11月の読書メーター
読んだ本の数:33
読んだページ数:10976
ナイス数:3739
残星を抱くの感想
ドライブの途中、峠の展望台で暴行事件を目撃した青沼柊子は、暴漢たちに追いかけられるが何とか逃げ切る。夫は県警捜査一課の刑事だが、正直に話すことができない。その後自宅マンションに脅迫状が投函されたり、謎の女に尾行されたり。夫は何者かに自殺を装って殺害。謎が深まり読むスピードは上がって…、しかし、柊子さんのスーパーウーマン振りだけが印象に残り、結末はうーん。。ま、面白かったんだけどね。
読了日:11月01日 著者:矢樹純
クローゼットファイル 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介の感想
仕立屋探偵シリーズ第2弾。布に残された痕跡から迷宮入りした事件を解決に導く。「攻撃のSOS」の親が酷すぎて怒りを覚え、「ルーティンの痕跡」は気持ち悪くて震える。八木橋さんが加わりますます面白くなった!
読了日:11月02日 著者:川瀬 七緒
ラベンダーとソプラノの感想
歌うことが大好きな真子は学校の合唱クラブでアルトのパートリーダーをつとめている。去年、コンクールで金賞を逃した合唱クラブは「今年こそ金賞を」と練習にも力が入るが、いつしかクラブの雰囲気は悪くなり、不協和音になってゆく。そんなとき出会ったボーイソプラノの朔と商店街の半地下合唱団。小学生の揺れる心、いろんな頑張り方を大人や朔たちから学び、ハッキリと合唱クラブの顧問の教師に意見を言い切った真子。良い本でした。大人にもお薦めな1冊です。
読了日:11月03日 著者:額賀 澪
噓つきジェンガの感想
詐欺犯罪を描いた3編。2020年のロマンス詐欺=コロナ禍で山形から上京し行き詰まった大学生が危ないバイトを持ちかけられて。五年目の受験詐欺=次男の受験を不安に思う気持ちにつけこまれた主婦。あの人のサロン詐欺=覆面作家に憧れ本人に成り済ましたアラサー女子、ある日本人が起こした下着泥棒事件と成り済ましの顛末。どれも目が離せないハラハラ感と結末の意外な爽やかさ。流石は辻村深月、面白かった!
読了日:11月04日 著者:辻村 深月
祈りも涙も忘れていたの感想
犯罪認知件数が全国ワースト5に入るV県警の捜査1課に俳句された新人キャリア警察官の甲斐彰太郎。管理官として陣頭指揮を執る甲斐、部下のノンキャリアの警察官たちからの冷ややかな扱い。放火事件、殺人事件が連続し、黒幕を追う甲斐の身にも危険が迫る。裏切りものは誰なのか?ハードボイルドジャンルにしては少し甘め、でも楽しく読了。
読了日:11月05日 著者:伊兼 源太郎
ハロー・グッドバイ 東京バンドワゴンの感想
堀田家の春夏秋冬も歳月を重ね、勘一さん88歳・我南人69歳に。お隣の増谷会沢家の解体新築工事で新しい出会いがある。カフェあさんが夜間営業を始めたり、亡き秋実さんのエピソードもあり。イギリスで暮らしていた藍子とマードックの帰国が決まったり。かずみちゃんに寄り添う決断をした池沢さんも。幼かったかんなちゃんと鈴花ちゃんの成長も楽しめ、このシリーズは毎年楽しみ。
読了日:11月06日 著者:小路 幸也
おいしい旅 想い出編 (角川文庫)の感想
アミの会・おいしい旅想い出編。15年ぶりに再会した友人たちと京都で、30年ぶりの神戸三ノ宮、親友と巡る赤羽のカフェ、懐かしい天ぷらそば、生まれ育った家がゲストハウスに、ケンカ別れした友人との思い出のミュンヘン、83歳の女性を生まれ故郷の横浜へ案内する旅。7編すべて美味しそうで素敵な物語、柴田よしきさん・福田和代さん・矢崎在美さん・大崎梢さんが特に良かった!
