1307話)「太陽照在玉米地上」

写真をみて、なんだ、またトウモロコシか、と思われたことでしょう。そのとおりです。その先に橋があり、車が走っているのがみえると思います。それがミソ。

ここは大同からちょっと西南にいったところの応県です。世界最大級の木造建造物・応県の木塔が有名なところです。でも、正面に橋がみえるってことは? そうです。本来は桑干河の川底で、水が流れているべきところに水がなく、で、近くの農民がトウモロコシの栽培をはじめたんですね。

川底ですから、ほかの畑より水に恵まれ、土も肥えているようで、いつみてもほかの畑よりできはいいのです。私はここを通るたびに写真を撮って、定点観測をしていました。

そしたらあるとき、一人の青年がずっと私のあとをつけ回してきたのです。写真を撮っているのがまずかったのかな、と最初は思ったんですけど、そうじゃなかった。トウモロコシ畑の奥にスイカが栽培されており、私はスイカ泥棒と疑われたようです。

中国の有名な小説に女流作家・丁玲の『太陽照在桑干河上』(太陽は桑干河を照らす)があり、日本語の訳本もでていました。その桑干河から水がなくなっているんですよ。私の本の中国語版が出版されるとき、その題に『太陽照在玉米地上』がいいんじゃないかと私は言ったんです。もちろんジョーダン。訳者の李建華さんが『雁棲塞北』というすばらしい題に決めてくれました。

ここ何年も応県のこの場所にいっていません。ここからずーっと下流の、北京の水ガメ、官庁ダムでは水がふえました。南水北調によって長江流域の水が北京に届くようになって、圧力が減ったことと、以前ほどひどい旱魃がないことが原因のようです。ここの場所はどうなっていることでしょう?
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