正式名称:東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展
場所:豊田市美術館
訪問日時(開催期間):5月5日(2017年4月22日[土]-6月11日[日])
2日続けてですが、今度は豊田市へ出かけ、東山魁夷が描いた唐招提寺の障壁画を見てきました。展示は御影堂の全室の襖絵、および鑑真和上像の厨子の内部。現地では御影堂が開かれる数日しか見ることができないとのこと。ただし、時々は今回のように各地の美術館でまとめて展示されるようである。
御影堂は5室のうち手前側に2室、奥には鑑真和上の厨子を納めた部屋およびその両側の3室となっている。この障壁画を描くのに、晩年の10年超を他の仕事を断り費やしたとのこと。
展示は、障壁画のための日本および中国のスケッチ、障壁画を書くための設計図に相当する縮小図から始まる。縮小図は2段階のサイズがある。日本のほうは魁夷ブルーを中心とした色で描かれているが、中国では水墨画を使っている。魁夷はそれまで水墨で書いたことはほとんどなかったが、中国にわたりその風景は水墨画でしか表せないと判断したとのこと。
そして最後に御影堂の内部構造を部屋ごとに分割して展示室に組立て、そこに襖絵を入れ展示している。
前2室は日本国内の風景を意味し、片方が山の絵、もう一方が海の絵。ともに青緑、群青で描かれていて 山の絵では白い霧が山上から降りてくるように、海の絵では波がひたひたと海岸に押し寄せてくるよう。そして居心地のよい静けさ。
後ろ3室は鑑真の故郷の中国を意味し、真ん中の厨子が納められた部屋に鑑真が出港した揚州の風景、左右に黄山および桂林の風景が水墨画で描かれている。
そして厨子の中は鑑真が到着した浜が色彩で描かれている。鑑真は日本到着時にはもう盲人となっていた。すなわち彼が実際に見ていた風景は水墨画で、そして見ることのかなわなかった日本の風景がカラーで描かれていることになる。
この構成力は素晴らしい。そしてひたすら真面目に丁寧に、心地よい静かな世界を描いている。
でも・・・・
前日 海北友松、しばらく前にミュシャそして草間彌生を見たせいか。芸術の本質が魂に迫る驚きだとすると、ここにはそれがない。唐招提寺の人たちは安らかに鎮魂するということで、心地よさを狙ったのか。
でももし私がこういった状況での絵を選ぶとするならば、草間彌生の「我が永遠の魂」の連作を選ぶ。煩悩と昇華の繰り返しの中に、鑑真は存在してほしい。
いいんだけれどドキッとするものがないということで、ここの通常展示のクリムト、ココシュカ、エゴンシーレを見に行った。
1枚でもパンチ力が全然違う。
添付1:前室 海の絵
添付2:厨子のある部屋 揚州の蕉風
添付3:厨子の中 上陸した浜の風景