読了日:11月07日 著者:秋川 滝美,大崎 梢,柴田 よしき,新津 きよみ,福田 和代,光原 百合,矢崎 存美
きよのお江戸料理日記 (アルファポリス文庫)の感想
秋川さん初の時代物シリーズがスタート。逢坂の油問屋に生まれた“きよ”は双子であるため[畜生腹]と忌み嫌われ屋敷の奥でひっそりと暮らしていたが、弟・清五郎が江戸へ出ることになり世話係として共に行くことに。奉公先は料理屋「千川」、清五郎は配膳係、きよは下働きとして働く日々、ひょんなことからきよの料理が店で出されることになり、きよは料理人へと。きよは出自のためか自己肯定感が低く、清五郎は甘過ぎるが、二人の成長譚として続きは楽しみ。
読了日:11月08日 著者:秋川 滝美
きよのお江戸料理日記 (2) (アルファポリス文庫)の感想
きよは料理人として一生懸命に励んでいる。川を流される女性を助けたり、世話になった上田家にきんつばを持参する。突然「千川」に現れた男は、上方で修行していたはずの主の次男坊・彦之助、きよを目の敵にし執拗に嫌がらせを。きよの体調不良にハラハラ。彦之助が何故突然家に戻ったのか、原因を知り、きよの心も晴れる。さて、この先料理人としてどう成長してゆくのか?次も楽しみ!
読了日:11月08日 著者:秋川滝美
睦家四姉妹図 (単行本)の感想
睦家の4姉妹、貞子・夏子・陽子・恵美里。昭和の終わりから令和まで、お正月2日の母・八重子の誕生日に実家に集まり記念写真を撮る。姉妹各々個性豊か、結婚や出産・離婚で折々変化があり、やがて親の老いと終活へ。戸塚区原宿の家からUR住宅に。わちゃわちゃと賑やかな睦家の姿が何ともホッコリとして良かった。
読了日:11月09日 著者:藤谷 治
油絵は謎をささやくの感想
大学教員の小宮山香織の元に教え子星野はるかから持ち込まれた依頼は、高橋由一の絵画の真贋鑑定。明治時代に描かれたその絵は、山形県天童市の旅館が所蔵し、博物館に購入される予定だったが、贋作であるとのクレームがあり、公聴会が開催されることになった。絵画にまつわる謎と明治の悲しい女性失踪事件。1枚の絵画に込められた闇が明かされる公聴会の香織の意見陳述は読み応えあり。楽しく読了。
読了日:11月10日 著者:翔田 寛
最後の鑑定人の感想
ある事件をきっかけに科捜研を辞め、民間の鑑定所を開設した土門誠。鑑定の腕は超一流ながらかなりの変人。不可解な事件を実験データから読み解き、解決へ導く。「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です。」遺された痕のDNAの謎、真犯人の気持ち悪さに震えた。これはシリーズになるかな?土門・高倉のコンビは中々良い。ハーブ水は飲みたくないけど。
読了日:11月10日 著者:岩井 圭也
おべんとうの時間がきらいだったの感想
サラメシのお弁当ハンター阿部了さんの奥さま直美さんのエッセイ。かなり強烈な両親の元に一人娘として生まれた直美さん。物心がつく頃から暴君のように家族に君臨する父と、父に従うだけの母。そんな直美さんは家族から逃れるために高校時代に米国カリフォルニアに留学し、大学卒業後、了さんと結婚しお弁当ハンターに。子育てしながらの取材旅、歳老いた両親との関わり方。良質なエッセイ、大満足。
読了日:11月11日 著者:阿部 直美
ぼくたちはまだ出逢っていない (teens’ best selections 62)の感想
母の再婚で岡山から京都に越してきて家に馴染めない中2の美雨。イギリス人の父を持ち学校でイジメに遭っている中3の陸。それぞれが自分の居場所や目標を探してたどり着いた[漆]。金継ぎを通して変わって行く中学生たちが清々しい。YAジャンルの本ですが、大人にもお薦め!そして装丁が素晴らしいのです。3人の中学生をつなぐ金継ぎ、素敵過ぎます!
