老生の最大の欠点は、分析癖という悪癖である。調査も研究もせず、知見を蓄えてもいないのに、直感で恣意的に分析する悪い癖。その結果として、独断と偏見に満ちた判断や結論がある。
ハテ、どこかに誰かよく似た人物が居たような?・・・
思い当たったのが【男はつらいよシリーズ】の「フーテンの寅さん」だ。
彼の思考回路は独断と偏見に満ち、毎回問題を惹き起こす。軽率な分析が彼の誤解・曲解の発端になっている。
妹のさくらやその夫博のとりなしで、辛うじて寅屋の平和は保たれているのだが・・・
軽率に手前勝手な分析をして周りに迷惑をかける寅さんだが、真率で衒いのないところが、周囲の人々に愛されている。それが当人の甘えを助長している面もある。
「独断と偏見」の権化のような寅さんの生みの親は、脚本を書いた山田洋次監督。
監督の緻密な人間・女性・社会への考察と分析が、寅さんやその他の登場人物の人となりに反映されている。
監督は自分の緻密な分析を脚本づくりに活かし、多様でユニークな登場人物のキャラクタを生んだ。特に毎回寅さんと関わりをもつマドンナのキャラクタには、山田監督の女性観が強く顕れている。寅さんファンの中には、それを愛好する派と嫌悪する派とがいるのだが・・・
渥美清さんの個性と演技もさることながら、山田洋次監督の人間観・社会観が、あの「寅さん」を単なる娯楽映画で終わらせなかったのだろう。
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