)が、暖か味を増してます。
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Lovat green

2019-11-21 | 生地
先週末イベントがあったのに、それに合わせたように風邪をひいてしまいました。
当日は立っているのもしんどいくらいでしたが、ようやく落ち着いてきました。
午前中暖かかったのに午後急に下がったり危険がいっぱいです、皆様もどうぞご自愛ください。



1930年代のエスクァイアを眺めていると、Lovat tweedとかLovat greenとかの文字を見つけることが出来ます。
日本ではHarris TweedやDonegal Tweedに比べるとずっと知名度が低いと思いますが、すでにその時代から欧米では色を例えるのに"lovat green"と言えば、イメージが伝わったらしいことが推測されます。

上はL.フェロウズやL.サールバーグと同じかそれ以上、エスクァイア誌で描いていたロバート・グッドマンのイラストで、他の人が描いたのはあまり見かけませんが、まさにLovat greenかというスーツが描かれています。

今回はイラストのイメージにぴったりの生地がありました。
基調となる色はグリーンとブルーで構成され、他の繊維が混じって微妙な奥行を感じさせます。
実際のこの手のバンチには、もう少しモスグリーンに近い色合いの方がバリエーション豊富です。



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Brown Jacket

2019-11-10 | 生地


『アメリカが1930年代に初めてオックスフォード、ケンブリッジファッションの影響を受けて以来ずっと大学生の間で変わらない人気を誇っている、ブラウンのジャケットとグレーのフランネルのズボンの組み合わせです。
もちろんこのバリエーションもいろいろと考えられます。
この絵の学生はV字襟、三つボタンのシェトランドジャケットを着ていますが、柄は濃い大きめの格子縞で、フラップのついたパッチポケットがついています。それに重要なのはサイドベンツが入っている点です。

この組み合わせを完璧にしているのはアタッチカラーのついたブルーと白の縞のオックスフォードシャツ、ストライプの入ったクロッシェのタイ、ブルーのカシミヤのベスト、茶のフェルトのスナップブリム帽、それに茶のスエードの靴です。
この絵の学生はブルーチャータイプの靴をはいていますが、バックスキンのブローグタイプでももちろんかまいません。
このカジュアルなアンサンブルはカレッジ服として最適なばかりでなく、カントリーウェアとしても非常に適した組み合わせといえます』

(アパレル・アーツ1934年秋号のキャプション)



イラストに描かれた茶も良いですが、まったく同じイメージのものがすぐ見つからなかったので、ちょっと気になっている色の組み合わせをご紹介します。
全体のトーンはカーキっぽいですが紺のペインとうまく合っていて、これも良い味だと思います。
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グレーヘリンボーン

2019-11-04 | 生地


1936年のキャプション。
『抑えた地味な服装にもなかなか捨てがたい味があります。
この杉綾織りの生地は昔からある丈夫なウーステッドで、長い襟のダブルスーツに仕立てられています。
このスタイルは一時は特異なものと見なされていましたが、今ではエレガントなトラッドスタイルの一つと考えられています。
黒のネクタイの強さが白い真珠のネクタイピンとオックスブラッドのマドラスシャツによって和らげられています。胸ポケットにさされた無地のハンカチがエレガントな雰囲気をより一層強調し、幅の広い襟が装いにおもしろさを添えています。
これにグレーかブルーのオーバーコートと、黒のハンブルグ帽を加えれば完璧です。』





前回の生地とは異なり、糸が引き揃えられ、柄も整理されたようにクリアな印象を受けるかと思います。
ヘリンボーンの幅によっても、多少印象が変わるかも知れません。

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Gray herringbone

2019-11-02 | 生地


昼間20℃以上あったのに、帰る頃には風が冷たくなってきました。
ようやく、ボリュームのある素材にふさわしい季節がやって来ます。

初めてのツイードジャケットはグレーのヘリンボーンだった、という方もいらっしゃるかと思います。
また紺やグレーでピッチの狭いヘリンボーンのスーツを、昨日仕事でお召しだったかも知れません。
馴染みのある、代表的な柄の一つです。

このL.フェロウズのイラストは、誇張され過ぎているのではと思うくらいピッチが広く描かれているグレーのヘリンボーンスーツ。
下の画像は、一般的なジャケットに使われる甘撚りで厚みを感じるものでなく、風を通さないくらい目の詰まった生地で、不均一な糸と霜ふりの濃淡が見慣れた柄に奥行きを与えていて表情があります。


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Coat of many colors

2019-10-10 | 生地
エミルー・ハリスも歌っている「Coat of many colors」という曲があります。
オリジナルは、リンダ・ロンシュタットとトリオを組んだこともある、ドリー・パートンの歌だそうです。
最初は何を歌っているか分かりませんでしたが、よく聴くと「今年はどんな色のコートかな...」なんていうのではなくむしろそのまま、日本の歌に例えると「おふくろさんよ、おふくろさん...」でもないし、ご興味ある方は動画を見て頂くのが早いです。



画像はウィンザー公の遺品がオークションにかけられた時のカタログからで、ワードローブの端切れか、気になったものを集めていたものか分かりませんが、"town clothes"とか"sports clothes"とタイトルが付されています。


(ウィンザー公のクローゼット)

ネタばらしになってしまいますが、冒頭の曲は「コートはカラフル」という邦題もあるそうで、パッチワークのコートのことでした。
「子供にコートを買えなかったお母さんが、ハギレをパッチワークにしてコートを作ってくれた」というD.パートンのほぼ実話に基づいた歌だそうで、その後TVドラマ化もされDVDにもなっているそうです。
全部聴いて頂くと、涙ありでもカラっと明るいところがこの歌の後味の良さです。
ただD.パートンのカッコと歌のギャップを、いつも私の脳がうまく処理しきれません。

前にも引用しましたが、パッチワークというと...
以前取り上げたことのある「汝の父を敬え」を書いたゲイ・タリーズが、昔エスクァイアに寄稿した父親の話です。

南イタリア出身の父は昔の職人が皆そうであったように、子供の頃から見習いに出ました。
親戚のアントニオ・クリスチャーニという男がパリに出した仕立屋に入ると、同僚にはエマニュエル・ウンガロという男もいて腕を競ったと言います。
しかし1919年新天地を求めてアメリカに渡ると、ヨーロッパと異なり美しい仕立服を求める男がほとんどいない現実を突きつけられ、需要のあった婦人服へと転換します。
やがて事業で成功するも父はそれで満たされることはなく、知人の紳士服を仕立てる時だけが唯一の楽しみだったようで、繊維の供給が制限された第二次大戦中にはサンプル・ブックの生地をかき集め、きれいな配色になるよう並べて縫い合わせると、それでジャケットを仕立て、街を散策していたとタリーズは回想しています。

これも何度か書きましたが、そのクリスチャーニという仕立屋は後年ゲーリー・クーパーやモーリス・シュバリエを顧客としてかかえドゴールから勲章を受ける等、政財界で知らぬ人がいないほど成功したパリのイタリア人でしたが、後継ぎ不在で閉店してしまいました。
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