読了日:11月12日 著者:八束 澄子
ラブカは静かに弓を持つの感想
静かな感動でページを閉じて余韻に浸っています。音楽の著作権を管理する会社に勤める橘樹は上司から音楽教室への潜入調査を命じられた。少年時代のトラウマで遠ざかっていたチェロ、講師・浅葉とのレッスンの情景、教室の仲間たちとのふれ合いでチェロへの向き合い方や心の安定が増す一方で、社命のために情報を探ることへの罪悪感と葛藤。孤独な樹が最後に手にしたものに安堵、大満足の1冊でした。お薦め本!安壇美緒さん初読み。
読了日:11月13日 著者:安壇 美緒
カレーの時間の感想
偏屈で3人の娘とその孫娘たちに嫌われている小山田義景83歳。1人で暮らす義景と突然同居することになった孫の男子・桐矢25歳。強烈な祖父と気弱な孫をつなぐのはかって祖父が勤めていた食品会社のレトルトカレー。祖父が秘密にしておきたかった事実、やはり言葉にしなければ伝わらないと思った。
読了日:11月13日 著者:寺地 はるな
アナベル・リイの感想
悦子のひとり語りで物語は進む。舞台女優の千佳代は悦子を慕い特別な友人になるが、恋人の飯沼と入籍して間もなく急死してしまう。悦子が飯沼への恋ごころを解き放つと千佳代の亡霊が現れるように…。飯沼に想いを寄せる女たち、バーのママ・多恵子や仕事先の女・順子を不慮の死へと。最後は悦子を裏切った飯沼まで。悦子なら飯沼とくっついても良かったのか?怖さよりこの世に想いを残して早世した千佳代の悲しさを感じた。
読了日:11月14日 著者:小池 真理子
Yuming Tribute Stories (新潮文庫)の感想
ユーミンデビュー50周年。6人の作家により名曲から生まれたストーリー。小池真理子「あの日に帰りたい」桐野夏生「DESTINY」江國香織「夕涼み」綿矢りさ「青春のリグレット」柚木麻子「冬の終り」川上弘美「春よ、来い」夢中でユーミンを聴いていた若い頃、[MISSLIM]や[コバルトアワー]は特に思い出深い。小池さん、江國さんが良かったです。
読了日:11月15日 著者:小池 真理子,桐野 夏生,江國 香織,綿矢 りさ,柚木 麻子,川上 弘美
星屑の感想
面白かった!歌謡曲全盛期、福岡の田舎から才能を見出だされて上京したミチルと大手芸能事務所の専務の娘・真由、そしてマネージャーの桐絵がスターを目指して行く物語。当時のスターたちや作曲家、歌番組などを想像しながらの読書。分厚いのに村山さんの文章は読みやすく、先が気になり一気読み。
読了日:11月16日 著者:村山 由佳
エール 名もなき人たちのうたの感想
突然球団から戦力外通告を受けた窪塚夏樹。トライアウトに挑むがどこからも声はかからず。夏樹に救いの手を差しのべたのは社会人チーム・トクマルホールディング=居酒屋「徳丸水産」野球部。社員として働きながら野球を続けるが、野球しかしてこなかった夏樹には戸惑うことばかり。そんな彼らに容赦なくコロナ禍が襲いかかる。目指せ都市対抗野球・東京ドームの晴れ舞台。その先に待つプロへの道。面白かった。
読了日:11月17日 著者:朝倉 宏景
孤立宇宙の感想
小惑星の衝突で滅亡の危機を迎えた地球。他の星への移住を目指したり全国各地にシェルターを作り生き残りをはかるもの。メガインパクトは想定以上のダメージを地球に与え世界中のシェルターは対立し分断した。肉体は滅んでも意識は残る世界、何度も生き返り巡り合う世界。読みにくいわけではないけれど、苦手な分野なので苦戦。
読了日:11月19日 著者:熊谷 達也
父の声 (文春文庫 こ 15-2)の感想
東京で暮らす一人娘ののぞみが婚約者の本間を連れて帰省したが、父・順治は娘の変化と本間の人間性に違和感を持つ。心配になった父が娘の周辺を調べると薬物に手を染めていることが判明。どうにかして薬を止めさせたい父の思いが娘に伝わらないことにイライラ。最後は父の声がのぞみに届いて安堵。軽い気持ちや興味本位で薬に近づいたら駄目!君子危うきに近寄らず。麻取の篠田さんの声ものぞみに届いて良かった。
読了日:11月19日 著者:小杉 健治
小さき王たち 第三部:激流の感想
政治家田岡と新聞記者高樹の50年にわたる因縁。孫の世代は新潟の地方テレビ局の記者と東日新聞の新潟支局の記者。まさかそう来るか?の結末は面白く一気に読破。確かに幼なじみの喧嘩が周りを巻き込んで大きくなってしまい引っ込みがつかなかったのかも?田岡も高樹も小さな世界にとらわれていたのだろう。三部作、大満足。
読了日:11月20日 著者:堂場 瞬一
清浄島の感想
戦前から日本最北の離島・礼文島で相次いだ[エキノコックス症]。昭和29年、単身島に派遣された動物学者の土橋義明。島民を苛む病を撲滅させるため奮闘する土橋。島の美しい風景や純朴な人々の暮らし、土橋の苦渋の決断は果たして正しかったのか?命を考える重厚なテーマは河崎さんならではの作品。寄生虫は恐ろしい。
読了日:11月22日 著者:河﨑 秋子
リバーの感想
群馬県と栃木県境を流れる渡良瀬川。その河川敷で相次いで起きた若い女性の殺人事件。10年前にも同じような連続殺人事件があり、未解決のままだった。10年前に容疑者となり証拠不全で不起訴になった池田。彼が本ボシだと粘り強く追う元刑事、群馬・栃木両県警の若い刑事たち、サツ回りの女性記者、10年前に娘を殺害された父親。真犯人は誰なのか?最後までヒリヒリする思いで読了。骨太の警察小説、648頁圧巻の読後感。
読了日:11月23日 著者:奥田 英朗
珈琲屋の人々 心もよう (双葉文庫 い 42-07)の感想
東京下町の喫茶店「珈琲屋」、マスターの行助はとある理由で人を殺めた過去がある。店の扉を開くのは心に闇を持つ人、今作では商店街におでん屋を開いた理央子と行助を兄貴と慕う順平が軸に。幼なじみで女好きの島木、元恋人の冬子とのやり取りは相変わらず面白い。さて、そろそろ冬子と行助の仲が進んでくれないかな?
