今年の芥川賞が決定した。
『貝に続く場所にて』・・石沢麻依
『貝に続く場所にて』はドイツで博士論文を準備している日本人の主人公のもとに東日本大震災で亡くなったかつての友人が幽霊となって忽然と訪ねてくる。生き残った者の罪悪感を持ち続けることへの意味を小説として昇華させたとは選者の言葉。生者と死者、過去と現在を太陽系の惑星モニュメントを登場させながら組み立てていくのだが、その辺が理解しづらい。読後感は文章自体の堅さが目立ち言葉の持つ柔らかさが感じられず、言葉を言葉で飾る複雑さには読みづらかった。
『彼岸花の咲く島』・・・李 琴峰(り ことみ)
架空の島を舞台として外部世界から島に漂着した一人の少女が島民に受け入れられ、「ノロ」(祝女)として成長していく過程を描く。「日本語」「女語」「ひのもとことば」という三つの言語が交差する。真っ赤に咲く彼岸花の島での若者の成長と島の歴史や風葬の儀式もあって興味があった。
熟練の作家の文章はすらすらと物語の中に吸い込まれてゆくのだが、今回のこの作品は私には馴染めなかったし、やはり手に取って読んでみようかなと読者を招き入れるような言葉が私には欲しかった。
そう感じたのは言葉を理解する能力が私にはまだまだなかったということだ。
キバナコスモスとシジミチョウ