1186話)谷の底には大きな木が

碣寺山の山頂付近の森林はせいぜい樹齢20年余りの若い樹木で成り立っていました。1960年代に村の近くに油松が植えられ、それが育って下枝が燃料としてつかえるようになると、村の人は山の上までタキギ取りに登ってくることがなくなりました。それで自然に森林が再生したのです。

そして頂上から高低差で350mほど下った谷の底には、一抱え以上もあるナラなどの大きな木が茂っていました。李向東さんが、こんな大きな木があるといって、一抱えに余るジェスチャーをしたのは、ウソではありませんでした。直径25cmもあるナナカマドもあり、なんと白実だったんですけど、相当の歳月を重ねたものだと思われます。図鑑で調べると、中国でも絶滅危惧種のようです。(ついでにいうと、その若木が南天門自然植物園で育っています)

この谷底でタキギをとっても、急な斜面を高低差で350mもよじ登り、さらに村まで運ぶのはまず不可能ですから、そのために生き残れたのでしょう。じっさいに私は李向東さんに誘われてこの谷底までおりたのですが、あちこち引き回されている両足とも激しく痙攣してしまいました。

黄土高原で森林が失われたのは、やはり人為的な原因が大きいのでしょう。どこでも森林が再生できるとまではいえませんが、条件のあるところは確実にあり、しかもかなり豊富な樹種が育ちうる確信をここでもてたのです。立花先生に教えられた植物園建設の意義は私のなかでもだんだん膨らんできました。
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