読了日:11月24日 著者:池永 陽
ショートケーキ。の感想
ショートケーキをめぐる5つの短編集。親の離婚でホールケーキが食べられなくなった2人の女の子、彼女らがケーキを買いに訪れるケーキ屋のアルバイト・カジモトくん。カジモトくんを見守る先輩店員・上田さん。初めての子育てにままならない日々を過ごす3人のママの[ごじょ]、経理のカジモト姉に憧れる会社員の央介くん。真っ白な生クリームと真っ赤なイチゴ、この本を読んだらショートケーキが無性に食べたくなること間違いなし!
読了日:11月25日 著者:坂木 司
竜血の山 (単行本)の感想
昭和13年、北海道東部の山奥で自然水銀の湧く鉱山が発見された。水銀に耐性のある「水飲み」と呼ばれ代々この地で生きてきた一族のアシヤと、鉱業所所長の息子那須野源一の戦中から戦後の30年を描いた壮大な物語。水銀に愛されたアシヤと水銀に魅せられた源一。戦争・差別・殺人や失踪、そして公害問題。中々読みごたえのある1冊。
読了日:11月26日 著者:岩井 圭也
ランチ酒 今日もまんぷくの感想
シリーズ第3弾。祥子の仕事終りのランチとお酒、どれも美味しそう。角谷との間柄も進展し、元夫のもとに居る一人娘に異母兄弟が。夜に見守りを依頼する人にはみんな一言で言えないような理由があり、祥子にもかなりストレスがかけるのだろう。しかし角谷にどことなく不穏なものを感じるのは私だけなのか?
読了日:11月26日 著者:原田ひ香
看守の信念の感想
このプロローグはどこに繋がる?そこに来たか!加賀刑務所の火石刑務官シリーズ2作目、前作もラストで驚かされたけど、こちらも驚きで大満足。お薦めです!
読了日:11月27日 著者:城山 真一
烏の緑羽の感想
あの衝撃的な前巻のラストと中々ストーリーが繋がらずモヤモヤしながらの読書。長束の配下・路近の理解し難い性格とお目付け役の翠寛や頸草院の教官・清賢。物語が動くのは終盤、さて6年の歳月は山内をどう変えるのか?次巻、早く読みたい!!
読了日:11月28日 著者:阿部 智里
空をこえて七星のかなたの感想
星や宇宙をモチーフにした7つの物語。一見バラバラなストーリーかと思いきやラストで明かされる各々のつながり。寺地北斗・舞亜夫妻と一人娘の七星家族を中心に時間軸をバラバラに編んだ物語は爽やかで素晴らしかった。大地震で瀕死の少年が主人公となった『孤舟よ星の海を征け』が強く印象に残った。お薦めです!
読了日:11月29日 著者:加納 朋子
老人ホテルの感想
生活保護で暮らす大家族から逃げて埼玉大宮のホテルで清掃員をしている日村天使は、かつてキャバ嬢をしていた時に知り合った綾小路光子と再会する。光子に生きるノウハウを学ぶ天使に希望を感じながらの読書は、ラストで一捻り…。うーん、このラストはちょっとモヤモヤする。不動産投資かあ…、自分には全く縁のない世界だな。天使の母親に光子が啖呵を切るシーンはスッキリ!
