『水曜の朝午前三時』 蓮見圭一著 河出文庫
婚約者を捨て、両親の意にそむき、自由に自分の意思どうりに生きたひとりの女性の病床から娘にあてた回想描写。それを読者に紹介するのが娘ではなくて婿が「僕」として案内役となる。物語の設定は大阪万博の昭和45年が舞台。そこでコンパニオンとして働きラブストーリーが語られるが、相手が北朝鮮人だったことから恋にピリオドが打たれ、違う人と結婚して現在に至る。「もしかしたらあり得たかもしれないもう一つの人生、そのことを考えない日は一日もなかった」とベッドの上で悔恨の涙を流す。「午前3時」は恋の相手の妹が亡くなったという時間。
長い人生のなかで巡り合った人との思い出に浸るとき、自分の運命を決めたあの一瞬を頭をかすめるときがある。あの時違った決断をしていたら別の人生がきっと展開されたろうにと。いやこれこそ長いにしろ短いにしろ人生というものだろう。人生は選択の連続だ。やり直しはきかない。「一回性」が人生の本質だと考える。後で後悔することが少なからずあるけれどそれでも人は生きていかねばならない。主人公はこれからの結末を娘夫婦に託し「人生は宝探しです」と告げる。
都はるみの「小樽運河」から
「精進料理の酒を飲み別の生き方あったねと・・・・あなたほんとの男なら私一人にさせないわ・・・」としみじみ歌うような人は現れなかったけどこれもまた私の選んだ人生だね。
婚約者を捨て、両親の意にそむき、自由に自分の意思どうりに生きたひとりの女性の病床から娘にあてた回想描写。それを読者に紹介するのが娘ではなくて婿が「僕」として案内役となる。物語の設定は大阪万博の昭和45年が舞台。そこでコンパニオンとして働きラブストーリーが語られるが、相手が北朝鮮人だったことから恋にピリオドが打たれ、違う人と結婚して現在に至る。「もしかしたらあり得たかもしれないもう一つの人生、そのことを考えない日は一日もなかった」とベッドの上で悔恨の涙を流す。「午前3時」は恋の相手の妹が亡くなったという時間。
長い人生のなかで巡り合った人との思い出に浸るとき、自分の運命を決めたあの一瞬を頭をかすめるときがある。あの時違った決断をしていたら別の人生がきっと展開されたろうにと。いやこれこそ長いにしろ短いにしろ人生というものだろう。人生は選択の連続だ。やり直しはきかない。「一回性」が人生の本質だと考える。後で後悔することが少なからずあるけれどそれでも人は生きていかねばならない。主人公はこれからの結末を娘夫婦に託し「人生は宝探しです」と告げる。
都はるみの「小樽運河」から
「精進料理の酒を飲み別の生き方あったねと・・・・あなたほんとの男なら私一人にさせないわ・・・」としみじみ歌うような人は現れなかったけどこれもまた私の選んだ人生だね。