こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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かまとおばあちゃん現象について。

2010-02-24 22:50:56 | 訪問看護、緩和ケア
数年前、当時日本一長生きのおばあちゃんで「かまとおばあちゃん」と呼ばれる人がいましたよね。
すごくかわいいおばあちゃんでしたが、特徴だったのが生活サイクルでした。

二日寝て、二日起きてる。
寝ている二日間は、ほとんど声かけにも応じないで、口元におまんじゅうを持っていくと、口だけもぐもぐ・・・よく誤飲しないものだと、テレビをみながら感心したものです。

でも、起きているときは、沖縄民謡をかけると手をヒラヒラさせて踊ったり、挨拶をしたり、笑ったりと表情も豊かになります。


で、実際老衰が進んでくると、みなさんその傾向になってきます。

いわゆる傾眠状態とはちょっと違うような・・・でもやっぱり傾眠なのでしょうが・・

うちのステーションの患者さんの中で、ご高齢の方にはよくみられます。

結構普通に寝たり起きたりだったお年寄りが、突然寝込んでしまって呼べど叫べど反応しない。もちろん飲まない、食べない。
びっくりして、医師や看護師を呼んでも、バイタルは安定していて、特別病状に変化はない様子。
一応、脳梗塞などを疑うものの、こういう場合は今更入院させて痛い思いをさせたくないと自宅で経過を追うことがほとんどです。
で、これはお別れが近いかも・・と医師からも厳しい説明が行ったりして。

ところが翌々日位から、ぱっちり目を開けてご飯を食べる、お話はするで『あれは何だったの?』ということもあります。
ここまでひどくなくても、やっぱり寝ている時間がどんどん長くなっていく時期があります。

これは、自然の流れなのでしょうが、ご家族の多くは『食べないと栄養が取れなくなってしまう。』ととても不安になるようです。

こんなときに、『かまとおばあちゃん』の話をすると、みんなすごく納得してくれます。

「食べられないのは、体が求めないから。
無理に点滴をすると、むくんだり痰が増えてゼロゼロしたり、あまりいいことはありません。
人は、自然に自分を枯らすことで、最期を苦痛なく過ごせるようにプログラムされているんですって。
だから、お顔が苦しくなくて、穏やかに眠っているのなら、そっと見守ってあげましょう。」
そんな風に、ご家族にお話しをします。

かまとおばあちゃんは、人生の終末の良いお手本だった見たいですね。

そういえば遥か昔、高僧が即身成仏をする準備のため、徐々に食と水を絶っていったそうです。
体を枯らすことできれいなミイラになれるとともに、苦痛が最小限に済むそうです。
(って、あんまりいい例ではありませんが・・)

それでも、眠る時間が長くなれば、必然的に食べる量も減ります。
ただ、ほとんど動かないので代謝も低く、超低燃費で経過します。
その間に、ご家族も心が落ち着き、いろんな準備もできて、最期はみんなで『ありがとう』と言ってお見送りができるようになります。

老衰といういい方はあまり好きではありませんが、長い間使い続けたからだが、最期までエネルギーを使いきって、蝋燭が燃え尽きるように亡くなっていく。

かまとおばあちゃん現象・・・
それは、そういう時期がそこまで来ているのだなと、受け止めるための合図なんだと思います。