読了日:11月30日 著者:原田ひ香
読書メーター
読んだ本の数:33
読んだページ数:10976
ナイス数:3739
残星を抱くの感想
ドライブの途中、峠の展望台で暴行事件を目撃した青沼柊子は、暴漢たちに追いかけられるが何とか逃げ切る。夫は県警捜査一課の刑事だが、正直に話すことができない。その後自宅マンションに脅迫状が投函されたり、謎の女に尾行されたり。夫は何者かに自殺を装って殺害。謎が深まり読むスピードは上がって…、しかし、柊子さんのスーパーウーマン振りだけが印象に残り、結末はうーん。。ま、面白かったんだけどね。
読了日:11月01日 著者:矢樹純
クローゼットファイル 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介の感想
仕立屋探偵シリーズ第2弾。布に残された痕跡から迷宮入りした事件を解決に導く。「攻撃のSOS」の親が酷すぎて怒りを覚え、「ルーティンの痕跡」は気持ち悪くて震える。八木橋さんが加わりますます面白くなった!
読了日:11月02日 著者:川瀬 七緒
ラベンダーとソプラノの感想
歌うことが大好きな真子は学校の合唱クラブでアルトのパートリーダーをつとめている。去年、コンクールで金賞を逃した合唱クラブは「今年こそ金賞を」と練習にも力が入るが、いつしかクラブの雰囲気は悪くなり、不協和音になってゆく。そんなとき出会ったボーイソプラノの朔と商店街の半地下合唱団。小学生の揺れる心、いろんな頑張り方を大人や朔たちから学び、ハッキリと合唱クラブの顧問の教師に意見を言い切った真子。良い本でした。大人にもお薦めな1冊です。
読了日:11月03日 著者:額賀 澪
噓つきジェンガの感想
詐欺犯罪を描いた3編。2020年のロマンス詐欺=コロナ禍で山形から上京し行き詰まった大学生が危ないバイトを持ちかけられて。五年目の受験詐欺=次男の受験を不安に思う気持ちにつけこまれた主婦。あの人のサロン詐欺=覆面作家に憧れ本人に成り済ましたアラサー女子、ある日本人が起こした下着泥棒事件と成り済ましの顛末。どれも目が離せないハラハラ感と結末の意外な爽やかさ。流石は辻村深月、面白かった!
読了日:11月04日 著者:辻村 深月
祈りも涙も忘れていたの感想
犯罪認知件数が全国ワースト5に入るV県警の捜査1課に俳句された新人キャリア警察官の甲斐彰太郎。管理官として陣頭指揮を執る甲斐、部下のノンキャリアの警察官たちからの冷ややかな扱い。放火事件、殺人事件が連続し、黒幕を追う甲斐の身にも危険が迫る。裏切りものは誰なのか?ハードボイルドジャンルにしては少し甘め、でも楽しく読了。
読了日:11月05日 著者:伊兼 源太郎
ハロー・グッドバイ 東京バンドワゴンの感想
堀田家の春夏秋冬も歳月を重ね、勘一さん88歳・我南人69歳に。お隣の増谷会沢家の解体新築工事で新しい出会いがある。カフェあさんが夜間営業を始めたり、亡き秋実さんのエピソードもあり。イギリスで暮らしていた藍子とマードックの帰国が決まったり。かずみちゃんに寄り添う決断をした池沢さんも。幼かったかんなちゃんと鈴花ちゃんの成長も楽しめ、このシリーズは毎年楽しみ。
読了日:11月06日 著者:小路 幸也
おいしい旅 想い出編 (角川文庫)の感想
アミの会・おいしい旅想い出編。15年ぶりに再会した友人たちと京都で、30年ぶりの神戸三ノ宮、親友と巡る赤羽のカフェ、懐かしい天ぷらそば、生まれ育った家がゲストハウスに、ケンカ別れした友人との思い出のミュンヘン、83歳の女性を生まれ故郷の横浜へ案内する旅。7編すべて美味しそうで素敵な物語、柴田よしきさん・福田和代さん・矢崎在美さん・大崎梢さんが特に良かった!
