所謂、ビンテージと言われる高級?ギターの値打ちは本当なんだろうか?バイオリンなどには及ばないが、それでも、500万とか800万とか・・・。 100万や200万を超える新品のギターもあるが、50年、60年も昔に制作されたギターは本当に当製作された時に比べると、その状態は維持されているのか? いや、音色は深く、より魅力が増しているだろう。 木製の楽器の特徴はバイオリンなども同じだが、長い年月を経てその材質が変化する所にある。 この変化は木が持っている特性であり、より密度が細かくなると言うのか、所謂、圧縮されるような状態なんだろう。 それによって、音色は明瞭になるし、反響効果も大きくなる。 さらに、弾きこむことで、木の振動を繰り返す波動と言う物を記憶する・・・。 音は振動によって作られるので、どのような振動が生まれるのかでギターの音色は決定すると言っても良いだろう。
弦の振動をギターのホールから内側に取り入れ、内部で反響して表面板に伝わり、表面板が音を作り出してギターホールから、さらには、ギター全体から放つことになる。
なので、制作されてから数年は木が熟成されいない状態で、まだ振動の反響は落ち着く事が無い。 新しい木の材質は制作以前から長く乾燥されているが、しかし、まだまだ熟成と言うレベルには至っていない。 接着されている部分や、加工されている部分も馴染んでいないし、それが完全に一体になるまでには時が掛かる。 さらに、弾き込むことで、その振動によって木はさらに繊細に緻密な形成を築くのである。
さて、先日のギター講座では、講師が持って来たギターがビンテージのホセラミレス作だった。 価格で言えば、約200万円程度だろうと・・・。 いや、そんなにしないだろうと思うけど。
講師が私に弾いて見てと言って渡されたので、少し弾いて見た。 スケールが655と少し長い事はそれほどでもないが、初めて弾くギターなので、ちょっと何時も通りには弾けなかったが、それでも、少し弾いただけでも、やはり音色は良いと実感した。
ただ、私の何時ものギターの価格との差を考慮すると、もっと良い音色でもおかしくないだろうと思うのだが、やはり、音色は単にギターの良し悪しでは決まらないのだろう。 それから課題曲は自分のギターで弾いたが、それほどの遜色は無いとも感じたのである。 まっ、聴く人が聴けば、その違いは判るのだろうが、私にはその本当の良さを知るような能力もないのだろう。
したがって、以前から書いているが、ギターの価格はそれなりの物なら、それ以上の物との差を実感するのは難しい。 こうなると、後はギターを弾く人の趣向性の問題で、音の傾向が自分の好みなのか、それとも、その人にとってはあまり好みではないのか・・・で、その価値と言うか、評価は決まるのだろう。
どんなに高級でビンテージで、高額なギターでも、その音色が自分の好みの傾向ではない限りは、良いと言う評価は出来ないだろう。
もちろん、ギターの技量の問題は相当に大きな要因だろうし、楽曲との相性というか、楽曲と音色との相乗効果というものもあるだろう。
私は現在2本のクラシックギターを所有していて、そのどちらもとても気に入っている。 音色の差は若干だが違いも分かるし、どちらも満足する所もあるし、不満に思う所も無いわけではない。 どちらもCórdobaと言うメーカーのギターであり、同じ特徴を持っているので、その違いはそれほど大きくはないが、制作時期が5年程度違う事や、使用期間も違っているし、サイズも若干の差もあるし、材質も違う。 さらに言えば、Córdobaのメーカーのラインナップでは、価格差もあるし、どうしても価格が高い方が良いような気もするが。 それは、ある種の先入観もあるだろうし、実際に材質やその設計から制作過程も違いがあるので当然だろうが。
それでも、1本目は購入価格は2割程度の値引きがあり、160000円程度だった。 ハードケース付属で、ルックスは申し分ないし、作りも申し分ない。 音色は当初はすごく良いと感じていたが、経験を重ねると、そうでもないと思うようになった。 で、もう少し良い音色を・・・と思って、もう1本のギターを購入することになった。 今は2本だが、その間にはさらに2本のクラシックギターを購入して売却している。 最初のこの1本は今でも私のメインギターになっているし、ギター講座にも当初から持って行っている。 最近はこの最初のギターの音色が良くなった気がしてきた。 講師からも、最近の私のギターの音色が良くなったと言われているので、やはり、そうなんだろう。 そして、もう一本のギターは購入から1年半程度が経過した。 制作年もほとんど変わらないだろう。 制作されてから私の手元に届くまでにはほとんど期間も無いのである。 こちらのギターは購入価格は値引きなしの販売で、303000円。なので、約倍の価格と言えるが、円安などの影響もあるので、それほどの差は無いと思う。
最初のギターの価格も値引きなしなら198000円である。
ただ、このCórdobaと言うギターメーカーは私にはとても合っていると言うか、音色としても価格よりも遥かにその作りや、音色は価値があると思う。
今ではCórdobaはYamahaに買収されてしまったが、Córdobaと言う名前はそのままだし、制作傾向や、そのギター作りの基本が曲げられている訳でもない。
そもそも、当初から思っているが、他のメーカーに比較しても、ギターの価格を抑え過ぎているので、経営も苦しくなった気もする。
もっと価格を上げてもCórdobaのギターは評価されただろうし、欲しいと思う人は多くいるだろう。 ただ、制作者の意図は良いギターを作る事にあり、経営自体を維持するような能力には欠けていたのかもしれないが。
さて、その後発のギターの音色は今後さらに良くなるだろうし、今でもやはり、こちらのギターの方が音色には奥行きがあると実感している。
最初の1本の音色はどちらかと言うとビビットな傾向だろうか。 後発のギターはブライトな傾向があると言う印象。 そして、音量や音の広がりと言う感じも違っている。 弾いて居る本人に聞こえる音と、少し離れた場所に居る観客が感じる音の差は分からにので、何とも言えないが、手元では大きくて明瞭な感じでも、離れた場所にどのように伝わっているのかは分からないが、後発のギターの方がより広がりがある気もする。 音が遠くまで届くような感じだろうか。
最近は音量に関してはどちらもあまり違いが無いと思えるようになった。 以前は最初の1本の音量が足りないような気もしていたが、最近はそうした感じも無く、満足できるように感じる。
後発のギターは当初は相当に音色が良いと実感していたが、最近は耳も慣れて来たのか、当たり前になった気もする。 ただ、明らかに低音の奥行きと言うか、音の重さが違っている事は確かである。
高音に関してはそれほどの差を実感することは少ないが、それでも、高音の同様に、その音の重量感と言う物は違いがある。
ギター自体は後発のギターの方がサイズも一回り小さいのであるが、音量やその音色の重みは逆なのである。
こうしてみると、このサイズを同じにしたら、もっと良いだろう・・・などと思ってもみるが、果たしてどうだろうか? そんなことはメーカーが判り切っている話だし、敢えて、このボディーサイズにしている理由はこの音色にあるのだろうと思うし。
さてと、ギター講座には最初の1本を持って行っているが、いずれは後発のギターを持って行く事も考えている。
やはり、今は後発のギターの音色が私にはとても良いと思っているし、弾きやすさも優れているし、どうしようかな。