『母の待つ里』 浅田次郎著 新潮文庫
40年ぶりに帰るふる里で待っていたのは初めて会う母だった。
大企業の社長として孤独を抱える松永徹
定年と同時に妻から離婚を告げられた室田精一。
親を看取ったばかりのベテラン女医、古賀夏生。
人生に疲れた三人が選んだのは「里帰り」だった。
囲炉裏端に並ぶ手料理や不思議な昔話。
偽りの母と過ごす時間が三人を少しづつ変えてゆく。
疑似体験の母と故郷
昨夜、NHK BSで放送されたドラマは、偶然にも同名の作品。
出演する一流の俳優たち、
中井貴一、佐々木蔵之介、松嶋菜々子、そして宮本信子。
東北の方言を使う母親の意図を完全に理解するのは少し難しかった。
彼女の言葉はその土地の言葉で、彼女がどれほど努力したかが伝わったが。
人生のたそがれ時には人は、ふる里を恋うのだろう。
例えそれが疑似体験であろうとも。
「故郷とは、土地ではなく人々かもしれません。
私たちは土地へではなく、人々のもとへ帰るのだと感じました。」
中井の演じた偽りの母を追い求める心情からの言葉
文字であれば読み返して理解できるのに対し、
テレビでは一度発せられた言葉は取り戻せない。
感情移入の度合いにもよるが、
やはり文字の持つ力は計り知れない。
第2弾は来週に