読了日:11月07日 著者:秋川 滝美,大崎 梢,柴田 よしき,新津 きよみ,福田 和代,光原 百合,矢崎 存美
きよのお江戸料理日記 (アルファポリス文庫)の感想
秋川さん初の時代物シリーズがスタート。逢坂の油問屋に生まれた“きよ”は双子であるため[畜生腹]と忌み嫌われ屋敷の奥でひっそりと暮らしていたが、弟・清五郎が江戸へ出ることになり世話係として共に行くことに。奉公先は料理屋「千川」、清五郎は配膳係、きよは下働きとして働く日々、ひょんなことからきよの料理が店で出されることになり、きよは料理人へと。きよは出自のためか自己肯定感が低く、清五郎は甘過ぎるが、二人の成長譚として続きは楽しみ。
読了日:11月08日 著者:秋川 滝美
きよのお江戸料理日記 (2) (アルファポリス文庫)の感想
きよは料理人として一生懸命に励んでいる。川を流される女性を助けたり、世話になった上田家にきんつばを持参する。突然「千川」に現れた男は、上方で修行していたはずの主の次男坊・彦之助、きよを目の敵にし執拗に嫌がらせを。きよの体調不良にハラハラ。彦之助が何故突然家に戻ったのか、原因を知り、きよの心も晴れる。さて、この先料理人としてどう成長してゆくのか?次も楽しみ!
読了日:11月08日 著者:秋川滝美
睦家四姉妹図 (単行本)の感想
睦家の4姉妹、貞子・夏子・陽子・恵美里。昭和の終わりから令和まで、お正月2日の母・八重子の誕生日に実家に集まり記念写真を撮る。姉妹各々個性豊か、結婚や出産・離婚で折々変化があり、やがて親の老いと終活へ。戸塚区原宿の家からUR住宅に。わちゃわちゃと賑やかな睦家の姿が何ともホッコリとして良かった。
読了日:11月09日 著者:藤谷 治
油絵は謎をささやくの感想
大学教員の小宮山香織の元に教え子星野はるかから持ち込まれた依頼は、高橋由一の絵画の真贋鑑定。明治時代に描かれたその絵は、山形県天童市の旅館が所蔵し、博物館に購入される予定だったが、贋作であるとのクレームがあり、公聴会が開催されることになった。絵画にまつわる謎と明治の悲しい女性失踪事件。1枚の絵画に込められた闇が明かされる公聴会の香織の意見陳述は読み応えあり。楽しく読了。
読了日:11月10日 著者:翔田 寛
最後の鑑定人の感想
ある事件をきっかけに科捜研を辞め、民間の鑑定所を開設した土門誠。鑑定の腕は超一流ながらかなりの変人。不可解な事件を実験データから読み解き、解決へ導く。「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です。」遺された痕のDNAの謎、真犯人の気持ち悪さに震えた。これはシリーズになるかな?土門・高倉のコンビは中々良い。ハーブ水は飲みたくないけど。
読了日:11月10日 著者:岩井 圭也
おべんとうの時間がきらいだったの感想
サラメシのお弁当ハンター阿部了さんの奥さま直美さんのエッセイ。かなり強烈な両親の元に一人娘として生まれた直美さん。物心がつく頃から暴君のように家族に君臨する父と、父に従うだけの母。そんな直美さんは家族から逃れるために高校時代に米国カリフォルニアに留学し、大学卒業後、了さんと結婚しお弁当ハンターに。子育てしながらの取材旅、歳老いた両親との関わり方。良質なエッセイ、大満足。
読了日:11月11日 著者:阿部 直美
ぼくたちはまだ出逢っていない (teens’ best selections 62)の感想
母の再婚で岡山から京都に越してきて家に馴染めない中2の美雨。イギリス人の父を持ち学校でイジメに遭っている中3の陸。それぞれが自分の居場所や目標を探してたどり着いた[漆]。金継ぎを通して変わって行く中学生たちが清々しい。YAジャンルの本ですが、大人にもお薦め!そして装丁が素晴らしいのです。3人の中学生をつなぐ金継ぎ、素敵過ぎます!
