てんちゃんのビックリ箱

~ 想いを沈め、それを掘り起こし、それを磨き、あらためて気づき驚く ブログってビックリ箱です ~ 

愛知県美術館 2024年度第2期コレクション展 感想

2024-08-21 23:42:13 | 音楽会
会期:2024年7月18日(木)―9月23日(月・振休)
会場:愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
内容
 展示室2 県美の名品、裏話
 展示室2 木村定三コレクション 加藤孝一のセラミック
 展示室2 明治から昭和初期の洋画
 展示室3 新制作派協会彫刻部の創立メンバーたち

 アブソリュート・チェアーズ展と同時に開催されていた 愛知県美術館のコレクション紹介展である。県美の名品、裏話はほぼ通常展示品だったが、他の部屋はあまり見たことがないものが多く、面白かった。

1.展示室2 県美の名品、裏話
 ここは県美の誇るピカソやクリムトなど、通常展示の外国人作家の作品群が並べられている。しかしいつもと同じような紹介ではなく、X線で撮った塗りつぶされた絵とか、県美に来るまでの作品の経緯など(これはナチスの話が多い)の蘊蓄が多い。ここでは2件。

(1)ピカソ 「青い肩掛けの女」
 ここでの目玉はピカソの青の時代の作品。この絵を調べた結果、2023年に絵と全然違うスケッチが発見された。その頃はテレビでも取り上げられちょっとした騒ぎになったことを覚えている。
 実はピカソが活躍し始めた頃は貧乏絵描きが大量に発生して、それぞれが描いたキャンバスを安く買い取ってその上に絵を描くということがよく行われていたようだ。下の絵がピカソ本人の描いたものかもわかっていないようだし、大したことではないと思う。 
 原田マハが「楽園のキャンバス」という小説で書いたような、ピカソの絵の上にルソーが描いたとか、調査中だがダビンチの未完の壁画の上にヴァザーリの壁画がのっているかもといった話になったら大騒ぎだが・・・
https://www.chunichi.co.jp/article/637421



 ピカソの作品はどこで見ても、おれはここにいるといった自己主張が強い。この作品も目立った色合いではないが、ぬめっとした生首が飛びだしているようで目立つ。

(2)レオノーラ・キャリントン(と マックス・エルンスト)
 もう一枚は、今年寄贈されたばかりのシュールレアリズムの作家 レオノーラ・キャリントンの作品。市場価格5億円とのこと。彼女は小説も書いている。
 彼女はイギリスの大金持ちのお嬢さんだが反発心旺盛で、手を焼いてパリの美術学校へ親は入れた。若いころからシュールレアリズムに憧れていたが、そこでドイツ人画家のシュールレアリズム作家マックス・エルンストに恋し同居した、といってもエルンスト46歳、キャリントン19歳の組み合わせ。ところが第2次世界大戦の勃発でエルンストは敵性外国人として逮捕され、ナチス占領後は今度は絵の内容でゲシュタポに逮捕された。
 その間キャリントンはスペインに逃亡していたが、精神疾患を患い回復後偽装結婚して米国にいった。その後メキシコの外交官と結婚してそこに在住。エルンストも米国に脱出。そこで彼女を作り結婚して、戦後暫くしてパリに帰還。
 この展示会では戦争で引き裂かれた2人の作品を並べて展示している。ただし両作品とも別れた後のもの。

①マックス・エルンスト 「ポーランドの騎士」
 この背景のごつごつした表面の青さは好きだった。今回のキャリントンの表面も似た感じだったのでエルンストのほうを調べると、絵具が渇いていない時に板を押しつけ、その後適当な時期に剝がすことで偶然の要素が入る描き方をしているとのこと。その他にも偶然の要素が入るテクニックを種々駆使してそれで自ら楽しんでいるようである。
 馬の顔があり2羽の鳥が描かれていて、意味はわからないが面白いと思っていたが、同じ表題のレンブラント作品があり、それに触発された前作品があってこの構図になっているとのこと。
 


②レオノーラ・キャリントン 「ウルでの狩り」
 ウルとはメソポタミアのシュメール人国家の街だが、緑色の満月のもと宇宙人(人らしくない)かな?が馬に乗って狩りをしている。周辺の崖は、エルンストと同様にごつごつした表現になっている。
 わりと地味な色合いなので他の作品を見てみたら、わりとカラフルでもっとシュールなものを描いている。またマヤやインカに影響を受けた作品があるのはメキシコ在住だからか。他の作品を実際にみてみたいとおもった。



2.展示室2 木村定三コレクション 加藤孝一のセラミック
 瀬戸の加藤一族からでて、主として洋画で有名になった加藤さんの、テラコッタ(素焼き)作品の展示。
 子供のような素朴さと純粋な遊びの楽しさをテラコッタという手段で示しつつ、大人の磨かれてきた美意識でキメルという作品が並んでいる。
 
(1)加藤孝一 「面3種」
 三者三様の仮面。右へ行くほど複雑になる。特に真ん中の切れ長の目にどっきりする。



(2)加藤孝一 「渦中の人」
 ぐるぐるっと渦、真ん中にあたふたしている人が面白い。



3.展示室2 明治から昭和初期の洋画
 これは明治から昭和の日本人洋画家の作品が並べられている。その頃の有名な画家、そして中部で活躍した画家の作品がカタログ的に網羅されて大量に出品されている。愛知県美術館ではこの時期の作家たちはあまり展示がなくて、こんなにあることに驚いた。しかし確かに目玉になるような作品はそれほど見当たらなかった。
 たくさんの中で、私の好きなのを2点

(1)古賀春江 「夏山」
大正から昭和前期にかけてのシュールレアリズムの作家。この人のノスタルジックな色合いが好き。特にこの夏山のそれぞれの散りばめられた対象とさわやかな空気感がいい。



(2)藤田嗣治 「青衣の少女」
 藤田独特の滑らかで輝く白の女性。特に少女の絵となると存在自体がシュール。いまだったら耳を尖らせて、エルフの様に描くかもしれない。



 全般的に、前回書いたアブソリュート・チェアーズ展よりもこのコレクション展のほうが面白かった。特に面白いと思ったのが実は展示室2の「明治から昭和初期の洋画」で 明治最初の頃の洋画技術輸入初期段階の絵、有名画家のヨーロッパ渡航前の絵などがあり、あまり皆さんには紹介できないが大変だったのだなということがよくわかった。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする