2000m級の幌尻岳
苫小牧からさらに道央に入る日高山系にある100名山の一つ、幌尻岳
今回はここが目当てでやってきた。
山を登る前に渡渉が20回ほどあるということで、こんな長靴を見つけて買った(500円!)。
中は布引なのだが、脱ぐとき、真空状態になってしまうのではないか?というくらいに
引っ付いて脱げず苦労はする・・・(涙
北海道の山小屋は本州の山小屋と違い、どれも無人。避難小屋に近い。だから、
寝袋も食料もすべて担いでの山登り。そして沢歩き。どんなことが待ち受けるのやら・・・と魅力はあれど、
荷物は今までで一番重い。大丈夫だろうか。
前日にふもとの宿に泊まったが、クロム鉱山廃鉱のため廃校になった中学校を今年の7月に町が
宿泊施設に変えたばかりのところ。理科室が食堂で(洗いものもすぐ横の流しでできるしね)、
棚には工具箱やビーカー、ミシンなどが並んでいた。宿泊施設は教室ではなく、
校庭向かいの職員宿舎が当てられていた。お風呂も流しもあるのでこうやって
有効活用もいいかもしれぬ。
さすが町の施設だけあって翌日、登山口まで送迎が付いていた。そして朝食は
竹の皮に包まれた大きなおにぎり二つ。朝食しか頼んでないのに、包みは二つ。
お昼分まで入っていた。
そのおにぎりを背中につめていざ出発。
宿舎から一般駐車場の先のゲートまでダートコースを車で約40分。
山歩きの始まり始まり。
天候はなんだか優れないが、寒くはない。
北海道電力会社の取水口まで約1時間半の林道歩きのあと、とりつく島のない岩場のへつりが最難関だった。
下は深い川・・・最初っからこれでは先が思いやられる。そして帰りもここを通らなければならない・・・と思うと・・・
40分ほど山道を歩くと、リスが小道を横切る。熊も何度か目撃されているという情報に、鈴を鳴らしながら歩く。
最初の川渡りの場所に到着。木にだれかが脱いだ靴をかけていた。さあ、気合を入れて、川に一歩を踏み込む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/8a/954770bbefaaf4b328435d97dde2d94a.jpg)
思っていた以上の川の流れにしっかり持っていてもストックの先が流される。
先日購入した長靴の威力を試したが、膝上までつかると水は入ってくるし、川底の岩に生えたコケの上では滑る。
その上川以外の道を歩くには底が薄くて痛い。5回ほど長靴で川を渡ったが、足の裏のことを考えるとやはりフエルトが
張られた靴が一番なのだろう、が、それはない。ならば、と普通の登山靴に履き替えた。こちらのほうが山道も
川底もしっかり歩ける。ただし、靴の中も川の中も同じ状態。
でも、これは確か・・・どこかで経験したような感触。
そう!今年のあの水晶岳へ登る時に見舞われた風雨の靴の中と状況はまったく同じ!
ならばなんのことはない。まるで水晶岳の歩きがここの準備だったよう。そういうめぐり合わせだったのだ!
1時間ほど渡渉を繰り返し、岩場で休みをとっていると15人ほどの一斗缶を担いだ人たちの列があがってきた。
食料をいっぱい入れて運んでいるのだろうと、やり過ごした。
休憩場所からまた2回ほど川を渡ってやっと小屋に到着。
朝の出発から4時間が過ぎていた。
小屋では小屋番が忙しそうにトイレのくみ出しを行っていた。そうです!
あの一斗缶につめているではないか!あの15人の列は「幌尻岳ファンクラブ」という平取町山岳会の方々で、
こうして清掃登山兼山小屋のトイレのくみ出しを定期的にボランティアでしている方々だった。
明日山に登り、ゴミを拾いそしてこの一斗缶を担いで下りるのだそうだ。
山小屋は、板の間で毛布1枚を配給される。半分にたたんだ毛布の面積だけで半日を過ごす。
リュックは小屋の下のリュック入れ倉庫に置かなければならなかった。すべてが本州の山小屋とは違っている。
甘やかされていた自分が見えた。
夕食は外で。持ってきたビールと暖かなきつねうどん。
夕方から雨が落ちてきた。頭痛も少し感じるので、低気圧が近くを通っているに違いない。
頂上まではここから4時間の登り。明日はどうなるだろうかと思いながら、早々に寝てしまった。
翌朝3時半、雨音で目が覚める。ひどい降り。結局6時半まで待ったが雨はやまない。
小屋近くを流れている川の流れを見ると、昨日より明らかに水量が多い。このまま午後になれば、
水かさは増すであろう、という判断のもとに、頂上はあきらめて下山することにした。
昨日のぬれた靴下はずいぶんと乾いていた。どうせ、また川を渡って濡れるのだから、
新しい靴下をはくまでもない。湿った靴下に足を突っ込み靴を履き、川を渡り返して下山をした。
明らかに昨日の川の水量より多い。腰まで浸かってどうにかこうにか渡る場所がいくつかあったが、
ゆっくりと足をするように、流れに逆らわず進むコツを少しつかんだ。
どきどきしながら1時間、さいごのへつりも乗り越えて、ゲートに到着したのはこれまた3時間半後であった。
ここまで来る間に話した地元に息づく人々の穏やかさ。
もう2度とここへ来ることはないだろうか。