読了日:11月12日 著者:八束 澄子
ラブカは静かに弓を持つの感想
静かな感動でページを閉じて余韻に浸っています。音楽の著作権を管理する会社に勤める橘樹は上司から音楽教室への潜入調査を命じられた。少年時代のトラウマで遠ざかっていたチェロ、講師・浅葉とのレッスンの情景、教室の仲間たちとのふれ合いでチェロへの向き合い方や心の安定が増す一方で、社命のために情報を探ることへの罪悪感と葛藤。孤独な樹が最後に手にしたものに安堵、大満足の1冊でした。お薦め本!安壇美緒さん初読み。
読了日:11月13日 著者:安壇 美緒
カレーの時間の感想
偏屈で3人の娘とその孫娘たちに嫌われている小山田義景83歳。1人で暮らす義景と突然同居することになった孫の男子・桐矢25歳。強烈な祖父と気弱な孫をつなぐのはかって祖父が勤めていた食品会社のレトルトカレー。祖父が秘密にしておきたかった事実、やはり言葉にしなければ伝わらないと思った。
読了日:11月13日 著者:寺地 はるな
アナベル・リイの感想
悦子のひとり語りで物語は進む。舞台女優の千佳代は悦子を慕い特別な友人になるが、恋人の飯沼と入籍して間もなく急死してしまう。悦子が飯沼への恋ごころを解き放つと千佳代の亡霊が現れるように…。飯沼に想いを寄せる女たち、バーのママ・多恵子や仕事先の女・順子を不慮の死へと。最後は悦子を裏切った飯沼まで。悦子なら飯沼とくっついても良かったのか?怖さよりこの世に想いを残して早世した千佳代の悲しさを感じた。
読了日:11月14日 著者:小池 真理子
Yuming Tribute Stories (新潮文庫)の感想
ユーミンデビュー50周年。6人の作家により名曲から生まれたストーリー。小池真理子「あの日に帰りたい」桐野夏生「DESTINY」江國香織「夕涼み」綿矢りさ「青春のリグレット」柚木麻子「冬の終り」川上弘美「春よ、来い」夢中でユーミンを聴いていた若い頃、[MISSLIM]や[コバルトアワー]は特に思い出深い。小池さん、江國さんが良かったです。
読了日:11月15日 著者:小池 真理子,桐野 夏生,江國 香織,綿矢 りさ,柚木 麻子,川上 弘美
星屑の感想
面白かった!歌謡曲全盛期、福岡の田舎から才能を見出だされて上京したミチルと大手芸能事務所の専務の娘・真由、そしてマネージャーの桐絵がスターを目指して行く物語。当時のスターたちや作曲家、歌番組などを想像しながらの読書。分厚いのに村山さんの文章は読みやすく、先が気になり一気読み。
読了日:11月16日 著者:村山 由佳
エール 名もなき人たちのうたの感想
突然球団から戦力外通告を受けた窪塚夏樹。トライアウトに挑むがどこからも声はかからず。夏樹に救いの手を差しのべたのは社会人チーム・トクマルホールディング=居酒屋「徳丸水産」野球部。社員として働きながら野球を続けるが、野球しかしてこなかった夏樹には戸惑うことばかり。そんな彼らに容赦なくコロナ禍が襲いかかる。目指せ都市対抗野球・東京ドームの晴れ舞台。その先に待つプロへの道。面白かった。
読了日:11月17日 著者:朝倉 宏景
孤立宇宙の感想
小惑星の衝突で滅亡の危機を迎えた地球。他の星への移住を目指したり全国各地にシェルターを作り生き残りをはかるもの。メガインパクトは想定以上のダメージを地球に与え世界中のシェルターは対立し分断した。肉体は滅んでも意識は残る世界、何度も生き返り巡り合う世界。読みにくいわけではないけれど、苦手な分野なので苦戦。
読了日:11月19日 著者:熊谷 達也
父の声 (文春文庫 こ 15-2)の感想
東京で暮らす一人娘ののぞみが婚約者の本間を連れて帰省したが、父・順治は娘の変化と本間の人間性に違和感を持つ。心配になった父が娘の周辺を調べると薬物に手を染めていることが判明。どうにかして薬を止めさせたい父の思いが娘に伝わらないことにイライラ。最後は父の声がのぞみに届いて安堵。軽い気持ちや興味本位で薬に近づいたら駄目!君子危うきに近寄らず。麻取の篠田さんの声ものぞみに届いて良かった。
読了日:11月19日 著者:小杉 健治
小さき王たち 第三部:激流の感想
政治家田岡と新聞記者高樹の50年にわたる因縁。孫の世代は新潟の地方テレビ局の記者と東日新聞の新潟支局の記者。まさかそう来るか?の結末は面白く一気に読破。確かに幼なじみの喧嘩が周りを巻き込んで大きくなってしまい引っ込みがつかなかったのかも?田岡も高樹も小さな世界にとらわれていたのだろう。三部作、大満足。
読了日:11月20日 著者:堂場 瞬一
清浄島の感想
戦前から日本最北の離島・礼文島で相次いだ[エキノコックス症]。昭和29年、単身島に派遣された動物学者の土橋義明。島民を苛む病を撲滅させるため奮闘する土橋。島の美しい風景や純朴な人々の暮らし、土橋の苦渋の決断は果たして正しかったのか?命を考える重厚なテーマは河崎さんならではの作品。寄生虫は恐ろしい。
読了日:11月22日 著者:河﨑 秋子
リバーの感想
群馬県と栃木県境を流れる渡良瀬川。その河川敷で相次いで起きた若い女性の殺人事件。10年前にも同じような連続殺人事件があり、未解決のままだった。10年前に容疑者となり証拠不全で不起訴になった池田。彼が本ボシだと粘り強く追う元刑事、群馬・栃木両県警の若い刑事たち、サツ回りの女性記者、10年前に娘を殺害された父親。真犯人は誰なのか?最後までヒリヒリする思いで読了。骨太の警察小説、648頁圧巻の読後感。
読了日:11月23日 著者:奥田 英朗
珈琲屋の人々 心もよう (双葉文庫 い 42-07)の感想
東京下町の喫茶店「珈琲屋」、マスターの行助はとある理由で人を殺めた過去がある。店の扉を開くのは心に闇を持つ人、今作では商店街におでん屋を開いた理央子と行助を兄貴と慕う順平が軸に。幼なじみで女好きの島木、元恋人の冬子とのやり取りは相変わらず面白い。さて、そろそろ冬子と行助の仲が進んでくれないかな?
