てんちゃんのビックリ箱

~ 想いを沈め、それを掘り起こし、それを磨き、あらためて気づき驚く ブログってビックリ箱です ~ 

アルチンボルド 展

2017-07-28 21:53:05 | 美術館・博物館 等


訪問日:2017年6月29日
正式名称:アルチンボルド展
開催場所:国立西洋美術館
会期:2017年6月20日(土)~9月24日(日)

この美術展の惹句は以下です。
 「奇想の宮廷画家のアルチンボルド。
  謎が謎を呼ぶ思考のラビリンスへようこそ。」

 アンチンボルドはルネサンス期の人で、おもにウィーンのハプスブルグ家の宮廷画家として、写真1のようにいろんな要素を組み合わせて、人間の顔にしたという画家であるが、この展覧会は上記の惹句を以下のように展開していた。
・このような奇妙な絵が始まった背景
・アンチンボルドはどのような人か
・なぜこのようないろんな要素を、絵に入れることが出来たのか
・なぜこういった絵が受けいれられ、パトロンである王たちから気に入られたのか

 私も上記の問いには同感であり、どのように展示されていたかを以下に述べる。

(1)奇妙な絵が生まれた背景
 この展覧会では、ダビンチの人の特徴を見破り誇張して強調した絵などからの影響を中心に展示している。確かにそうだが、北欧ルネサンスのボスやブリューゲルのような怪異的な絵まで振れる潮流があったものと思う。

(2)アンチンボルドの人となり
 ミラノ出身のルネサンスの拠点にいた人で、ウィーンに来るまでは普通の絵を描いていた模様。非常に頭のいい人で、絵画だけでなく行事のマネージメントや、噴水などの発明も行い、宮廷のプロジェクトマネージャーみたいな人となっている。

(3)いろんな情報を得た理由
 そのころ各王家は、所有する知識の競争をしており、博物館的な部屋そして植物園を充実させていた。王家に使える人としてそれらを自由に見ることが出来た。

(4)このような絵が受け入れられた理由
 (3)の所有物の宣伝、多量に資料を持っていることを示す権威付けの、いわばポスターとしての役割を持っていた。絵の中にはハプスブルグ家統治の象徴を書き込んでいる。
例えば 春の絵(写真1枚目)には80種類以上の花が描かれている。また冬の絵(写真2枚目)にはハプスブルグ家のマークMが書き込まれている。
それとともに物品を正確に描きつつ、正しく対象者の特性を示すという非常に優れた技法を持っていた。



 以上のように、知識を持った上流階級が自分のうんちくを競い合うことができるのに都合のいい対象であるけれども、例えば春の絵なんか、「きれいで楽しいね。」と楽しんでいればいいし、冬の絵は「いかついけど眼がかわいいじゃん」と背景に関係なく楽しめる。


 展示にはアンチンボルド以外の傍証的なものも多く、それらやや煩かったが、アンチンボルドの四季、4元素の絵はすばらしかった。頭の中でものすごく計算して、組み合わせてこのような形に落としこむという力はすごい。
 肖像をスケッチされてから、完成するまでに時間がかかったと思うが、王家の人たちは ワクワクしながら待っていたに違いない。
 また、四季や4元素の絵(写真3に 水の絵を示す)は、人気が出ていろんなところに別バージョンのシリーズが納められたとのこと。それぞれが微妙に異なっているそうで、発注した人もその変化が楽しみであったに違いない。


 会場では、全体の絵の雰囲気を楽しんだ。でもこういった絵は、部分にこだわって時間をかけてみたらいろんなことの発見の楽しみがある。カタログを買うこととした。




コメント (6)
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