読了日:11月24日 著者:池永 陽
ショートケーキ。の感想
ショートケーキをめぐる5つの短編集。親の離婚でホールケーキが食べられなくなった2人の女の子、彼女らがケーキを買いに訪れるケーキ屋のアルバイト・カジモトくん。カジモトくんを見守る先輩店員・上田さん。初めての子育てにままならない日々を過ごす3人のママの[ごじょ]、経理のカジモト姉に憧れる会社員の央介くん。真っ白な生クリームと真っ赤なイチゴ、この本を読んだらショートケーキが無性に食べたくなること間違いなし!
読了日:11月25日 著者:坂木 司
竜血の山 (単行本)の感想
昭和13年、北海道東部の山奥で自然水銀の湧く鉱山が発見された。水銀に耐性のある「水飲み」と呼ばれ代々この地で生きてきた一族のアシヤと、鉱業所所長の息子那須野源一の戦中から戦後の30年を描いた壮大な物語。水銀に愛されたアシヤと水銀に魅せられた源一。戦争・差別・殺人や失踪、そして公害問題。中々読みごたえのある1冊。
読了日:11月26日 著者:岩井 圭也
ランチ酒 今日もまんぷくの感想
シリーズ第3弾。祥子の仕事終りのランチとお酒、どれも美味しそう。角谷との間柄も進展し、元夫のもとに居る一人娘に異母兄弟が。夜に見守りを依頼する人にはみんな一言で言えないような理由があり、祥子にもかなりストレスがかけるのだろう。しかし角谷にどことなく不穏なものを感じるのは私だけなのか?
読了日:11月26日 著者:原田ひ香
看守の信念の感想
このプロローグはどこに繋がる?そこに来たか!加賀刑務所の火石刑務官シリーズ2作目、前作もラストで驚かされたけど、こちらも驚きで大満足。お薦めです!
読了日:11月27日 著者:城山 真一
烏の緑羽の感想
あの衝撃的な前巻のラストと中々ストーリーが繋がらずモヤモヤしながらの読書。長束の配下・路近の理解し難い性格とお目付け役の翠寛や頸草院の教官・清賢。物語が動くのは終盤、さて6年の歳月は山内をどう変えるのか?次巻、早く読みたい!!
読了日:11月28日 著者:阿部 智里
空をこえて七星のかなたの感想
星や宇宙をモチーフにした7つの物語。一見バラバラなストーリーかと思いきやラストで明かされる各々のつながり。寺地北斗・舞亜夫妻と一人娘の七星家族を中心に時間軸をバラバラに編んだ物語は爽やかで素晴らしかった。大地震で瀕死の少年が主人公となった『孤舟よ星の海を征け』が強く印象に残った。お薦めです!
読了日:11月29日 著者:加納 朋子
老人ホテルの感想
生活保護で暮らす大家族から逃げて埼玉大宮のホテルで清掃員をしている日村天使は、かつてキャバ嬢をしていた時に知り合った綾小路光子と再会する。光子に生きるノウハウを学ぶ天使に希望を感じながらの読書は、ラストで一捻り…。うーん、このラストはちょっとモヤモヤする。不動産投資かあ…、自分には全く縁のない世界だな。天使の母親に光子が啖呵を切るシーンはスッキリ!
読了日:11月30日 著者:原田ひ香
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